オフィスあるある4コマ(第50回)
新入社員への電話のレクチャーに大苦戦
2025年は選挙イヤーだ。6月には東京都議選挙があり、夏には参議院議員選挙が行われる。こうした選挙で大きな影響力を持つのがSNSなどのネット戦略だ。影響力の大きさから規制強化が議論されるほどだ。では、一体何が問題となっていて、企業のセキュリティ対策とどのような関係にあるのか。取るべき対策も含めて考えてみたい。
インターネットを使った選挙活動が解禁されたのは10年ほど前のことだ。候補者や政党はWebサイトや電子メールを使って投票を呼びかけるなど、選挙運動にインターネットを利用できるようになった。当時の安倍晋三首相はSNSで積極的に情報を発信し、政治の世界におけるネット時代の到来を印象付けた。
実際にネットの威力はすさまじいものがある。2024年のアメリカ大統領選挙では、世界トップの大富豪であり、SNSメディアのX(旧Twitter)のオーナーであるイーロン・マスク氏がトランプ支持を表明したことで、潮目が変わったとも言われている。
日本でも政治の世界で無名だった安野貴博氏が一大旋風を巻き起こし、世の中を驚かせた。AIエンジニアで起業家の安野氏は、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が優れたIT人材の発掘・育成を目的に実施する未踏事業プロジェクトで、2015年度の「スーパークリエータ」に認定された実力者だ。国が認める天才プログラマーとして有名で、ネットの世界のことも熟知している。
また、2024年11月に行われた兵庫県知事の出直し選挙では、当選した斎藤元彦陣営とネット戦略に精通したPR会社との関係性に多くの関心が集まった。それほどまでにネット戦略が選挙の結果を左右する時代となり、ネットをうまく活用できる候補者は大きなアドバンテージを持つことになる。
しかし、光があれば影があるように、ネットだからこそのリスクも潜んでいる。その1つが偽情報の拡散だ。SNSに投稿された情報には、虚偽の内容が含まれることがある。そうした情報の拡散を防ぐための規制が議論されている。韓国の大統領選挙でもSNS事業者に対して1万件を超える削除依頼が寄せられたという。私たちも知らないうちにその拡散に加担してしまうリスクがある。
その他にも有権者として注意すべき点がある。総務省が発行しているネット選挙運動のチラシには「有権者は、ウェブサイト等(ホームページ、ブログ、Xやフェイスブック等のSNS、動画共有サービス、動画中継サイト等)を利用した選挙運動ができますが、電子メール(SMTP方式及び電話番号方式)を利用した選挙運動は引き続き禁止されています」とある。
この注意書きが意味するのは、有権者は電子メールを使って選挙運動を行ってはいけない、ということだ。ただし、フェイスブックやLINEなどSNSのユーザー間でやり取りするメッセージ機能はOKとされている。電子メールは個人情報の秘匿性が高く、グループメッセージはWebサイトに付随する機能と考えられているためだ。
例えば、自分が応援する候補者の演説の様子を動画撮影し、フェイスブックやメッセージに「〇〇さんを応援しましょう」と投稿するのはOKだが、電子メールに動画を添付して配信することは法律違反となる。
また、選挙運動の期間についても意識しておく必要がある。選挙運動ができる期間は選挙の公示日から投票日の前日までと決められており、これはネットでの選挙運動にも適用される。前日までにSNSに投稿した動画や写真はそのままの掲載は認められるが、投票日当日の投稿は禁止されている。
誹謗(ひぼう)中傷やなりすましにも禁止行為が定められており、違反すると処罰される可能性もある。前述の候補者に関する虚偽情報の拡散に加え、他人になりすまして通信したり、悪質な誹謗(ひぼう)中傷をしたり、候補者のWebサイトを改ざんするなどの行為は犯罪とされている。
この他にも18歳未満の選挙運動やホームページを印刷して配布することなども禁止されている。企業は総務省が発行するチラシなどを参考に、従業員への定期的なメール訓練による情報リテラシー教育やSNS利用ガイドラインの明確化など、従業員の市民的権利を尊重しつつ、適切なセキュリティ対策の実施を検討すべきだろう。
※掲載している情報は、記事執筆時点のものです
執筆=高橋 秀典
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