中小企業のトレンド(第2回) 中小と大企業を結ぶ「技術マッチングサービス」拡大

時事潮流 増収施策

公開日:2015.07.03

 大手企業に開発パートナーとなる中小ものづくり企業を紹介するサービスが人気を集めている。仲介の費用は300万円以上に上るケースもあるが、引き合いは強い。技術力がある中小企業には追い風だ。しかし、その背後で下請け企業の淘汰も進んでいる。

 「いまだかつてないほど、とんとん拍子に商談が進んだ」。こう話すのは、光学機器の開発・製造を手掛けるオプセル(さいたま市)の小俣公夫社長だ。14年前、新潟大学工学部の新田勇教授と起業。解像度が高く、視野の広いレーザー顕微鏡を研究施設などに納入してきた。だが、「ニッチで高額な製品ばかりなので、販路開拓には苦労が絶えなかった」。

 状況が好転したのは2014年2月。偶然、知り合った産業支援機関の職員に「あなたの会社の技術を求めている企業がある」と声をかけられた。ある大手企業が、高精度の検査装置を製造できる企業を探しているという。その職員から紹介を受け、プレゼンテーションやサンプル評価を経て、2014年11月に正式に受注した。

 実は、この商談の背後には従来とは異なる「技術マッチング」の仕組みが働いている。小俣社長に顧客企業を紹介したのは、「Linkers(リンカーズ)」のコーディネーターだ。リンカーズは、新製品などの開発パートナーを探す大手企業と、技術力に自信のある中小・ベンチャー企業のマッチングを目的にしたサイト。Distty(ディスティ:東京・千代田、前田佳宏社長)が2014年1月に立ち上げ、約1年で大手企業から約100件の募集案件を受注した。発注者は1件の成約について、探索費用や成果報酬を90万円以上支払う。

 リンカーズでは、大手企業からの募集に対し、中小・ベンチャー企業が直接、応募することはできない。全国各地の経済連合会や産業支援機関と提携し、その職員など約1200人をコーディネーターとして組織化。彼らから推薦された企業だけが、選考の対象になる。〝目利き〞を介した仕組みが特徴だ。

 リンカーズのように、技術マッチングを手掛ける企業や組織は増えている。中小企業基盤整備機構は、2014年10月、技術仲介サイト「J-GoodTech(ジェグテック)」を開設した。中小機構が選んだ技術力の高い中小ものづくり企業に絞って、大手企業が募集をかけることができる。開設から3カ月で約100件の募集案件を集めた。

アジア企業と競合も激化

 米国では、2000年に設立されたナインシグマが技術マッチングの大手として知られる。日本では04年から日本総合研究所と共同で事業展開を開始。06年、日本法人のナインシグマ・ジャパン(東京・千代田)を設立した。

 ナインシグマ・ジャパンの場合、開発パートナーを探す費用は1件320万円からと高額だが、引き合いは強い。これまでに国内で約700件のマッチングを手掛けた。「日本の大手メーカーは従来、すべての技術を自社で開発したがる〝自前主義〞が強かったが、00年代から急速に変わった」と、ナインシグマ・ジャパンの諏訪暁彦社長は指摘する。

 グローバル競争の加速で、新製品に必要な技術が多様化、高度化した一方、開発期間は短くなった。そのため自社にない技術は、外部から調達する傾向が強まっている。この流れは、独自技術を持つ中小企業には追い風だ。

 ハタ研削(長野県安曇野市)の畠山泰彦会長は7年前、ナインシグマ・ジャパンを介して、大手印刷機器メーカーの募集案件に応募し、受注した。求められたのは、セラミックス素材に幅50ミクロン以下の溝を掘る技術だった。

 ハタ研削の主力は、光通信部品の製造。特に光ファイバーの分岐や接続に使う「V溝基板」では、世界シェアの5割以上を握る。そのポイントとなる「細い溝を掘る」技術が、高精細な印刷機器の製造に応用できた。「自社技術の意外な使い道が分かり、新しい事業分野を開拓できた。光通信部品に売り上げの約7割を頼る事業構造に危機感を覚えていただけに貴重な発見だった」と、畠山会長は振り返る。

 一方で、技術マッチングの広がりには、中小製造業の淘汰を促進する怖さもある。ナインシグマ・ジャパンが日本の大手企業から受注した募集案件のうち、日本の中小企業や研究者が選ばれたのは2割強。8割近くは、欧米やアジアの企業など海外から選ばれた。その背後に、得意先との取り引きが縮小したり、新しい受注を逃した日本の中小企業があるかもしれない。

 この状況で中小製造業が生き残るには、独自技術を磨くのはもちろん、それだけでは不十分だ。自社の強みが生きる新分野を探し、新規顧客にアピールする力が、今まで以上に求められる。

日経トップリーダー/小野田鶴

【T】

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