Biz Clip調査レポート(第24回) 「テレワーク」企業の働き方意識調査2021

テレワーク 働き方改革

公開日:2021.05.31

 新型コロナの感染拡大を受けて東京・大阪・兵庫・京都・福岡・愛知・北海道・岡山・広島を対象に、政府は3回目の緊急事態宣言を出した。期間は2021年5月31日までとされていたが、5月28日に6月20日までの延長が決定。5月23日からは沖縄も対象に追加された。オフィス外で業務を行うテレワークは、1回目の緊急事態宣言が発令された2020年4月ごろから急速に拡大。現在はその状況が約1年経過した形となる。

 オフィス以外で働く企業のテレワークの実態はどうなっているか。20年5月調査の「テレワーク」企業の働き方意識調査2020と比較しながら、ここ1年の意識や実態の変化がどのようになっているかを調べた。調査は日経BPコンサルティングのアンケートシステムにて、同社保有の調査モニター2538人を対象に実施した。

20年5月~21年5月でさらに企業のテレワークが進んだ

 オフィス外で働くテレワークの実施度合いについては、依然「自社オフィス以外で働くことはほとんどない」が最も多く選択された(41.5%)ものの、2020年調査の51.8%と比べると10.3ポイントもの減少が見られた。「時々オフィス以外で働く」(21.3%)は昨年とほぼ横ばいだが、「半分以上オフィス外」(14.1%)は4.4ポイント、「ほとんどオフィス外」(21.5%)に至っては9.4ポイントもの上昇となった。この1年でさらにテレワークが進んだ状況がうかがえる(図1)。

【図1 テレワークの現状について】

 次に、テレワークをする際の障壁についてだが、前回4位だった「対面コミュニケーション不足を補う施策」が今回、初のトップとなった(19.1%)。テレワーク期間が長引き、リアルでのコミュニケーションと比べてのやりにくさを感じている結果と想定できる。また、コロナ禍以前の調査では最も回答率が高かった「情報漏えいなどのセキュリティ対策」は2020年に初めて2位に順位を下げたが、今回はさらに4位まで順位が下がった(15.5%)。「ネットワーク、通信環境がオフィスで働くのと同等のレベルにない」(18.8%)は2位と依然高いものの、セキュリティ対策については各社対応が進んだ状況を示している可能性がある(図2)。

【図2 何がテレワークの障壁になっているのか】

在宅勤務の導入は1年前より増加

 テレワークの中でも在宅勤務の状況に絞って見てみよう。導入状況については全体で導入済みが65.2%となり、2020年時点での59.1%から6.1ポイントの上昇となった。従業員数別に見ると、99人以下の企業は45.7%にとどまるが、1万人以上の企業では89.8%が導入済み。従業員数が多くなるほど導入率はそれに比例し高まる結果となった(図3-1)。

 地域による在宅勤務比率差は図3-2の通りだ(在宅比率の比較的高い、主な都道府県についての掲載)。東京の80.3%と比較すると、5月時点で比較的コロナ感染者数が多い大阪が63.4%と16.8ポイント、埼玉・千葉・神奈川と比べても10ポイント程度低い状況となっている。

【図3-1 在宅勤務の導入状況(従業員数別)】

【図3-2 在宅勤務の導入状況(都道府県別)】

 在宅勤務制度の利用意向については「利用したい・利用している」と答えた利用意向ありは60.9%、「利用したくない・利用していない」という利用意向なしは33.2%。1年前とほぼ変わらない結果となった(図4)。

【図4 在宅勤務制度の利用意向】

 勤務先で「在宅勤務制度が実施されているケース」と「実施されていないケース」に分けて利用意向を調べると、在宅勤務導入済み企業では83.4%、未導入企業では22.6%が利用意向ありという結果となった(図5)。ただし、在宅勤務導入済み企業での利用意向は1年前とほぼ変わらないのに対し、未導入企業での利用意向は8.6ポイントの減少となった。「在宅したいが会社が認めていない」という層は減少傾向にあるといえる。

【図5-1 在宅勤務制度の利用意向(在宅勤務導入済み企業)】

【図5-2 在宅勤務制度の利用意向(在宅勤務未導入企業)】

ITシステム・機器で需要は大企業ほど顕著

 在宅勤務を含むテレワーク全般に必要なITシステム・機器についての結果は「パソコンなどの情報端末」(69.3%)がトップ、以下「遠隔会議システム(Web会議・テレビ会議・電話会議など)」「セキュアなネットワーク(専用VPN・暗号化規格Wi-Fiなど)」「通話機器(料金が会社持ちになるもの)」が続いた。いずれの項目においても従業員数規模と選択率に比例関係が見られ、従業員数が多くなるほど選択される傾向となった(図6)。

【図6 テレワークに必要なITシステム・機器(従業員数別)】(2MA)

 コロナ禍で急速にテレワークが普及し、それが一時的なその場しのぎのものではなく、新しい働き方のスタンダードとして採用されはじめた。在宅勤務制度の導入でオフィススペースを縮小した企業も少なくない。恐らくはコロナが収束したとしても、以前の広さに戻す選択はされない可能性が高い。

 在宅をはじめとするテレワーク主体の働き方になれば、フリーアドレス制を導入した方が合理的かもしれない。フリーアドレスになれば、これまで上長にハンコを押してもらっていた業務フローも見直したほうが業務を迅速に進められ、生産性向上につながるかもしれない。感染拡大防止起点のテレワーク実施は、波及的に働き方改革を進める契機となる可能性があるといえるだろう。

<本調査について>
日経BPコンサルティングのアンケートシステムにて、同社モニター2538人を対象に2021年5月に調査

執筆=調査・執筆 = 日経BPコンサルティング

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