中小企業のトレンド(第14回) 中小企業に役立つ新型求人サービス続々(前編)

雇用・研修 時事潮流

公開日:2016.08.22

 中小企業にとって使い勝手のいい、様々な求人支援サービスが充実してきた。企業から優秀な学生に直接オファーできる、SNSを使って求人情報を広めるなど、タイプは様々。こうしたサービスを活用し、学生・既卒者に従来とは異なるアプローチをする中小企業の動きを2回にわたって紹介する。

 経団連に加盟する企業の就職面接解禁後、大手の選考が先行し、中小企業の新卒採用は後ろにずれ込むケースが多い。そこで、注目したいのが、中小企業に役立ちそうな求人サービスが充実してきたことだ。

様々なタイプの求人サービスが揃う

 従来とは異なるサービスの代表が「逆求人」型。その名の通り、一般的な求人とは反対に学生が登録した情報を元に企業が面接を申し込む。通常の求人に比べ、少数の学生を狙って効率的な採用活動ができ、優秀な人を採用できるチャンスがある。

 アイプラグ(大阪市)が運営する求人サイト「オファーボックス」もその1つ。2012年10月にスタートし、利用企業数は16年1月現在で1300社。17年春卒業予定の学生の登録者数も今年2月に2万人を超えた。

 このサイトで学生は、学歴、クラブ活動歴、居住地などに加え、自己PRや過去のエピソード、自分の写真や動画なども掲載できる。学生が受けた適性診断の結果も有料で閲覧可能だ。

 企業は様々な条件で求める学生を検索し、「これは」と思う人がいれば、人事担当者が顔写真・コメントを付けてメールでオファーする。ただし企業は100人までしかオファーできず、学生は15社までしかオファーを受けられない。人数を絞るのは、真剣な採用を行ってもらうためだ。学生側が承認すれば面接に進む。

 料金は成功報酬型。企業が内々定を出し学生が承諾した時点で、学生1人当たり30万円を企業が支払う。

 中野智哉社長が、このサービスを思いついたのは、創業前の10年当時、内定をもらえないか就職後3年以内に離職してしまう学生が、年間の大卒者の半分近くに上ることを知ったのがきっかけ。「学生、企業、大学のつながり方が問題」と考えた中野社長は、求人サイト経由でエントリーした多数の学生に対して採用活動を行う方法に代わり、少数の学生を企業がじっくり選考できる仕組みを構築した。

 「地域や出身学部などに応じて、従来採用できていなかった層にアプローチしたい企業やベンチャー企業に評価されている。中小企業も、社長自らが学生にオファーすれば、採用のチャンスは広がる」と中野社長は話す。

 加えて、「当社の仕組みを使って1対1でじっくり面談すれば、ミスマッチが原因で退職する学生を大きく減らせるはず」とみている。

優秀な学生と面会

 ジースタイラス(東京・文京)も、プロフィールや自己PRを登録した学生に、企業がメールでコンタクトできるサイト「逆求人ナビ」を運営。30万円で3カ月間利用できる。「200~300人規模の会社を中心に200社が利用し、半数以上が採用に成功している」と、折阪佳紀社長は話す。

 さらに同社は、「逆求人フェスティバル」という、企業と学生が実際に出合う場も設けている。貸し会議室などで学生が自らブースを設け、5分間の自己PRを準備して企業を待つ。プレゼン後は、25分間、企業の担当者と質疑応答を繰り広げる。学生1人との“お見合い”に30分かかるため、企業の担当者1人が1日に会える学生は8人までだ。

 サイトに情報を登録した学生ならだれでも参加できる予選会のほか、サイトの掲載情報や予選での面談の感触などを元に企業が学生をランク付けし、選ばれた学生しか出られない本選や、情報系など理系の学生に絞ったイベントも開催する。

 企業のイベント参加料金は、予選は1回40万円、本選は同80万円。本選は倍額だが、絞り込まれた学生に効率的に会えるので、優秀な学生を獲得できる可能性が高まる。なお、イベント後の企業と学生との面接などでの接触は、それぞれに任せている。

逆求人の学生にチラシ

 オンリーストーリー(東京・渋谷)が5月から始めた「チラ新卒」も、逆求人型の求人サイトに関連する新卒・既卒対象のサービスだ。

 同社は、20代が対象の「ワナビーズ逆求人」というサイトを運営。成長性ややりがい重視で就職先を選ぶ学生と、中小企業とを結びつけようとしている。スタッフは、まず求職者と1時間面談し、その学生を紹介する写真付きの専用ホームページを無料で作成する。

 面談を受けにオンリーストーリーを訪れる学生や転職希望者は、毎月10~25人を数えており、面談の際に求人中の中小企業の会社案内チラシなどを渡して、その魅力や求人の概要などを説明するのが「チラ新卒」サービスだ。興味を持った学生がいれば、同社が求人先の企業につなぎ、面接への橋渡しを行う。料金はチラシ1枚につき4000円(サービス開始記念で当面は、通常の66%引き)。地域や職種で絞り込んだ学生に配布する場合は8000円(同)だ。

 「チラ新卒」はスタートしたばかりだが、平野哲也社長は、「中小企業は求人サイトに広告を出しても埋もれがち。これに対し、学生にチラシを直接手渡しして説明すれば、認知してもらいやすい」と話す。

日経トップリーダー/井上俊明

【T】

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