ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
増え続けている中小企業の廃業──。経営不振や後継者難に加え、「結婚しない経営者」の増加も心配だ。独身経営者の「婚活」が中小企業の経営課題として浮上してきた。2016年に休業や廃業、解散した会社の数は、調査開始以降最高の約2万9600件に上った(東京商工リサーチ調べ)。その多くを同族経営の中小企業が占める。よく指摘される理由が、経営不振と後継者の不在だ(下図)。
中小企業の廃業が増える主な要因
だが今後、中小企業の廃業数をさらに押し上げかねない深刻な問題がある。それは「結婚しない経営者」。創業者の後を継いだ2代目が婚期を逃すといったケースが多い。
中年独身者の増加は、日本社会全般に広がる傾向だが、中小企業経営者の場合、さらに結婚のハードルを上げる特殊要因がいくつかある。
1つには、とにかく多忙で「婚活」の時間がない。経営に真剣な社長ほど業務に没頭し、結婚が後回しになる。もう1つは、婚活をすると目立つこと。婚活においては経営者という特別な立場がマイナスに働く。中小企業経営者は、地元で顔が知られていることが多い。だから、お見合いパーティーなどには出席しづらい。
一方、個人の生き方が尊重される昨今、一昔前のように親戚や取引先などによるお見合いの仲介は減っている。こうした問題を解決しようと、経営者や後継者向けの婚活を事業化したのが、マリッジパートナーズ(仙台市、以下MP)だ。
MPは人材サービス業のヒューレックス(同)の子会社。ヒューレックスは地方銀行と連携し、中小企業向け人材紹介を手掛ける。
そうした中、「地銀から非公式に『融資先の後継者の結婚相手を探してくれないか』と頼まれる機会が複数あったので、MPで13年からサービスを始めた」(松橋隆広社長)
MPでは、中小オーナー企業の経営者や後継者などに対象を絞った結婚相談サービスを提供している。中でも気を配るのが、プライバシーの確保。出会いの場は男女2人に専属のコンシェルジュだけが同席し、レストランの個室などを用意する。
コンシェルジュによるきめ細かいフォローも特徴。相手に求める条件を丁寧に聞き取り、双方のニーズに合った人を選ぶ。服装や会話の進め方のほか、デートのセッティング、最終的にプロポーズの仕方までアドバイスする。
この事業を統括する浅野有史しあわせ部長は「相手に求める条件は多様だが、独身経営者の背中を押すコツがいくつかある」と話す(下図)。
「結婚しない後継者」の背中を押す方法
※マリッジパートナーズへの取材などを基に編集部で作成
まず、中小企業経営の現実を知る相手を探すこと。経営者には、家庭より仕事を優先しなければならない場面が多いからだ。
具体的には、オーナー経営者の子弟や子女が向く場合が多いという。自分の親の働きぶりを幼い頃から見ており、企業経営の苦労を肌身で知っているためだ。
2つ目は計画を立て、短期集中で取り組ませること。「独身経営者は、婚活には奥手でも、目的が明確なプロジェクトは得意なタイプが多い」(浅野氏)。その持ち味を生かし、「1年後に結婚」など具体的な目標を決め、そこから逆算してコンシェルジュと行動計画を練る。
「3カ月以内に特定の相手を見つけ、6カ月ほど交際して結婚を決めるのが、王道パターン。平均8カ月弱で成婚する」(浅野氏)
3つ目のコツが、本人のストライクゾーンを広げること。最初は50代の男性が「20代の容姿端麗な女性」を希望するなど、理想を求めがち。そのままでは女性のニーズと乖離(かいり)し、成婚の可能性は低い。
その場合、コンシェルジュが幸せな家庭を築くといった結婚本来の目的に再度目を向けさせる。実際、こうしたアプローチが功を奏し、MPのサービスで結婚。跡取り候補となる子宝に恵まれる夫婦も多い。
このサービスによる成婚率は約30%。一般的な結婚相談サービスの成婚率が10%程度であることを考えると、高い水準を保っている。料金は、入会金などの初期費用が18万~38万円。加えて、会費が月1万~2万円で、成婚時に20万~30万円の成婚料が発生する。
独身経営者の問題を放置すると廃業が増え、日本経済の活力をそぐ。特に地銀の関心が高く、優良貸出先の囲い込み策などとして、MPに協力を仰ぐケースが相次いでいる。現在、東北地方などの地銀7行が提携している。結婚願望のある独身経営者がこうした婚活サービスをうまく活用できれば、中小企業の将来にも光明が差す。
日経トップリーダー/文/久保俊介
【T】
中小企業のトレンド