ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
企業における情報セキュリティー対策はどの程度整備されているのか。また、どんな意識を持っているか。日経BPコンサルティングのアンケートシステムAIDAにて、同社保有の調査モニター3525人を対象に2017年1月にアンケートを実施した。
社内の情報セキュリティー対策に対して、「万全だと思う」と回答したのは全体でわずか5.4%。「まあ万全だと思う」と回答した企業は41.2%で、合計しても過半数には至らないのが現状だ。一方、万全だと感じていない企業は、全体の約2割となっている(図1-1)。さらに役職では、「会長・社長」といった企業のトップにその傾向が強い。「会長・社長」の約3割が、対策について万全ではないと感じている(図1-2)。
従業員規模で見ると、大きい企業ほど情報セキュリティー対策が万全と感じている比率がおおむね高くなる。「99人以下」の企業においては、「万全だと思う」という回答が2.9%しかないのに対し、「1万人以上」の企業だと11.8%と1割を超える。「万全だと思う」と「まあ万全だと思う」を合わせると、「99人以下」の企業の選択率が3割弱なのに対し、「1万人以上」の企業では6割超と2倍以上だ。従業員規模の大きい企業ほど、個人情報や企業情報を扱うケースが多いため、情報セキュリティー対策が施されているといえる(図1-1)。
【 図1-1 社内の情報セキュリティー対策は万全か(従業員数別) 】
【 図1-2 社内の情報セキュリティー対策は万全か (会長・社長)】
社内の情報資産管理において、最も脅威と感じられているのは「標的型攻撃による情報流出」(26.4%)。4人に1人程度が選択している。次いで「内部不正による情報漏えい」(20.5%)が第2位となった(図2-1)。役職別で見ると、「標的型攻撃による情報流出」には「係長・主任」が31.6%、「課長」は30.7%となった。「会長・社長」は21.3%と低い(図2-2)。
「会長・社長」の中では「災害等不測の事態に伴う情報の消失」が26.8%と最も選択されている。事業の継続性という観点から、重要視されているのは想像に難くない。
従業員規模で見ると、「標的型攻撃による情報流出」については、従業員規模の大きい企業のほうが選択される率が高い傾向にある。逆に「災害等不測の事態に伴う情報の消失」は、従業員規模の小さい企業のほうが、選択率が高くなる。
【 図2-1 社内の情報資産管理で最も脅威と感じること (従業員数別)】
【 図2-2 社内の情報資産管理で最も脅威と感じること (役職別)】
すでに導入されている情報セキュリティー対策で最も多いのは「ウイルス対策ソフトのインストール・ウイルス定義ファイルの更新」で、全体の67.6%と7割近い企業が選択している。他の対策よりも2割以上導入率が高い。従業員規模が1000人以上の企業では、導入が7割超だ。「99人以下」の企業は、総じて導入率が低く、「ウイルス対策ソフトのインストール・ウイルス定義ファイルの更新」が61.6%と高い以外は、「ファイルデータのバックアップ(社内サーバー・記録媒体等)」の33.6%と約3割の導入となっているくらいで、他は2割程度もしくはそれ以下の導入率となっている(図3)。
【 図3 すでに導入されている対策】
情報セキュリティーにおいて今後さらに必要・重要と思われているのは、「社員への情報セキュリティー研修の実施」と「社内ネットワークへの不正侵入検知・フィルタリングの実施」の2項目。全体で3割の選択で1、2位となっている。従業員規模で見ると、「社員への情報セキュリティー研修の実施」が最も必要・重要と考えているのは、「100~299人」の企業で40.5%が選択。また「社内ネットワークへの不正侵入検知・フィルタリングの実施」に関しては、「3000~4999人」の企業で40.4%が選択している(図4-1)。
【 図4-1 今後さらに必要(重要)と思われる対策 (従業員数別)】
役職別で特徴的なのは、「会長・社長」が「ウイルス対策ソフトのインストール・ウイルス定義ファイルの更新」で、36.1%の選択率となっており、全体よりも10ポイント以上高い(図4-2)。
【 図4-2 今後さらに必要(重要)と思われる対策 (会長・社長)】
情報セキュリティー対策を実施する上での課題トップは「コスト面の不安がある」で、全体の30.6%が選択した。特に役職が上になるほど、この点を課題と感じており、「会長・社長」「役員」「部長」の約4割が選択している。同様に、「社内に対策スキルを持つ人がいない」についても役職が上になるほど選択しており、「役員・社長」は25.7%と4人に1人の割合となった(図5)。
【 図5 情報セキュリティー対策を実施する上での課題】
従業員数が少ない企業ほど、「社内に対策スキルを持つ人がいない」「社内に専任の担当(部署)がない」といった人材面での課題が高い。全体を通しても従業員規模と情報セキュリティー対策の意識、導入の実情には相関関係が見られる。「うちは投入できる経営資源が限られているから……」とあきらめてはいけない。社外のスタッフやソリューションを活用するなど、自社に見合った脅威への対策や手立てをぜひとも講じたい。
<本調査について>
日経BPコンサルティングのアンケートシステムAIDAにて、同社モニター3525人を対象に2017年1月に調査
執筆=調査・執筆 = 日経BPコンサルティング
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Biz Clip調査レポート