強い会社の着眼点(第14回) 文書管理のココが困った。どこから手を付けるべきか

業務課題 デジタル化自動化・AI

公開日:2022.12.20

 業務の効率化に向けて、どこから手をつけたらよいのかと悩む企業は多いだろう。効率化は試行錯誤の結果としてもたらされる側面はあるが、まずは「あるべき理想の姿をイメージする」ことが出発点になる。そこに向けて今何が足りないのか、何ができていないのかを考えることでおのずと道筋が見えてくる。その1つの姿として、デジタルを活用した業務効率化が思い描かれるだろう。

まず「デジタル化」というハードルを越えること

 テレワーク・リモートワークなどをはじめとしたテクノロジー活用が進む中で、業務効率化に向けて考えなければならないものに、紙ベースの書類のデジタル化が挙げられる。紙書類がデジタル化され、データとして扱える状態になっていることで、ネットワークを介して多くのメンバーと共有することや、さまざまな形での利活用が容易にできるようになる。

 もし、各種の文書がデジタル化されていなければ、必要な時に必要な文書を迅速に入手することができない、といった事態も招きかねない。テレワーク・リモートワークを実現できているのに、ともすれば「紙の書類を探すために出社しなければならない」ことにもなる。

 しかし、今でも多くの文書が紙のまま保管されているケースは多い。それだけでなく、「現在進行形で紙文書が増え続けている」という企業もあるだろう。紙文書のデジタル化を阻む壁はいくつも存在する。例えば、「保管されている大量の紙文書をデジタル化するためには膨大なパワーがかかる」「デジタル化を外部に委託すると多額の費用が発生する」「注文がハガキやFAXで入ってくる」「手書き文字なのでOCRでは読み取れない」などだ。

 一方で、デジタル技術は日進月歩で進化している。紙の文書をデジタル化するスキャニングの機器は高度化と高速化が進み、より簡単にデジタル化作業を行うことができる。

進化するデジタル技術。業務効率化の最適解

 サービスの価格も下がってきている。さらに特に以前とは大きく変わってきているのが、OCRの精度だ。「AI-OCR」というAIによって文字認識レベルを引き上げたOCRが今や常識になりつつある。しかもクラウドサービスとして提供されているために導入がしやすく、多言語に対応したものもある。

 AI-OCRでは多くの学習データを必要とするAIの強みを発揮しやすい。多くの人がサービスを利用することで自然と大量の学習データが集まり、それを処理することでAIが進化して読み取り精度が向上するという好循環がもたらされる。

 サービスによって得意不得意の分野が分かれることもあるが、多くのAI-OCRサービスがあるので自社の状況にあったものを選ぶことが可能だ。また、紙文書をスキャニングしてデジタル化し、それをAI-OCRでデータ化することでさまざまなメリットが享受できる。

 例えば、紙の書類がなくなることで、紙文書の保管庫は不要になる。これは目に見えるコストダウンにつながる。テレワーク・リモートワークを取り入れたハイブリッドワークとも相まって、スペースに余裕が生まれたことをきっかけに、オフィスの機能自体を見直してみるのもよいだろう。また、ペーパーレス化が進めば、プリンター類も最適化できる。設置台数を減らしたり、プリントアウトに制限をかけたりすることでソフトランディングを図る企業は多い。

 そして、何よりも大きなメリットはデジタルデータ化することで、あらゆるシステムに利用できるようになることだ。これまで悩みの種となっていた紙書類がデジタルデータになることで、業務フロー全体を大幅に改善できる可能性が高まる。例えば、RPAによってシステムへの入力を自動化するといったものも考えられる。FAXで受け付けた注文をAI-OCRでデータ化し、RPAによって販売システムに入力すれば、一連の業務全体を自動化でき、正確性も高まるだろう。強い会社はこうした好循環を作り出している。

執筆=高橋 秀典

【MT】

あわせて読みたい記事

  • ニューノーマル処方箋(第58回)

    1本の電話が大きなリスクに!? 実は怖い迷惑電話とその対策

    業務課題 リスクマネジメント音声通話

    2025.02.07

  • 中堅・中小企業DX実装のヒント(第11回)

    DXで人材採用の効率と精度アップを実現

    業務課題

    2025.02.07

  • 知って得する!話題のトレンドワード(第22回)

    ポイント解説!スッキリわかる「イクボス」

    業務課題 経営全般

    2025.02.04

連載バックナンバー

強い会社の着眼点