ロングセラー商品に学ぶ、ビジネスの勘所(第40回) トンボ鉛筆「MONO消しゴム」の認知度を強力に高めた青・白・黒の3色

スキルアップ 雑学

公開日:2022.03.29

 ICTが発達し、PCやタブレット、スマートフォンで多くの仕事が済む時代になりました。しかし、補足情報の書き入れやアイデアメモの作成などで紙の利便性が発揮される場面も少なくはなく、やはりオフィスのデスクに筆記具と消しゴムは必須です。消しゴムといって思い浮かぶのが、青・白・黒のスリーブ(紙製ケース)でおなじみのトンボ鉛筆「MONO消しゴム」でしょう。1969年に発売されて以来、仕事と勉強の友になり続けているプラスチック消しゴムのロングセラーです。

 トンボ鉛筆の創業は1913年。創業者の小川春之助が東京・浅草に小川春之助商店を立ち上げたのが始まりです。当初は文房具類の卸業を行っていましたが、春之助の父親が鉛筆製造工場を持っていたこともあり、鉛筆製造に事業の主軸を移しました。

 1928年には、日本初の本格的な製図用鉛筆である「TOMBOW DRAWING PENCILS」を発売。個人経営だった小川春之助商店を1939年に改組し、営業部門をトンボ鉛筆商事株式会社、製造部門を株式会社トンボ鉛筆製作所とした後も、鉛筆の製造を中心に事業を進めます。

 戦後の1952年には高級鉛筆「HOMO」、1957年にはシャープペンシル「HOMOホルダー」、1963年には高級製図用鉛筆「MONO」を発表し、筆記具メーカーとしての地位を確かにしました。

 ここまでは鉛筆の製造が中心で、消しゴムを手掛けたのは1939年に発売した「鉄兜字消し」くらいのもの。転機は、1967年に訪れます。

 この年に創立55周年を迎えたトンボ鉛筆は、記念に最高級鉛筆「MONO100」をリリースしました。MONO100は、芯の粒子が1ミリ四方に100億個レベルという細かさで、濃く滑らかに書けるのが特長。また、消しやすいという利点もありました。この消しやすさをアピールするため、1ダースのケースにプラスチック消しゴムを入れました。

 プラスチック消しゴムはおまけとして付けたものでしたが、消費者から「よく消える」との評判を呼びます。そこで、消しゴム単体で発売する運びとなりました。それが、1969年の「MONO消しゴム」です。

 MONO消しゴムの発売に当たり、消しゴムを包むスリーブのデザインを社内デザイナーが担当することになりました。消しゴムは、手のひらで隠れるほどサイズが小さなものです。小さい消しゴムのスリーブに印象的なデザインを施すには、どうしたらいいか−−。

商品を強く印象づけるデザイン。ヒントは「三色旗」

 ヒントになったのは、万国旗でした。各国の国旗の中には3つの色のストライプとなっている三色旗が多くあり、シンプルに、かつ強くその国のイメージを印象づけています。三色旗の国旗をモチーフにデザインされたのが、MONO消しゴムの青・白・黒の3色ストライプでした。

 モノカラーとして広く知られるようになる青・白・黒のストライプの効果は、絶大でした。文房具店の店頭で離れた所から見ても、MONO消しゴムだということがすぐに分かります。

 プラスチック消しゴムは世界に先駆け日本で開発されたものですが、トンボ鉛筆がパイオニアというわけではありません。1950年代末に、すでに他社が発売していました。

 しかし、青・白・黒のストライプがプラスチック消しゴムの代名詞的な存在になり、以降、プラスチック消しゴムの普及に大きく寄与することになります。

 MONO消しゴムのスリーブは、ロゴデザインの変更など度々マイナーチェンジが行われましたが、青・白・黒のモノカラーのストライプは発売以来変わっていません。MONOブランドでは、消し感の違いや消しクズの出方により「モノライト」「モノエアタッチ」「モノノンダスト」などさまざまな消しゴムが発売されていますが、いずれもスリーブデザインには青・白・黒を取り入れています。

 また、トンボ鉛筆はMONOブランドでさまざまな企業とのコラボレーションを行っています。2011年には、シャープとのコラボで電卓を発売。盤面にMONOの文字は入っていませんが、キーが青・白・黒に塗り分けられており、容易にMONO消しゴムが想起されます。

 2020年には、アパレルブランド「ミドラ」とコラボし、洋服のラインアップを発表。こちらもMONOという文字は表立って入っていませんが、MONO消しゴムを連想させる青・白・黒のストライブ柄になっています。

 2017年、MONOの青・白・黒の3色柄は「色彩のみからなる商標」として特許庁より認定を受け、商標登録されました。もはや青・白・黒の3色柄はMONO消しゴムの象徴というだけでなく、プラスチック消しゴムという分野全体の象徴的イメージになった印象があります。

 プラスチック消しゴムは、軽い重いといった使用感、消しクズの出方などに違いはあるものの、書いた文字を消すという機能を果たさないものはなく、差異が出にくい商品ともいわれます。その中でMONO消しゴムが圧倒的な認知度を誇るようになったのは、基本的な性能の優秀さがあった上でのことですが、スリーブに入った青・白・黒3色のストライブの訴求力のたまものといっても過言ではないでしょう。

 商品の機能だけでなく、商品を象徴するイメージが広く、強く浸透することが、ロングセラーにつながる要因となる。このことを、MONO消しゴムの事例は示しているのかもしれません。

執筆=山本 貴也

出版社勤務を経て、フリーランスの編集者・ライターとして活動。投資、ビジネス分野を中心に書籍・雑誌・WEBの編集・執筆を手掛け、「日経マネー」「ロイター.co.jp」などのコンテンツ制作に携わる。書籍はビジネス関連を中心に50冊以上を編集、執筆。

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