ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
丸い目に大きなクチバシで人気のキャラクター「キョロちゃん」は、ぬいぐるみ、時計、携帯ストラップなどさまざまなグッズが作られています。「キョロちゃん」はもちろん、森永製菓の「チョコボール」のキャラクター。キャラメルやピーナッツなどをチョコレートで包んだ「チョコボール」は1965年に発売が開始された、チョコレート菓子のロングセラーです。(発売時の名称は「チョコレートボール」)
森永製菓の創業は、1899年。「日本に西洋菓子を普及させる」という夢を実現させるため、森永太一郎が森永西洋菓子製造所を設立したのが始まりです。以降、「ミルクキャラメル」や「ミルクココア」などさまざまなヒット商品を生み出してきました。
1918年に、日本で初めてチョコレート一貫製造による国産のミルクチョコレートを発売したのも同社です。1964年には「ハイクラウンチョコレート」を発売して大きな人気を博します。ただ、その頃までチョコレートは大人のためのお菓子という位置付けでした。そこで、「子どものためのチョコレート菓子を出せないか」という声が社内に上がります。
そこで1965年に発売にしたのが「チョコレートボール」でした。この「チョコレートボール」は、当時の人気アニメ『宇宙少年ソラン』に出てくるリスのキャラクター「チャッピー」を箱に描いた、まさに子ども向けの商品です。しかし、もうひとつ売り上げが伸びません。開発陣は、「チョコレートボール」の味には自信を持っていました。味以外の付加価値を加えることを考えました。
そこで目を付けたのが、箱の開け方でした。子どもは、何をするときにも楽しさを求めます。お菓子を食べるときにも、楽しく箱を開けられれば喜ぶのではないか。開発陣の試行錯誤が始まりました。
通常の箱は、上部全体が開くようになっています。しかし、これでは開ける楽しさがありません。そこでたどり着いたのが、それまでのお菓子の箱にはなかった、複雑なサック構造でした。上部にある内側のサックを引き上げると、箱の左上から小さな取り出し口が飛び出します。箱を傾けると、その取り出し口からチョコボールが出てくる仕組みです。取り出し口が飛び出す動きがユーモラスで、これなら子どもが楽しく開けられそうです。
この取り出し口は、形が鳥のクチバシに似ていました。それでは、箱全体を鳥のイメージにしたらどうか。そこで生まれたのが、チョコボールのような丸い目に大きなクチバシを持った鳥のキャラクターです。目が大きくキョロキョロしていることから「キョロちゃん」と名付けられました。箱に描かれたキョロちゃんは左上を見ており、取り出し口の方に注意が向くようになっています。
また、この取り出し口を生かしたキャンペーンも用意しました。取り出し口にエンゼルマークが印刷されていればアタリで、金のエンゼルなら1枚、銀のエンゼルなら5枚集めて応募すると、漏れなくマンガなどが入った「まんがのカンヅメ」がもらえるというものです。
1967年に発売を開始した新しい「チョコレートボール」は予想通り子どもたちに受け入れられ、順調に売り上げを伸ばしました。そして1969年には商品名を「チョコボール」に改称。また、キャンペーンの「まんがのカンヅメ」をおもちゃがたくさん入った「おもちゃのカンヅメ」に変えました。こうした取り組みが売り上げ向上に拍車をかけて「チョコボール」は大ヒット商品になります。
以降、商品のバリエーションは増えましたが、真ん丸のチョコボールに鳥のクチバシのような取り出し口、箱にはキョロちゃん、キャンペーンのプレゼントはおもちゃのカンヅメという路線は変わることなく、人気のチョコレート菓子として現在に至っています。
1965年に発売した初期の「チョコレートボール」と、1967年に発売を開始した新しい「チョコレートボール」(のちの「チョコボール」)は、中身は同じ丸いチョコレート菓子です。しかし、開ける楽しさとユニークなキャンペーンという付加価値を加えることでヒット商品へと進化しました。
商品の中身の良さ、チョコボールで言えば「味」が優れたものであることはヒットの必要条件でありますが、必ずしも十分条件ではありません。売り方の工夫といった付加価値を加えて、ようやくヒットの十分条件にたどり着くこともあるという教訓を「チョコボール」は教えてくれるのではないでしょうか。
執筆=山本 貴也
出版社勤務を経て、フリーランスの編集者・ライターとして活動。投資、ビジネス分野を中心に書籍・雑誌・WEBの編集・執筆を手掛け、「日経マネー」「ロイター.co.jp」などのコンテンツ制作に携わる。書籍はビジネス関連を中心に50冊以上を編集、執筆。
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ロングセラー商品に学ぶ、ビジネスの勘所