強い会社の着眼点(第11回) ビジネスチャット選びの3つのポイント

IT・テクノロジー コミュニケーション

公開日:2021.07.07

 「メールよりもチャット」。プライベート利用を中心に、シンプルでスピーディーなコミュニケーションが可能なチャットの利用が広がっている。それなりにルールを求められ、相手が読んだかどうか分からないメールよりも、必要な内容だけ送信して既読状況が把握できるチャットの利便性・気軽さを体感しているからだろう。

 ビジネスでもチャットはコミュニケーションの形として着実に浸透している。シンプルでスピーディーなコミュニケーションは、迅速な情報共有や意志決定に有効だ。チャットを利用する企業・団体が右肩上がりに増えている。

「セキュリティ」「コスト」「運用」で選ぶ

 チャットといえば、LINEのようなプライベートチャットを利用する機会が多い。ビジネスでチャットを使うときにも、こうしたプライベートチャットをそのまま活用してもよいのだろうか。

 ビジネスでチャットを活用する上で気になる事案があった。それが、2021年3月19日に総務省が公表したもの。LINEのシステム開発や運用の一部が、中国を拠点とする関連会社で行われており、日本のサーバーにある利用者の個人情報へのアクセスが可能となっていたという。

 ビジネスの機密事項や重要事項をチャットでやり取りするときに、大事な情報が第三者からアクセスできる状況になっていたら取り返しがつかない。万一とはいってもリスクは最低限に抑えたいもの。個人利用でとても便利な無料のプライベートチャットは、一方で本格的なビジネス活用ではリスクが少なくないのだ。

 ビジネス利用を前提としたビジネスチャットを選ぶときには、3つのポイントをチェックしたい。プライベートチャットとの大きな違いがある「セキュリティ」「運用」と、大きな負担にならないような「コスト」である。

ビジネスチャット選びの3つのポイント

国内運用が安心、クローズドな運用もポイント

 まずはビジネスチャットの最大のポイントとなるセキュリティ対策。ビジネスチャットでは国内のデータセンターでの運用を公表しているサービスがある。海外サーバーに重要事項が保存される心配はなく、ビジネス利用でも安心感や信頼感が保たれる。

 運用面の機能もセキュリティと密接に関係がある。プライベートチャットのように誰もが利用できる環境では、社外の第三者に情報を誤って送信してしまうリスクがある。個人アカウントのプライベートチャットを勝手に使って業務連絡をすれば、情報管理が行き届かない「シャドーIT」の温床にもなる。

 一方で、管理者が登録した従業員だけが利用できるクローズドなビジネスチャットなら、社外への誤送信リスクをなくせる。会社がアカウントやログを管理できるので、セキュリティリスクの低減にも貢献できる。

 ビジネス利用に適した機能を備えるビジネスチャットだが、高額な導入コストや運用コストがかかるのでは、企業にとって利用のハードルが高くなる。実は、ビジネスチャットの中には基本サービスならば無料で利用でき、高機能なサービスを利用するときに有償になる、いわゆる「フリーミアムモデル」を採用するサービスもある。これなら高いセキュリティ機能や有効性の高い運用機能を持ったビジネスチャットを、無料で使い始められるというわけだ。

テレワーク対応、コミュニケーション活性化に有効

 ビジネスチャットは、コロナ禍に代表されるコミュニケーションの変化に対しても有効に機能する。テレワークが広まった結果、オフィスで顔を突き合わせていたときのような日常のちょっとしたコミュニケーションが不足するようになっている。「ちょっと確認したい」「先輩の意見がほしい」といったとき、テレワーク中の相手にわざわざ電話をするのは気が引けるもの。チャットならば、短い文章で“話しかける”ことができて、相手も気軽に返答できる。物理的に離れていても、チャットを活用して意思疎通や情報共有がスムーズにできれば、業務を円滑に進められる。

 さらに、在宅、出勤にかかわらずそれぞれの持ち場からスムーズにコミュニケーションを取るのに慣れておけば、災害などで出勤ができない際も事業継続に対する適切な対応が取れる。

 チャットという新しいコミュニケーションの形は、さまざまな変化に対応して企業が勝ち抜くための1つの方策になりつつある。

※掲載している情報は、記事執筆時点のものです
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執筆=岩元 直久

【MT】

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