Biz Clip調査レポート(第20回) 紙を使う仕事はどれくらい?文書管理実態調査

自動化・AI デジタル化

公開日:2020.04.22

 業務におけるペーパーレス化の必要が叫ばれる中、現在、企業ではどのように紙の文書が使われ、管理されているのか。2020年3月に実態調査を行った。また、ペーパーレス化の支援手段の1つであるOCR(光学的文字認識、画像データ内の文字情報をテキストデータ化する技術)がどの程度、活用されているかについても聞いた。調査は、日経BPコンサルティングのアンケートシステムにて、同社保有の調査モニター3613人を対象に実施した。

社外とのやり取りに紙の資料は必要

 企業のさまざまな業務の中で、紙の文書が介在する業務工程について聞いた(図1)。回答で最も多かったのは「契約・申請書類」の66.5%で、2番目が「取引先・顧客への請求・見積もり」の57.9%だった。社外とやり取りをする文書に関しては、紙の使用が続いている傾向が読み取れる。

 これに続く3番目は「社内会議資料」(54.8%)、4番目が「社外会議・プレゼン資料」といった会議関連の文書。会議では、資料を共有するために紙の使用が続いているのが現実のようだ。

 一方、紙の文書が介在する比率が低かったのは「顧客情報・カルテ」(21.8%)や、「業務・案件の管理」(33.6%)となった。「顧客情報・カルテ」に関してはデータベース・ソフトがかなり普及していること、「業務・案件の管理」は業務管理システムによる運用などの影響が推測できる。

【図1 紙の文書が介在する業務工程(複数回答)】

 次に、こうした業務工程で生まれた紙の書類をどのように管理しているか。その方法を業務工程別に尋ねた(図2)。結果は、どの業務工程に関しても「紙のままファイリングして保管」が圧倒的に多い。特に「契約・申請書類」「受発注書」「社内稟議・申請」に関しては、7割以上が紙のまま保管している。

 一方、「紙のままファイリングして保管」の比率が比較的低いのは、「社外会議・プレゼン資料」(51.0%)と「社内会議資料」(56.6%)だ。この2つに関しては、「保管せず破棄」が、それぞれ15.3%、16.0%と他の業務工程よりもかなり高い。

 次にデジタルデータに変換して保管する比率を見てみよう。「スキャン・撮影等して画像として保管」と「スキャンして文字データ変換でテキスト化して保管」を合わせた比率で一番低いのが、「顧客情報・カルテ」の13.9%だ。一番高かったのは「社外会議・プレゼン資料」の26.3%。「画像として保管」と「テキスト化して保管」を比較すると、すべての業務工程の書類で、画像保存のほうが比率は高かった。

【図2 業務工程別の紙文書の管理方法】

廃棄ルールは「期間を決めて」が一番多い

 紙文書の管理の中で、重要なのが廃棄ルール。ずっと紙の文書を保存し続ければ、オフィスのスペースは、それで一杯になってしまう。税務関連の書類のように、保管期間が決まっている書類もある。そうした規則を考慮して、ルールを決めておく必要がある。

 すべての業務工程の書類に関して、一番多い廃棄ルールは「期間を決めて廃棄」だった(図3)。次に多かったのは、「種類・重要度で定めたルールに準拠して廃棄」だった。ただし契約・申請書類、顧客情報・カルテについては、「原則、廃棄せずに保管」の比率が2番目。この2つに関しては、重要書類として保管し続ける企業が多い。

 社外会議・プレゼン資料と社内会議資料については、他よりも「用が済んだら保管せずに廃棄」の比率が高い。前述の保管方法についての回答でも、「保管せずに廃棄」の比率が高い。出力する前の元データがあるからだろう。紙の書類を作成しても廃棄するのだから、会議やプレゼンの資料は、ペーパーレス化を進める余地がかなり大きそうだ。

【図3 業務工程別の紙文書の廃棄ルール】

 ペーパーレス化は、紙の書類のデジタルデータ化が手段に挙げられる。デジタルデータ化には、画像として保存する方法と、画像に加えて文字情報もデータ化して保存する方法がある。最近、注目されているのがOCR(光学的文字認識)を活用した文字情報のデータ化だ。その利用状況を見てみる(図4)。

 「有料サービスを利用」と「ソフトの補助機能などを利用」を合計すると、OCRの利用率は21.1%。最も多い「利用予定はない」(44.8%)の半分以下だった。中でも「有料サービスを利用」はわずか3.2%と非常に少ない。

 また、利用率は、従業員数が多いほど高くなる傾向がある。従業員数99人以下では、「有料サービスを利用」が1.3%しかなく、「ソフトの補助機能などを利用」を合わせても15.4%だ。一方、一番利用率が高かった従業員数5000~9999の企業では、「有料サービスを利用」が5.7%で、「ソフトの補助機能などを利用」を合わせると29.8%となり、99人以下の企業の2倍近くとなる。

【図4 OCRの利用状況(従業員数別)】

 最後にOCRの利用者を対象に、機能の満足度について聞いた(図5)。各機能とも「非常に満足」「満足」「どちらかというと満足」の合計は、6割程度であまり違いはない。満足度が比較的低かったのは「手書き文字に対する認識」(48.4%)と「学習機能」(46.7%)の2項目。OCRを利用する際には、この2項目に強みのあるサービス・製品を利用したいところだ。

【図5 OCRの機能の満足度】

<本調査について>
日経BPコンサルティングのアンケートシステムにて、同社モニター3613人を対象に2020年3月に調査

執筆=調査・執筆 = 日経BPコンサルティング

【M】

あわせて読みたい記事

連載バックナンバー

Biz Clip調査レポート