Biz Clip調査レポート(第37回) 企業のDX対応意識調査2023

デジタル化

公開日:2023.01.31

 データの利活用にとどまらず、デジタル技術を前提としたビジネスモデルの変革や経営革新の切り札として期待される「DX(デジタルトランスフォーメーション)」推進。企業はその対応に向けて何を進め、どのような点を課題に感じているのだろうか。こうした企業意識について2022年12月に調査を行った(日経BPコンサルティングのアンケートシステムを用い、同社保有の調査モニター2835人を対象に調査を実施)。

企業規模でDX対応に濃淡も

 まず勤務先におけるDX推進に向けた各種の取り組み内容について聞いた。最も取り組みが進んでいる項目が「文書の電子化・ペーパーレス化」」(30.5%)。2位に「テレワークの実施」(28.6%)、3位が「営業活動・会議のオンライン化」(25.3%)となった。そして、4位に「DXに取り組んでいない」(20.3%)、5位に「クラウドサービスの活用」(18.9%)が続いた(図1)。

【図1 勤務先におけるDX推進に向けた取り組み(従業員規模別)】

 今回、顕著だったのが4位の「DXに取り組んでいない」において、特に99人以下の企業で回答が集中した点(45.9%)だ。100~299人以下の企業(18.1%)と比べても27.8ポイントもの開きがある形となった。また、「文書の電子化・ペーパーレス化」や「テレワークの実施」「営業活動・会議のオンライン化」「RPAツールやその他ロボットの導入」「デジタル人材の採用・育成」などの各項目においても99人以下の企業は、低調な形となり企業規模に応じてDX対応に濃淡があることが伺える。

約8割の企業がDX推進に「効果あり」と回答

 続いて、DXに取り組んでいると回答した企業に、どの程度効果を実感しているか聞いた。この点、「営業活動・会議のオンライン化」や「顧客データの一元化」「テレワークの実施」などの各項目において、おおむねどの項目でも約8割が「効果あり」と回答(「想定していた効果を大きく上回った」「想定した効果を上回った」「想定通りの効果があった」と回答した合計値)。

 その一方で、「デジタル人材の採用・育成(21.4%)」「RPAツールやその他ロボットの導入(21.2%)」では、5社に1社が効果を実感できていないと回答する結果となった(図2)。

【図2 DXの取り組みについての効果実感】

「社内業務やワークフロー等の効率化」に期待が集まる

 ここではDXに取り組んでいると回答した企業に、今後のDX推進に向けてどのような効果を期待しているのか聞いた。1位は「社内業務やワークフロー等の効率化」(36.8%)、2位は「リモート環境による業務環境の構築や働き方の改善」(25.0%)、3位は「DXによる新業種・新サービス展開の検討」(16.5%)という結果となった(図3)。

【図3 今後のDX推進にあたって期待する効果】

 この中で特に際立ったのが、企業規模による意識の違いだ。例えば、1位の社内業務やワークフロー等の効率化においては、3000~4999人以下の企業が53.7%、99人以下の企業が20.3%となり、その差は33.4ポイントとなる。トップ3のうち、残る2項目(「リモート環境による業務環境の構築や働き方の改善」「DXによる新業種・新サービス展開の検討」)においても同様の傾向が見られ、中小企業のDX推進がいまだ道半ばにある姿が浮かび上がる。

経営層の意識醸成が今後の課題の一つに

 ここでは、DX推進に向けた企業課題について聞いた。従業員規模別に見ていくと、1位は「専門的な技術者や人材がいない」(25.6%)、2位は「対応する費用が高い」(18.6%)、3位は「効果が示せず導入に踏み込めない」(13.7%)という項目が並ぶ。各項目において図3と同様に99人以下の企業での低調が目立つものの、それ以外の従業員規模による明確な傾向は見られなかった。

【図4-1 勤務先におけるDX推進上の課題(従業員規模別)】

 一方、役職別では大きな差異が認められた。例えば、「専門的な技術者や人材がいない」の項目では役員が高い課題意識を持つ中で(39.4%)、会長・社長は16.1%となり、23.3ポイント差となった。また「特になし」の項目で、会長・社長が18.9%となっている点などを加味すると、経営層の意識醸成が今後のDX推進に向けた大きな課題の一つともなりそうだ(図4-2)。

【図4-2 勤務先におけるDX推進上の課題(役職別)】

相談先は「社内の専門部署」「ITベンダー、SIer」に回答が集中

 最後に、DX推進に際しての相談先について聞いた。従業員規模を問わず、「社内またはグループ企業の専門部署」と「ITベンダー、SIer」に回答が集中。全体ではそれぞれ22.2%、19.3%となった。この一方で、99人以下の企業では「相談していない・相談する予定はない」が60.5%に、100~299人以下の企業でも25.6%との結果が得られた(図5)。図1では、「DXに取り組んでいない」と回答した企業が中堅・中小企業に集中した。この結果とも照らし合わせると、やはり従業員規模に応じてDX推進に濃淡が生まれていると思われる。

【図5 DX推進に際しての相談先】

 これからの企業成長のカギを握るとされるDX。その取り組みは、ITを含むさまざまなデジタル技術を駆使してビジネスを変革し、新しい価値を生み出すことに他ならない。2018年に経済産業省が発表した「DXレポ―ト」以降、コロナ禍を経てテレワーク・リモートワークの浸透、AIやIoT、RPAといった多様な技術の社会実装が進むなど今社会は急速に変化しつつある。だが、DXをどこから始めたらよいのか悩むケースが多いのも事実だろう。

 その第一歩は「自社のミッションはどのようなものなのか、それをどのように実現していくのか」を明らかにすることにある。各種のツールはそのための施策の一つ。ビジョンの掘り下げや、その実現に向けて具体的にどのようなツールを活用していくのかについては、社内での対話とともに外部の専門家知見を有効に活用しながら見極めてきたい。

<本調査について>
日経BPコンサルティングのアンケートシステムにて、同社モニター2835人を対象に2022年12月に調査

執筆=調査・執筆 = 日経BPコンサルティング

【M】

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