ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
業務のデジタル化が推進されて久しい。特に2020年以降テレワークが急速に浸透し、これまで紙ベースで行われていた文書管理がデジタルに置き換わってきている。企業においてどのように紙の文書が使われ、管理されているのか調査を行った。紙文書のデジタル化に際してニーズの高い技術であるOCR(光学的文字認識、画像データ内の文字情報をテキストデータ化する技術)についても、併せて活用度合いを聞いた。調査は2022年7月、日経BPコンサルティングのアンケートシステムにて、同社保有の調査モニター3411人を対象に実施した。
企業の業務の中で、紙の文書が介在する業務工程について聞いたところ、最も多かったのは「契約・申請書類」の62.5%となった。2番目には「取引先・顧客への請求・見積もり」(46.3%)、3番目には「社内会議資料」(39.7%)が入った(図1)。2020年3月に行った同調査と比較するとトップ3の順位は変動ないものの、「契約・申請書類」が4ポイント減、「取引先・顧客への請求・見積もり」は11.6ポイント減、「社内会議資料」にいたっては15.1ポイント減という結果が出た。ここ2年で大きく紙文書比率が減少しているといえる。
紙の文書が介在する比率が低い「顧客情報・カルテ」(15.6%)、および「業務・案件の管理」(24.9%)においても、2020年の前回調査と比較するとそれぞれ6.2ポイント、8.7ポイント減となった。
【図1 紙の文書が介在する業務工程(複数回答)】
紙文書の管理について種類別に尋ねた結果が次の通りだ(図2)。どの種類の文書・資料に関しても「紙のままファイリングして保管」が多い結果となった。紙のままファイリングして保管する比率が最も高いのが「社内稟議・申請」の72.8%。ほとんど差がなく「受発注書」(72.3%)。「契約・申請書類」(72.2%)が続いた。
一方、「紙のままファイリングして保管」の比率が低かったのは、「社外会議・プレゼン資料」(49.2%)と「社内会議資料」(56.7%)だ。ただしこの2項目に関しては、2年前のデータからの顕著な変化は見られず、数字的には横ばいとなっている。
デジタルデータに変換して保管する場合、「画像として保管」が「テキスト化して保管」よりも全種類の書類で比率が高かった。
【図2 業務工程別の紙文書の管理方法】
続いて紙文書の廃棄ルールについて聞いた。最も多い廃棄ルールは「期間を決めて廃棄」で40~50%程度の選択率となった(図3)。次に多いのは、「種類・重要度で定めたルールに準拠して廃棄」だが、「契約・申請書類」「顧客情報・カルテ」「手順書・マニュアル・チェックシート」については、「原則、廃棄せずに保管」の比率が「種類・重要度で定めたルールに準拠して廃棄」を上回った。
また全項目において「スキャンが済んだら廃棄」の選択率は10%に満たず、紙の書類をデータ化して廃棄するというルールは根付いていないのが現状のようだ。
【図3 業務工程別の紙文書の廃棄ルール】
紙の書類のデジタルデータ化においては画像として保存する方法と、文字情報もデータ化して保存する方法がある。その手段として最近、機能向上が著しいのがOCR(光学的文字認識)を活用した文字情報のデータ化だ。
「有料サービスを利用」と「ソフトの補助機能などを利用」を合計したOCRの利用率は18.5%。2020年の前回調査と大きな変化はなかった。「OCR機能の存在を知らない」という認知度についても13.5%で前回調査のほぼ横ばいとなった。文字判別の精度の高さが見込まれる「有料サービスを利用」も3.7%と少ない状況で、企業におけるOCR活用はそれほど進んでいない状態といえる。
従業員規模による利用率の差の面についても一例を見ていこう。従業員数99人以下の場合、「有料サービスを利用」が1.5%、「ソフトの補助機能などを利用」を合わせて14.7%。一方、従業員数3000~4999人の企業では、「有料サービスを利用」が5.4%で、「ソフトの補助機能などを利用」を合わせると27.1%となった。
【図4 OCRの利用状況(従業員数別)】
OCR機能の満足度について利用者を対象に聞いた結果は次の通りだ(図5)。「非常に満足」「満足」「どちらかというと満足」の合計では、「PC等からの文字出力に対する認識」(67.0%)が最も高く、「データ容量の軽減」「文字認識スピード・一括認識等の効率性」が続いた。反対に満足度が低かったのは「手書き文字に対する認識」(54.4%)、「学習機能」(51.2%)だった。
【図5 OCRの機能の満足度】
<文書管理実態のまとめ>
・紙の文書が介在する業務工程で最も多いのは「契約・申請書類」(62.5%)
・紙文書の管理法「紙のままファイリングして保管」が最も多い
・紙で保管する比率が最も高いのは「社内稟議・申請」(72.8%)
・紙で保管する比率が最も低いのは「社外会議・プレゼン資料」(49.2%)
・紙文書の廃棄ルールは「期間を決めて廃棄」が最も多く40~50%程度が選択
・全項目において「スキャンが済んだら廃棄」の選択率は1割に満たない
・OCRの利用率は18.5%
・OCR機能の存在を知らない層は13.5%存在
・OCR利用者で満足度が高かったのは「PC等からの文字出力に対する認識」(67.0%)
・OCR利用者で満足度が低かったのは「手書き文字に対する認識」(54.4%)
コロナ禍を経た直近2年間で、紙文書は大幅に減少傾向にある。一方、従来蓄積した紙文書をデータ化する動きは、調査上では活発化しているとは言いにくい。過去の紙文書をデータ化するうえでは、検索等に対応したテキスト化はぜひしておきたいところだ。企業DXの実現が期待される昨今、前提となる文書・資料のデータ化は推進せざるを得ないフェーズにきているのではないだろうか。
<本調査について>
日経BPコンサルティングのアンケートシステムにて、同社モニター3411人を対象に2022年7月に調査
執筆=調査・執筆 = 日経BPコンサルティング
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Biz Clip調査レポート