強い会社の着眼点(第10回) その場にいなくても情報を視える化したい

自動化・AI 顧客満足度向上

公開日:2021.03.17

 街中や店頭、住宅などに「カメラ」が取り付けられていると、監視されているのでは?と気になることも多い。いわゆる監視カメラは、犯罪を未然に防ぐ犯罪抑止や、万が一のときの状況を確認する防犯用途で使われるケースが少なくない。しかし、現在のカメラ用途は、防犯一辺倒ではない。業務効率化やマーケティング施策への貢献と、格段に広まってきている。そこには、技術的な側面と、社会状況の変化の側面が絡み合う。

 技術的な変化を支えるのは、クラウド型カメラの普及だ。専用の装置を使って、モニタールームのような特定の場所で監視していたカメラ利用のスタイルから、インターネット環境さえあれば対応カメラを取り付けるだけでクラウドに映像情報がアップロードされるスタイルへと変化した。パソコンやスマートフォンから、いつでもどこからでも視覚的に状況を把握できるようになったのだ。

 もう1つは社会状況が変化し、「密を避ける」行動が新しい生活スタイルになった事情がある。すいていそうな時間を見計らって出掛けてみたら、現地が混雑していたというケースはよくある。カメラの映像からリアルタイムで現地の混雑状況が分かれば、訪れる時間をずらす対応も可能になる。

公共施設はもちろん、医療現場や小売業にも需要

 混雑回避を目的としたカメラの利用例としては、鉄道会社での活用がある。ある鉄道会社ではすでに、カメラで撮影した映像を分析して、駅の改札口付近の混雑状況を映像で可視化するサービスを提供する。コロナ以前から、ラッシュ時の混雑や事故・災害時の駅の状況を離れた場所から確認できるサービスとして効率的に使われてきた。

 こうした混雑状況の視える化は一層の需要の高まりを見せる。駅のような交通機関はもちろん、市役所や図書館など公共施設の混雑状況の可視化と、状況に応じた混雑回避対策は新しい生活様式の実現に必要になりつつある。利用者にとっても、混雑していない状況を自宅から確認できれば、すいているタイミングでコンパクトに用を済ませられる。

 さらに、設置が容易なクラウド型カメラの特性を生かせば、現場状況の視える化にはさまざまな利用形態が広がる。医療現場では、受け付けの混雑状況を来院患者に視える化して情報提供する対外的なサービスだけでなく、入院患者の状況や医療機器のデータをクラウド型カメラで撮影し、ナースセンターで集中管理する内部用途にも利用できる。小売店でも、店頭やレジ周りの混雑状況のリアルタイム把握に加えて、各店の商品陳列状況確認などにも利用できるだろう。

カメラ映像を使った異常検知やAI予測も手軽に

 クラウド型カメラは、映像データがクラウドに集約して保存されることから、専用機器をローカルで導入する場合に比べてメリットを得やすい。とりわけパソコンやスマートフォンなど多様なデバイスから、場所を問わずに映像を確認できる柔軟性は第一のメリットだろう。

 専用の防犯カメラシステムでは、災害時などにストレージ部分が壊れてしまうと映像を復元できないが、クラウド型カメラならデータは現地でなくクラウドにあるため、被災直前の映像まで確認できる。

 さらに、クラウド側には高い映像処理が可能なインフラがあるので、多様な使い方への対応も可能だ。クラウド型カメラで収集した映像と音声を分析して、異常を検知したときには警告を発出する機能を使えば、異常事態への迅速な対応が可能になる。最近では、クラウド型カメラの映像をAI(人工知能)が分析して、混雑状況などを視える化するサービスもある。密を避けるという時代に求められるサービスを、容易に提供できる環境が整いつつある。

 もう1つ、近年の傾向としてチェックしたいポイントは、カメラ設置の容易さだ。クラウド型カメラの利用には、電源とともにクラウドとやり取りするためのインターネット環境が必要だ。インターネット環境がない場所はもちろん、Wi-Fiの導入が難しかったり有線LANの配線ができなかったりすると利用へのハードルは高くなる。そんな中、スマートフォンなどに使われるモバイル回線のLTEを利用して、場所を問わずに利用できるクラウド型カメラも登場している。AI活用により機能が向上し、LTE対応カメラにより設置の自由度が高まれば、クラウド型カメラはさらにビジネスの「視える化」に貢献してくれそうだ。

執筆=岩元 直久

【MT】

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