ロングセラー商品に学ぶ、ビジネスの勘所(第33回) 「チョコモナカジャンボ」のわずかで大きな工夫

スキルアップ 雑学

公開日:2021.08.23

 世界中から集まった選手たちの熱戦が繰り広げられた東京五輪は8月8月に閉幕しました。競技の様子はもちろんですが、それとともに話題となったのが、関係者の日本での体験でした。限られた中ではありましたが日本を体験し、多くの取材記者を引きつけたのが日本のコンビニです。豊富な品ぞろえと食品のクオリティーの高さがSNSなどを通じて発信されました。

 そうした中である記者が「最高のアイス」と評し、世界中から共感のコメントが寄せられたのが森永製菓の「チョコモナカジャンボ」です。1972年に発売を開始し、以降50年近くにわたり愛され続けているアイスクリームです。

 森永製菓は、アメリカから帰国した森永太一郎が「日本に西洋菓子を普及させる」との理念の下、1899年に森永西洋菓子製造所を設立したのが始まりです。1918年には日本で初めてチョコレートの一貫製造に成功し、ミルクチョコレートを発売します。以降、バニラチョコレート、ピーナッツチョコレートなどさまざまなチョコレート菓子を開発し、1914年に発売を開始したミルクキャラメルと併せてチョコレートを主軸として事業を展開します。

 戦前、日本の冷菓市場はアイスキャンデーなどの氷菓が中心でした。しかし戦後になると大手乳業会社がアイスクリームの製造を始め、1950〜1960年代の冷凍冷蔵庫の普及と相まって、口当たりの柔らかいアイスクリームが人気を博するようになります。

 そこで、日本におけるチョコレート製造のパイオニア的存在である森永製菓が“森永だからできるアイス”として開発したのが「チョコモナカ」でした。風味豊かなバニラアイスを凹凸のある板チョコ形のモナカの皮で包み、その皮の内側をチョコレートでコーティング。他のアイスクリームとは違う、見た目も味も森永製菓ならではのアイスクリームを演出しました。こうして1972年、「チョコモナカ」は発売されます。

 「チョコモナカ」の発展形である「チョコモナカジャンボ」は現在、森永製菓の主力商品であるばかりでなく、単品アイスクリーム市場でトップシェアを誇る大人気商品になっています。しかし、「チョコモナカ」の発売当初は、順調な売り上げを見せてはいたものの、大ヒットまでには至りませんでした。1980年にはバニラアイスの中にチョコレートソースを入れてデラックス仕様にモデルチェンジし、名称を「チョコモナカデラックス」と改めて売り出しますが、売り上げは大きくは変わりません。

 状況が変わり始めたのは1996年です。この年に大きなリニューアルを行い、バニラアイスの中に入れていたチョコレートソースを板チョコにしました。また、モナカの皮の山を12山から18山に増やします。サイズが大きくなったので、名前も「チョコモナカジャンボ」に変更しました。さらに1998年には決定的ともいえる改良が行われました。

「最高のアイス」のカギは食感

 ポイントになったのは、モナカの皮にコーティングしているチョコレートです。このチョコレートはバニラアイスとモナカの皮の間にあり、アイスの水分をモナカの皮に通さない壁の役割を果たしています。小さくてもチョコレートに穴があれば、そこからアイスの水分が漏れてモナカの皮がふやけてしまいます。

 チョコレートを厚くすれば水分を通しにくくなりますが、味がくどくなります。くどくならない薄さを保ちつつ、水分をできるだけ通さないよう、チョコレートを吹き付ける方法やチョコレートの配合などに工夫を凝らしました。

 それまでもモナカの皮のパリパリ感は追求されてきましたが、この改良でパリパリ感が大きくアップしました。またアイスの中に入れている板チョコを増量し、しっかりしたかみごたえにしました。こうして、最初にモナカの皮のパリッとした食感があり、その後に柔らかなバニラアイスが来て、最後に厚い板チョコをかみ砕くという、現在の「チョコモナカジャンボ」が誕生しました。

 新しく生まれ変わった「チョコモナカジャンボ」は、大好評を博します。2000年代に入ると19年連続で前年の売り上げ記録を更新し続け、人気ナンバーワンアイスクリームの座を不動のものとして現在に至ります。

 ただ、1998年以前と比べ、「チョコモナカジャンボ」の味は大きく変わったわけではありません。変わったのは食感で、パリっとしたモナカの皮と板チョコのしっかりした食感のコンビネーションが、消費者に大きく受け入れられました。「チョコモナカ」という商品のコンセプト、そして味が大きなポテンシャルを秘めていたのは間違いないでしょう。そのポテンシャルを最大限に発揮したのは、食感の違いというわずかな差でした。

 世の中には、いいものなのになかなか売れない、という商品が少なからずあります。もしかしたら、ほんのわずかな部分へのこだわりが、その商品が本来持っていたポテンシャルを十分に発揮するきっかけになり、ユーザーの印象を劇的に変えるかもしれません。

執筆=山本 貴也

出版社勤務を経て、フリーランスの編集者・ライターとして活動。投資、ビジネス分野を中心に書籍・雑誌・WEBの編集・執筆を手掛け、「日経マネー」「ロイター.co.jp」などのコンテンツ制作に携わる。書籍はビジネス関連を中心に50冊以上を編集、執筆。

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