Biz Clip調査レポート(第13回) あなたの会社、RPA導入していますか<2019>

自動化・AI デジタル化

公開日:2019.02.20

 生産性向上は企業規模を問わず、あらゆる企業で取り組むべき課題だ。その処方箋の1つ、定型業務のIT化において、今注目を集めているのがRPAによる解決だ。RPAはパソコンで行う業務を、アプリケーションまたぎで自動化する。企業のRPA導入実態および機能への評価はどうなっているか。その実態について、日経BPコンサルティングのアンケートシステムAIDAにて、同社保有の調査モニター3486人を対象に調査を実施した。

RPAを導入済みなのは2割

 勤務先ではRPAを導入しているか。この問いに対し、「導入済み」と答えた企業は18.2%だった。リプレース検討層も含めると19.2%となる。一方、「導入しておらず導入予定もない」との回答は51.1%。「導入を検討している」「必要性を感じるが未検討」という、未導入だが導入意向のある層は3割程度となった(図1-1)。

【図1-1 RPAの導入状況(業種別)】

 業種別で見ると、「導入済み」という回答は通信サービスが最も高く53.8%。続いて金融・証券・保険業が41.9%となった。ある地銀では、インターネットバンキングの振込取引の確認作業など、50のパソコン業務をRPAに代替させた。それにより捻出できた時間は、3万3000時間と試算される。金融・証券・保険業は、RPA導入に積極的に取り組んでいる業界だといえる(図1-2)。

【図1-2 RPAの導入状況(業種別)】

 半面、RPA導入に後れを取っているのが政府・官公庁・団体、そして医療機関・介護施設だ。前者はこういった効率化に関し、本来主導すべき立場ともいえるが、「導入済み」回答は今回の調査ではゼロ(リプレース検討を含めると1.9%)。後者はわずか1.8%にとどまった。

 「導入しておらず導入予定もない」と回答した比率が最も高かったのは、自営業の85.5%。それに続くのが、弁護士・会計士などの専門サービスで80.8%となった。パソコン業務自体が少ないとも考えられるが、個業傾向が強く、1人で完結する業務も多いと思われることから、「従来通りのやり方のほうが効率がよい」と思っている可能性が考えられる。

 従業員数別に見てみると、全体的にはやはり中小企業の導入率が低い傾向にある(図1-3)。99人以下の企業では「導入済み」が0.9%。1万人以上の企業が48.5%なのと比べると、圧倒的に少ないのが分かる。さらに99人以下の企業では、82.8%が「導入しておらず導入予定もない」と回答した。

【図1-3 RPAの導入状況(従業員規模別)】

 ちなみに、導入しているRPAシステムは、1位が「WinActor」(NTTマーケティングアクト 他)、2位が「UiPath」(ユーアイパス)、3位が「BizRobo!」(RPA テクノロジーズ)となった。2.6%ではあるが「自社開発」しているケースもある(図2)。

【図2 導入しているRPAシステム】

「操作性」は満足度も不満度も高い

 利用しているRPAシステムの機能で満足度が高いのは、「操作性・ユーザビリティー」の19.5%だ。それにほぼ差がなく「対応アプリケーション」(18.6%)が続いた(図3)。一方、同じ選択肢で不満度についても聞いたところ、「操作性・ユーザビリティー」が13.0%で2位にランクインしている(図4)。同じシステムとは限らないものの、導入企業では満足に感じるのも不満に感じるのも「操作性・ユーザビリティー」という結果となった。導入企業の、一番の関心事だといえる。

 不満に感じる1位は「契約形態・ランニングコスト」(13.9%)だ。現状では費用対効果について、導入企業は「見合っていない」と感じているのが見て取れる。コスト減もしくはより高い業務効率アップへの期待の表れといえるだろう。「サポート対応」についても、満足と感じるのがわずか5.6%なのに対し、不満と感じているのは10.4%に上る(不満度の4位)。これらの結果を見ると、現状ではまだまだ、RPAに詳しい人物によるサポートや改善が必要とされているのではないだろうか。

【図3 導入しているRPAシステムの満足度の高いポイント】

【図4 導入しているRPAシステムの不満度の高いポイント】

導入しない理由は「自動化する業務が明確ではない」

 RPA導入にまだ踏み切れていない企業は、その理由についてどのように考えているか。結果は「自動化する業務フローがまだ明確ではない」(36.2%)が最も選ばれた。この回答に、「RPAがよく分からない、知らない」(23.9%)、「必要性を感じない」(23.6%)がほぼ同率で続いた。

 「その他」を除いて最も回答率が低かったのが、「操作が難しそう、使いにくそう」の4.8%だ。導入済み企業が一番満足・不満足を感じるポイントが、未導入企業にとってはあまり問題視されていない(図5-1)。

【図5-1 RPA導入を行っていない理由】

 従業員規模別に見てみると、「RPAがよく分からない、知らない」と回答した比率が最も高いのが、99人以下の企業の34.3%だ。他の従業員規模と比べて突出している。同様のことが「必要性を感じない」についてもいえて、99人以下の企業では33.2%が選択。こちらも全体の23.6%と比較すると10ポイント近く差がついている(図5-2)。

 ちなみに「担当管理する人間がいない」と答えた比率が34.2%で最も高かった100~299人の企業は、RPA導入状況の問いで「必要性を感じるが未検討」と答えた比率が最も高い(図1-3)。“ITによる効率化をしたいが、その人材に乏しい”のが、ちょうどこの100~299人のボリュームゾーンにおける悩みなのかもしれない。

【図5-2 RPA導入を行っていない理由(従業員規模別)】

<本調査について>
日経BPコンサルティングのアンケートシステムAIDAにて、同社モニター3486人を対象に2019年1月に調査

執筆=調査・執筆 = 日経BPコンサルティング

【M】

あわせて読みたい記事

連載バックナンバー

Biz Clip調査レポート