Biz Clip調査レポート(第35回) 企業のビジネスチャット利用実態調査2022

コミュニケーション

公開日:2022.12.26

 長期化するコロナ禍への対応や働き方改革の実現に向けて、テレワーク・リモートワークが一般化しつつある中、多様化する社内コミュニケーションの円滑化に向けて変化が生じている。これまでオフィスで日常的に行われていたちょっとした連絡や相談を実現するための「ビジネスチャット」の利用だ。では、実際にビジネスにおけるチャット活用度合いやツール選定はどうなっているのだろうか。その利用状況について、日経BPコンサルティングのアンケートシステムにて、同社保有の調査モニター2835人を対象に調査を実施した。

ビジネスチャットの企業導入比率は約5割に

 まず、ビジネスチャットの勤務先導入状況について尋ねた。「導入している」と答えたのは47.9%、「導入予定なし」が35.9%となった。従業員規模別に見ると、導入比率は99人以下の企業では20.3%、1万人以上の企業では80.7%という結果となった。従業員数に比例して導入率は高まっている。また前回調査では「導入している」が43.0%で3.9ポイント増。1万人以上企業では73.0%から7.7ポイントの増加となり、総じて企業利用が進んでいる様子が見てとれる(図1)。

【図1 ビジネスチャットの導入について】

 次に導入済みと回答した層に、メインで使用するビジネスチャットが何かを聞いた。1位は「Microsoft Teams」(67.3%)、2位は「Slack」(8.8%)、3位には「Google Chat」(6.7%)という結果が得られた。これら以外には、「LINE WORKS」(4.5%)、「Chatwork」(3.1%)が続き、「無料のものを使っている」層も2.9%存在した(図2)。ちなみに、Microsoft Teamsの利用については、前回から4.5ポイント増。「無料のものを使っている」については、1.5ポイント減となった。

【図2 メインで使用しているビジネスチャット】

約8割の企業がビジネスチャットを利用

 では、活用頻度についてはどの程度だろうか。「ほぼ毎日頻繁に活用」が59.0%と最多で、「時々活用」が25.4%となり、活用動向としては、約8割の企業がビジネスチャットを活用している結果となった。一方で、「あまり活用していない」が11.2%、「活用していない」が4.5%という結果も得られ、活用に後ろ向きな企業も一定数存在している(図3)。

【図3 どれくらいビジネスチャットを活用しているか】

 ビジネスチャットの業務への貢献度については、「とても役に立っている」と回答したのが49.1%、「やや役に立っている」が38.3%。「あまり役に立っていない」が9.6%、「まったく役に立っていない」が3.0%となった(図4)。この点、前回調査と同様にほぼ毎日活用する比率(59.0%)よりも、とても役に立つと感じている比率(49.1%)が10ポイント程度低い結果となり、依然としてビジネスチャットを頻繁に利用する層が、現時点で効果を十分に感じられていない可能性が推測される。

【図4 ビジネスチャットの業務への役立ち度合い】

ビジネス利用においては「検索機能」に根強い需要

 

 ビジネスチャットにおいて必要、または強化してほしい機能についても聞いた。1位は「検索機能」の33.4%。2位は「スケジュールなどとの連携機能」(24.9%)、3位は「既読・未読機能」(24.2%)となり、順位は前回調査と同じ結果となった。業務利用においては、過去のやり取りを確認する必要や目的箇所にたどり着きやすさなどが重視された結果、この機能への強いニーズが生まれていることが予想される。さらに、「セキュリティ機能」(12.3%)、「デバイス連携機能」(11.3%)が上位に並んだ。一方、いいね!などの反応を表す「アクティビティ機能」(5.4%)、写真やアバターなどの「UI・ビジュアル機能」(3.7%)は前回と同様、それほど重視されていない傾向となった(図5)。

【図5 ビジネスチャットで必要、強化してほしい機能】(複数回答)

 多様化する勤務環境の中で円滑なコミュニケーションを図ることや、さらなるDX推進のポイントとなるのはICT環境の整備だ。リモートワーク・テレワークが浸透しつつある中でメールや電話以外の手軽なコミュニケーション手段のニーズは引き続き高いと考えられる。

 一方で、こうしたコミュニケーションツールがビジネスシーンで浸透していくにつれ、社内だけでなく社外とのやり取りや、多様なデバイスから接続する機会も増えていくだろう。近年はサイバー攻撃の脅威も多様化している。利便性と同時に社員だけでなく会社側もセキュリティリスクに配慮しつつ、運用していく必要がある点をしっかりと認識しておきたい。

<本調査について>
日経BPコンサルティングのアンケートシステムにて、同社モニター2835人を対象に2022年10月に調査

執筆=調査・執筆 = 日経BPコンサルティング

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