Biz Clip調査レポート(第1回) 本当に間に合いますか?マイナンバー対策

リスクマネジメント

公開日:2015.07.01

 税と社会保障の共通番号(マイナンバー)制度は、2015年10月から順次番号の付番・通知が開始される。企業には番号の取得、登録、管理、運用などあらゆる面で適切な扱いが求められている。その対応の進展状況に関するアンケート調査を行った。

進んでいない対策、特に中小企業の意識が低い

 調査によると、マイナンバー制度対策はまだこれからという状況が浮き彫りになった。従業員規模が「301人以上」の企業ですら、15.8%の企業しか「既に実施している」と回答していない。「100人以下」の企業では、3.7%と非常に低い数字となっている。従業員規模が小さい企業ほど、マイナンバー制度への対応は遅れていることが明確になった。

 今は対策を実施していなくても、今後行う予定があれば間に合う可能性はある。実際、「301人以上」の企業は6割以上が「実施していないが予定はある」と答えている。一方、「100人以下」の企業では、7割近くが「実施していないし予定もない」と回答している。マイナンバー制度対策の必要性すら認識していないのは大きな問題だ(図1)。

 マイナンバー制度への対応の状況について、対策実施および実施意向の企業(「すでに実施している」、「まだ実施していないが予定はある」と回答した企業)に聞いてみた。

 マイナンバー安全管理措置で定められているガイドラインの対応状況は、「基本方針の策定」が全体で5割の選択と最も高く、「100人以下」の企業も「301人以上」の企業とほぼ同じく49.8%と高い数値となっている。次いで高い「取扱規定等の策定」については、「101~300人」の企業の対応状況が最も高く45.6%となっている。

対策の注目はセキュリティなどの「技術的安全管理措置」

 一方、「組織的」「人的」「技術的」「物理的」といった各安全管理措置については、従業員規模が大きいほど対応が進んでいる結果となった(図2)。

 昨年のベネッセの個人情報流出事件、また直近では日本年金機構の外部からの不正アクセス事件により、約125万件の個人情報流出があるなど、個人情報の取り扱いやセキュリティの問題に関する事件が多発している。個人情報そのものを扱うマイナンバー制度が導入された場合の、セキュリティに対する不安感、危機感は高まる一方だろう。

 こうした背景から、マイナンバー制度においてはデータ管理、セキュリティを中心とした「技術的安全管理措置」対策が一層重要視される傾向にあるはずだ。しかし、今回の調査では「技術的安全管理措置」の対応が、全体でも26.2%と、実施および実施意向企業の4社に1社しか強化の対象となっていない。特に従業員規模が小さくなるほど、対応の比率が小さくなっており、「100人以下」の企業においては22.5%という数値にとどまっている。

 ただし、「技術的安全管理措置」対策での具体的な取り組みにおいては、「100人以下」の企業の選択率が多くの項目で高い。「100人以下」の企業で、「技術的安全管理措置」対策に取り組んでいる企業は、「外部からの不正アクセス等の防止(UTM導入、ウイルス対策ソフトの導入)」「情報漏えいの防止(IT資産管理ツールの導入による機器の一元把握、管理等)」において、いずれも33.9%とポイントが高い。該当企業の3社に1社が取り組みを強化している計算だ。一方、「101~300人」の企業における「情報漏えいの防止」が16.0%と非常に低い(図3)。

 マイナンバー制度導入に向け、企業には抜かりない対応が求められている。それにもかかわらず、中小企業はマイナンバー対策の必要性すら認識していない実態が明らかになった。対策の必要性を認識した上で、一刻も早く取り組む必要がある。

 究極の個人情報ともいえるマイナンバーを扱う以上、対策の中でも非常に重要なのは個人情報保護、漏えい対策などセキュリティの強化だ。マイナンバー制度対応を始めた企業も、セキュリティ面での対策が進んでいるとは現状とても言えない。制度スタートまでに、どれだけ強化できるか、時間との戦いになりそうだ。

<本調査について>
日経BPコンサルティングのアンケートシステムAIDAにて、同社モニター5505人を対象に2015年6月に調査

執筆=調査・執筆 = 日経BPコンサルティング

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