ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
彼はスペシャルだ。「彼」とは、米大リーグシアトルマリナーズのイチローである。イチローのプレーを見て、そのような印象を抱く人は多いだろう。
美しい弧を描いて内野手のグラブやミットに収まるレーザービームと称された鋭い返球。そしてバッティングである。バッターボックスで大きく回したバットを垂直に構え、袖口をきゅっと引っ張る独特のしぐさの後、球場に快音が響き渡る。
そうして生まれた大リーグでの安打数は3089。“参考記録”という形で紹介される日米通算の安打数は実に4367(2018年5月2日現在)に上り、歴代通算安打数で堂々1位に輝く。
さて、ここまで多くのメディアに倣い、彼をイチローと呼んできたが、呼び捨てにしているようで居心地の悪さを感じている。一方で、もうイチロー選手という表現もマッチしないのかもしれない、とも思っている。周知の通り、イチローは日本時間の2018年5月4日、マリナーズのベンチ入りメンバーを外れ、会長付特別補佐に就任したからである。
しかし、アドバイザーとしてチームをサポートする立場になっても、イチローはやはりイチロー。特別補佐に就任した当日も、イチローは何もなかったかのように自らに課したルーティンを守り、キャッチボールや打撃練習に汗を流していたという。イチローをイチローたらしめているもの、それは同じチームのメンバーが時計代わりになるというほどに時間通り、正確に繰り返す日々のルーティンではないだろうか。
イチロー自身、次のように述べている。
「ハイレベルのスピードでプレーするために、僕は絶えず体と心の準備はしています。自分にとって一番大切なことは、試合前に完璧な準備をすることです」(児玉光雄著「イチロー頭脳」より)
実際のイチローは、その言葉以上に、試合前はもちろん、試合後もロッカーに戻ると、すぐにスパイクを磨き、グラブの手入れをするなど道具の手入れに努め、帰宅後もマシンを使ったトレーニングやマッサージで体をケアして翌日のゲームに備えてきた。そうしたルーティンをチームの状態に関係なく、ゲームがない休養日にも球場に足を運び、繰り返してきたというイチロー。まさに日々の過ごし方までルーティン化することで結果を残した究極の存在といえるだろう。
イチローが活躍してきたのは、何より結果が重視されるプロスポーツの世界。だからこそルーティン化の効果がはっきりと目に見える。
ビジネスにおいては、ルーティンを確立してもしなくても、ちょっと目にはアウトプットの違いが分からないかもしれない。しかし、イチローはもちろん、ラグビーの五郎丸歩選手のケースを見ても、ルーティンを確立することのメリットは明らかだ。
また、イチローのチームメートは、彼の日々のルーティンを目の当たりにし、野球に対する情熱、プロフェッショナルとしてのあり方、具体的なウォームアップのノウハウを吸収したという。つまり、組織という観点からは周囲への好影響もメリットだろう。
そのビジネスパーソンの仕事に対する取り組み方、考え方が周囲に影響を与え、従来の教育や研修などでは実現できなかった組織の内なる部分からの変化や自発的な成長を推進するきっかけになるかもしれない。
執筆=藤本 信治(オフィス・グレン)
ライター。
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アスリートに学ぶビジネス成功への軌跡