強い会社の着眼点(第7回) あり?なし?ペーパーレス

働き方改革 デジタル化

公開日:2018.03.14

 オフィスのペーパーレス化は1970年代から提唱されてきた。それから50年近くもたつ今も、相変わらずペーパーレス化の掛け声は続く。オフィスには紙があふれているように見える。実際に、最近のオフィスにおける紙の使用量はどのように変化しているのだろうか。

 参考になるのは公益財団法人古紙再生促進センターのオフィス発生古紙実態調査報告書だ。報告書には、従業員1人当たりの1年間に排出、資源化および廃棄する紙の量に関するデータがある。最新の2016年度と2009年度のデータを比較してみよう。

 2016年度の1人当たりの排出量は138.8kg。2009年度は163.1kgだった。これは雑誌、新聞、段ボールなど、あらゆる紙の合計だ。ペーパーレス化の主な対象と考えられるOA用紙、機密文書、シュレッダー用紙の合計は、2016年が26.9kg。2009年は31.5kgだった。

 7年で約2割という削減ペースはなかなかのように思える。ただし、これは2011年の東日本大震災などによって、省エネ、省資源が非常に盛り上がった理由が大きい。それでも、この程度しか進まなかったのは、オフィスにおけるペーパーレス化の難しさを表すと見ることもできる。

 オフィスのペーパーレス化は、紙の購入・排出コストの削減、スペースの削減といった経費的なメリットだけでなく、働き方改革や情報セキュリティ向上などにも役立つ。さらに大きな視点では、紙の使用を減らせばCO2削減にもつながり、地球温暖化対策にもなる。ペーパーレス化は企業自身のためでもあり、社会のためでもある。現在のレベルで満足してはいられない重要な課題だ。

業務を見直せばペーパーレスは進む

 ペーパーレス化の第一歩は紙のムダを減らすこと。報告書や資料、稟議(りんぎ)書、議事録、見積書、発注書、契約書、マニュアルなど、オフィス内にはさまざまな紙の文書がある。こうした文書の多くは、文書ソフトや表計算ソフトを使って電子データとして作成し、プリンターで印刷される。その後、ファイルに保存されるか、保存するまでもない文書は廃棄される。

 こうしたプリントアウトがすべてムダとはいえない。だが、可能な限り電子化したままで閲覧、保存するように業務を見直せば紙の使用量は減る。それだけでなくプリントアウトの時間が節約でき、かつ保管スペースも削減できる。こうした電子文書をファイルサーバーに保管・蓄積して共有化すれば、ネットワークを介していつでも、どこでも業務に必要な文書をパソコンやスマホなどで検索、閲覧できるようになる。業務の効率化と社員の働き方改革にもつながる。

 プリントアウトをしないで済ませたい文書の代表が会議の資料だ。タブレットやノートパソコンを利用して、ファイルサーバーに保管された会議資料を閲覧する仕組みにすれば、印刷や配布の手間も不要になる。さらに情報管理にも効果がある。セキュリティも向上する。会議のペーパーレス化は内容が明確で、取り組みやすい方策の1つといえる。

 クラウドの活用で情報共有が手軽になり、タブレットやスマートフォンといった情報端末が急速に普及している現在こそ、ペーパーレス化推進のかつてないチャンスだ。

OA用紙は分別再生ではなく社内の再利用も

 もちろん、業種によってはプリントアウトした紙による確認作業が不可欠という業務も残る。こうした業務に関する紙のムダを減らすには、両面印刷や裏紙利用、1枚の用紙に複数の原稿を印刷するNin1といった方法がある。多くの企業がすでに取り組んでいるはずだ。それをさらに進めるなら、プリントアウトやコピーなどを行ったOA用紙を分別再生する前に、オフィス内で再利用する仕組みを導入する手もある。

 このニーズに手軽に対応できる複合機が登場している。書いた文字をこすると、温度変化で文字が消えるボールペンを使ったことがある人も多いだろう。この技術を応用したトナーを用いて、プリントアウトやコピー、FAX受信を行う。

 プリントアウトやコピーした用紙に、専用装置で熱を加えることで消色できる。完全に消えるわけではないが、1枚のOA用紙を5回程度は再利用できる。大量のOA用紙を使い、毎日廃棄しているような業務がある場合には非常に効果的だ。

 

執筆=山崎 俊明

【MT】

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