最新セキュリティマネジメント(第55回) 若手人材のセキュリティスキルアップ

リスクマネジメント 働き方改革

公開日:2025.12.19

 入社1年目、2年目といった若手人材は、ビジネスパーソンとしての意識やスキルが発展途上であるケースが多い。セキュリティについても同様の傾向が見られる。しかし、企業としてセキュリティレベルが低い箇所があれば、大きなトラブルにつながりかねない。そんな若手人材に必要なセキュリティスキルのレベルと、それを身につけるための効果的な教育方法について考えてみたい。

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若手デジタル人材に必要なセキュリティスキルと学習項目

 安全安心なデジタル社会のために、セキュリティの啓蒙活動に取り組む独立行政法人情報処理推進機構(以下、IPA)では、経済産業省と共同でDX推進に必要な人材像やスキルを提示する「デジタルスキル標準」というガイドラインを発行している。2024年7月には、最新版のver.1.2が発行され、セキュリティについても必要なスキルや学習項目の概要が示されている。

 「How」という項目で示されているスキル・学習項目の内容としては「セキュリティ技術の仕組みと個人がとるべき対策に関する知識を持ち、安心してデータやデジタル技術を利用できる」とある。セキュリティの専門家に求められるスキルは別に策定されていて、この内容はまさにビジネスパーソンが持つべきスキルを示していると言える。

 若手人材にとって重要なポイントは、データやデジタル技術に対していたずらに不安を感じることなく、適切に利用できるレベルに達する点だ。そのためには「情報をどう守るのか」というセキュリティの仕組みを、一人ひとりが理解している必要がある。ガイドラインには「企業が用意する環境・対策だけでなく、個人もセキュリティ対策を行う必要性とその方法を理解する必要がある」とある。

 そのための学習項目例として挙げられているのが以下の内容だ。

・「セキュリティの3要素」である機密性、完全性、可用性
・「セキュリティ技術」としての暗号、ワンタイムパスワード、ブロックチェーン、生体認証
・「情報マネジメントシステム」
・「個人がとるべきセキュリティ対策」

 個人がとるべきセキュリティ対策としては、IDやパスワードの管理、アクセス権の設定、覗き見防止、添付ファイル付きメールへの警戒、社外メールアドレスへの警戒といった、セキュリティインシデントを引き起こさないように個人が注意すべきポイントが列挙されている。

若手向けセキュリティ教育に活用できる無料コンテンツ

 こうした学習項目に則ってセキュリティ教育を実施すれば、経験の浅い若手人材も、安心してデータやデジタル技術を扱えるようになる。実際の教育では、若手の理解度や興味を引き出しやすいコンテンツを選択する工夫が重要だ。IPAでは次のようなコンテンツを無償で提供している。

入門レベル(セキュリティ初心者向け)

【ほぼ15秒アニメ】「子ぶたと学ぼう!情報セキュリティ対策のキホン」
 個人がとるべき基本的な対策を15秒ほどのアニメで解説。脆弱性対策など5本の動画が提供されており、最初の一歩として取り組むべきセキュリティ対策とその理由を学べるようになっている。

基礎レベル(一般社員向け)

「5分でできる!情報セキュリティポイント学習」
 経営者・管理者向けコース、従業員向けコースがあり、各ポイントが現実にありそうなストーリー仕立てで解説されている。自習用のコンテンツとして活用可能だ。

「華麗なる情報セキュリティ対策」
 情報セキュリティ対策の基本をアニメドラマに仕立てたコンテンツだ。やや大げさなストーリーだが、気取った女性実業家とその妹のセキュリティリスクの高い行動をイケメンのシステム管理者が止めに入るという形で、どこにリスクがあるのかを気づかせる内容になっている。

実践レベル(応用知識向け)

「日常における情報セキュリティ対策」:より実践的な項目を列挙したガイドライン
「偽セキュリティ警告(サポート詐欺)対策特集ページ」:偽の警告画面でパニック状態を引き起こしてサポート料金を搾取する詐欺への対策
「不正ログイン対策特集ページ」:アカウントの乗っ取り防止策
「ビジネスメール詐欺(BEC)対策特設ページ」:経営者や上司を装ったメール詐欺の対策

 これらのコンテンツやガイドラインは、若手社員の理解度やセキュリティ意識のレベルに応じて選択するアプローチが重要になる。例えば、入社直後の新人には「子ぶた」シリーズから始め、基本的な理解が進んだら「5分でできる」シリーズに進むといった段階的な教育が効果的だ。特に若手社員は具体的な事例を通じて学習する方が理解しやすい傾向があるため、ストーリー仕立てのコンテンツから始めるのがおすすめだ。

 無料で使えるこうしたコンテンツをうまく活用し、若手人材のセキュリティ意識とスキルを段階的に高めていく取り組みを通じて、組織全体のセキュリティレベル向上につなげていこう。

※掲載している情報は、記事執筆時点のものです。

執筆=高橋 秀典

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