オフィスあるある4コマ(第66回)
突然現れた不審な車
業務で生成AIを使う企業が増え、「どれを選ぶか」が新たな悩みになっている。代表格のChatGPT、Gemini、Copilotは、基本機能に大きな差はない。分かれるのは、普段使っている業務ツールとの相性だ。3つの生成AIの違いと、中小企業が自社に合う1つを選ぶための判断軸を整理する。
生成AI(Generative AI)とは、大量のデータを学習したAIモデルが、指示(プロンプト)に応じて文章や画像などを新たに作り出す技術をさす。プライベートの質問や相談を対話型の生成AIに投げかけ、日々の生活に役立てている人は、もはや珍しくない。総務省の「令和8年版 情報通信白書」(2026年7月公表)によると、日本で生成AIを使った経験のある人の割合は58.8%。前年調査の26.7%から、1年で倍以上に増えた。
一方、仕事ではどうだろうか。同じ白書では、1つ以上の業務で生成AIを利用している企業の割合が86.4%に達し、前年の55.2%から大きく伸びた。増加幅は大企業よりも中小企業のほうが大きい。これまで人間が時間をかけてきた「調べる」「考える」「書く」「まとめる」といった作業の一部は、すでに生成AIに任せられるようになった。実際に業務で利用した人なら、近年の急速な進化を実感しているだろう。
代表的なサービスには、OpenAIの「ChatGPT」、Googleの「Gemini」、Microsoftの「Microsoft 365 Copilot」(以下、Copilot)がある。この他にもAnthropicの「Claude」やPerplexity AIの「Perplexity」など多様なサービスがある。中でも前者の3つは、国内で広く使われるオフィススイートや検索に組み込まれており、ビジネスパーソンにとって最も身近な選択肢だ。
オフィス業務の効率化というと、定型業務の自動化が第一に対象になる。しかし生成AIをうまく活用すれば、定型業務だけでなく、企画や文書作成などこれまで人手をかけていた知的作業の効率化にもつなげられる。特に人手に限りがある中小企業にとっては、生成AIを適材適所に活用できれば、生産性を高めるための1つの戦略になる。
身近になってきた生成AIだが、業務で使うとなったら「何を使ってもよい」というわけにはいかない。単体の生成AIの性能はもとより、普段使っている業務ツールとの親和性、社内のどの情報を扱うかという連携性まで確認したい。個人で使うのか、組織で使うのかによっても、適したサービスは変わってくる。
ここでは代表的な3つの生成AIについて、それぞれの特徴を見ていこう。オフィス業務で想定される使い方であれば、生成AIとしての基本的な機能はいずれも十分に備えている。それだけに、3つの特徴の違いが選択の決め手になる。
生成AIの草分けとも言えるChatGPTは、幅広い作業に対応する汎用性を備える。日常的な質問や相談に使っている人も多い。業務の視点でも、質問への回答や文章の作成・要約、情報収集、画像生成、データ分析など、幅広い用途に対応している。特定の業務ツールに限定されず、対話を起点としてさまざまな作業に活用できる点も特徴だ。議事録の要約、提案書のたたき台づくり、アンケートの自由回答の分類など、部署をまたいで使える場面が多い。
Geminiは、Google検索の「AIモード」にも技術が使われており、意識しないうちに接しているユーザーも多い生成AIだ。Googleサービスの1つとして手軽に利用でき、文章作成や情報収集、画像生成などにも対応する。特徴的なのは、Gmail、Googleドライブ、Googleドキュメント、Googleスプレッドシートなどと連携できる点だ。メールの下書きや資料の要約、スプレッドシート上でのデータ分類を、普段の画面から離れずに進められる。
主要な機能はGoogle Workspaceの各プランに含まれており、別途アドオンを購入する必要は原則としてない。Google Workspaceを中心に業務を進めている企業にとって、仕事の流れに組み込みやすい生成AIと言える。
Copilotは、WindowsやMicrosoft 365を利用している企業にとって身近な生成AIだ。文章作成や情報収集などの基本機能に加え、Microsoft製品との連携に特徴がある。Word、Excel、PowerPoint、Outlook、Microsoft Teamsといった使い慣れたアプリの中から呼び出し、文書の作成や表の集計、会議の議事録づくりなどを任せられる。
対象となるMicrosoft 365プランの契約者は、チャット型の「Microsoft 365 Copilot Chat」を追加費用なしで使える。メールや会議のデータ、社内文書などを横断して活用するには、有償のライセンスが必要になる。
表1 主要3サービスの特徴と向いている企業(2026年9月時点)
| ChatGPT | Gemini | Copilot | |
|---|---|---|---|
| 提供元 | OpenAI | Microsoft | |
| 強み | 対話を起点に幅広い作業へ対応する汎用性 | Google サービスとの連携 | Microsoft 365 アプリとの連携 |
| 主な連携先 | 特定の業務ツールに限定されない | Gmail、Google ドライブ、Google ドキュメント、Google スプレッドシート | Word、Excel、PowerPoint、Outlook、Microsoft Teams |
| ライセンス | 個人単位でも法人単位でも契約できる | 主要機能は Google Workspace の各プランに含まれる | Microsoft 365 へのアドオン。無償の Copilot Chat もある |
| 向いている企業 | 特定のオフィススイートに依存しない企業、個人単位で試したい企業 | Google Workspace が業務基盤の企業 | Microsoft 365 が業務基盤の企業 |
出典:各社の公開情報を基に作成
3つの生成AIサービスの特徴を大まかに見てきた。中小企業が「業務の一部を生成AIに任せる」「仕事の補助役として使う」という目的で導入するなら、基本的な用途に限ればどの生成AIも有力な選択肢になる。一方で、自社の業務環境との相性を考えると、適切な選び方が見えてくる。
まずは「効率化したい業務を明確にする」ところから検討を始めよう。生成AIを使えるようにしたからといって、勝手に業務を効率化させて業績を向上させてくれるわけではない。企業ごとの困りごと、ペインポイントを解消するために、どのような業務を生成AIに任せるかを考える。次に、任せたい業務で現在使っている業務ツールやクラウドサービスと、生成AIの相性を確認しよう。Google Workspaceを使っているならばGeminiが有効だ。Microsoft 365が業務のベースになっているならば、Copilotとの親和性が高い。
その上で、セキュリティやデータ管理、利用ルールを確認したい。ChatGPT、Google Workspace、Microsoft 365 Copilotはいずれも、入力内容を基盤モデルの学習に利用しないと公表している。ただし、機密情報や個人情報を含め、入力してよい情報の範囲は自社で定めておかなければならない。生成AIに潜む情報漏えいリスクとその対策については、本連載の第33回「生成AIで社内情報がダダ漏れ!? 気をつけるべき落とし穴」で詳しく取り上げているので確認しよう。
サービスを選ぶ段階では、次の4点も確認しておきたい。
・入力したデータを基盤モデルの学習に利用しないと利用規約に明記されているか
・すでに契約しているライセンスに含まれていないか、機能が重複していないか
・全社一斉ではなく、部署単位や少人数から始められるか
・無償で使える範囲と有償版とで、社内データの扱いがどう変わるか
もう1つ押さえておきたいのが、ハルシネーション(幻覚)への備えだ。生成AIを使っていると、もっともらしく誤った情報を提示してくる場面に出くわす。高度化が進んだ現在でも、確率的に文章を生成する大規模言語モデル(LLM)の特性から、ハルシネーションをゼロにするのは難しい。生成された内容を人が確認せず、そのまま顧客への回答や経営文書に使うといった運用は避けなければならない。最終確認を人が行う点は、どのサービスを選んでも変わらない。
生成AIを選ぶ際には、機能を見比べるよりも、自社の仕事の流れに無理なく組み込めるかを重視したい。まずは対象業務を絞って試し、効果と安全性を確かめながら利用範囲を広げていく。前述の情報通信白書によると、生成AIの利用を禁止していない企業のうち、「組織的な取組はない」と答えた企業は27.0%、中小企業に限れば45.6%に上る。使ってはいるが、会社としての方針は決めていない企業が、それだけ多いということだ。この状態から一歩踏み出せるかどうかが、サービス選びそのものより重要かもしれない。
その意味で、すでにWordやExcel、Outlookを日常的に使っている企業にとって、Copilotは現実的な出発点になる。使い慣れたアプリの中から呼び出せるため、新しい操作を覚えてもらう負担が小さいからだ。まずは無償のCopilot Chatで社員に生成AIを触ってもらう。効果が見えた部署から、中小企業向けの「Microsoft 365 Copilot Business」などの有償版へ広げていけばよい。仕事の流れを変えずに始められる点は、人手に限りがある企業にとって大きな利点になる。
※掲載している情報は、記事執筆時点のものです
執筆=岩元 直久
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