ビジネスWi-Fiで会社改造(第46回)
ビジネスWi-Fiの整備に補助金を活用しよう
国を挙げてICT化やDX推進の取り組みが進んでいる。実際、政府のDX推進はもとより、大企業を中心にDXの成果が現れるようになってきた。中堅・中小企業に対しても、経済産業省は「DXの進め方」や「DXの成功のポイント」をまとめて、DX優良事例も紹介する「中堅・中小企業等向けDX推進の手引き」を作成し、DXの推進を促している。そうした潮流から「わが社もDXに取り組もう」と思う経営者も少なくない。そこで悩みの種になるのが、情報システム担当者の負担増加や人手不足、そしてスキルの不足などだ。
中堅・中小企業の多くは、情報システム担当者のリソースに課題を抱えている。他の業務との兼任であったり、1人で担当していたりと、厳しい状況に置かれているためだ。増員しようにも、世の中でICT人材は引く手あまたで、中堅・中小企業にまで回ってこないケースもある。人手不足を実感している中で、DX推進にまで手を伸ばすことの難しさを実感している方も多いだろう。こうした企業では、情報システムの担当者が兼任や1人で各種の業務を担当し、さらにシステム更改やIT環境の構築、ヘルプデスク的な業務もこなさなければならない例も存在する。また、コロナ禍以降のリモートワーク対応などで、従来よりも業務が増え、通常業務に追われて、将来を見据えたDX戦略の立案や日進月歩のテクノロジーへのキャッチアップなどには手が回らないという問題も生まれている。
では、実際にどのような問題が生じているだろうか。1人で情報システムを担当している現場では、通常業務に追われて時間が取れないことが大きな課題として挙げられる。時間がないということは、新しい技術を勉強するための時間が取れないだけでなく、付き合いのあるベンダーなどから新しい製品やサービスの提案があったとしても検討することもできないわけだ。そうした中では、ベンダーからの新商品の説明すら重荷に感じ、DX推進の実現に向けた次の一手への対応すらできない。
また、「新技術を勉強する時間やトレンドをキャッチアップする情報収集の時間がない」ことは、当該企業の情報システムがリスクにさらされやすいことにもつながる。サイバーセキュリティの分野は、防御のための対策が着々と高度化している。これは、日々新しい攻撃手法が生み出されていることの裏返しでもある。数年前に導入したセキュリティ対策が今も有効に機能しているか常に検証し続けることは、重要な業務ではあるが、社内の情報システム担当者が1人であったとしたら、なかなか難しい側面もある。加えて、OSやアプリケーションの更新は、セキュリティ対策の基本だが、社内利用されているサーバーや数多くのパソコン、スマートデバイスなどの最新の状態を収集し、更新を実施していく負担も大きい。
さらに、実際にサイバー攻撃を受けてしまったらその負荷は激増する。感染経路の調査や警察など各種窓口への報告、顧客など社外に対する報告など多くの作業が待ち構えている。もちろん、感染したデバイスの隔離から検疫、復旧への各種の作業も同時に発生する。
こうした状況で日々業務にあたるのが、多くの中堅・中小企業の情報システム担当者の姿というわけだ。兼務や1人で担当している場合、自社のICTの課題について相談する相手もいない現状も危惧される。
「社内に情報システムがわかる人がいない」となると、本当に1人で悩むことになりかねない。何らかの相談ができる相手がいたとしても、地域のオフィス機器販売店や、会計・税務事務所、金融機関などが中心になる。DX推進の大きな方向性の見定めから、テクノロジーやセキュリティ対策のトレンドのキャッチアップまで、高いスキルを求められる相談相手としては、やや力不足かもしれない。
一方で、中堅・中小企業でもICTへの投資意欲は徐々に高まっている。大企業から先行したDX推進の波は、中堅・中小企業にも届いて着実に変化が進んでいる。年々深刻さを増す自然災害への対応として、事業継続計画(BCP)にのっとったシステムの更新はその1つ。同時に、オンプレミスのシステムからクラウドへの移行により、BCP対策と業務の効率化を推進する流れもある。さらに、昨今では避けて通れなくなってきた生成AIなどの活用や、データ活用、これらを含めたDXの検討や実行にも投資意欲が高まっている。そして、セキュリティ対策や運用管理といった、守りのIT投資も不可欠なものとして認識されるようになっている。
投資意欲が高まる中、1人で頑張る情報システム担当者には、まず適切な相談相手が必要になる。社内や既存のパートナー企業には適任者がいない場合には、外部のリソースを活用することも検討したい。ICT・DX環境について、現状を可視化し、今後の方向性について包括的に指針を与えてくれるような外部パートナーの存在は貴重だ。情報システム担当者に寄り添い、多様な困りごとを聞いてトータルでサポートできるパートナーを探すことが、人手不足に悩む中堅・中小企業のDX推進の第一歩になりそうだ。
※掲載している情報は、記事執筆時点のものです
執筆=岩元 直久
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