中小企業のトレンド(第33回) 何が起きる?「高齢者の高齢化」が加速する

時事潮流 事業継承

公開日:2018.04.19

 ――75歳未満の「若いシニア」は、既に減り始めている。75歳以上の比重が高まり、「高齢者の高齢化」が進む。シニア活用が岐路を迎え、外国人採用に本腰を入れる中小企業が増えるだろう。

 今、シニア活用の大前提が崩れようとしている。

 「元気なシニア」は減りつつある。要介護認定を受ける人は75歳ごろから増える傾向にあるが、それより若い「60~74歳」の高齢者は、2017年から減少に転じている。一方で「75歳以上」は増え続ける(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」に基づく。以下同じ)。

※ 「国勢調査」(総務省)と「日本の将来推計人口」(国立社会保障・人口問題研究所)を基に日経トップリーダー編集部が作成

 24年、団塊の世代が75歳以上になる。このとき、75歳以上の高齢者は2120万人を超え、総人口の17・2%を占める。それに対して、60~74歳は1550万人ほど。17年から200万人以上減り、75歳以上より少ない。シニア活用は大きな転機を迎える。

「『若い人がいないから、高齢者で何とかする』という、穴埋め的なシニア活用は行き詰まる」と警告するのは、老年学(ジェロントロジー)の観点から、シニア活用のコンサルティングなどを手掛ける自分楽(東京・文京)の崎山みゆき代表だ。「今のシニア世代の特徴を踏まえて、採用戦略を立てるべきだ」と訴える。

元気なシニアは忙しい

 崎山代表によると「働きたいシニア」には、大きく分けて2つのタイプがいる。

 1つは、現役時代に培った知識やノウハウを生かしたい「プロ人材」。大手メーカーを退職したエンジニアが、中小メーカーに再就職するといったケースだ。

 もう1つは、過去の職歴にこだわらず、パート・アルバイトとして軽作業的な仕事を選ぶ「割り切りシニアワーカー」だ。

 後者の割り切りワーカーが生まれる背景には、今どきのシニアに特有の事情がある。目下、健康なシニアは忙しい。老親や配偶者の介護、共働きの子ども夫婦に生まれた孫の育児などを引き受け、ボランティア活動にも意欲的。そんな中で働くなら、短時間勤務でシフトに融通が利く仕事がいい。

 また、年金を受給するようになると、「仕事は健康増進のため」と割り切り、給与水準にあまりこだわらない人も多い。プロ人材にもこの傾向はある。

シニアの中で世代交代

 割り切りワーカーのシニアを採用する場合、特に労災や健康に対する注意が欠かせない。

 重要なのは、業務量に対して多めの人員を確保すること。疲れやすく、体調を崩しやすいシニアに配慮し、1回当たりの勤務時間を短くし、休日を多くするためだ。シフトへの細かな要望に対応することも可能になる。

 そのほかにも、トイレ休憩の取り方や、マニュアルの文字の大きさや色使いなど、考慮すべきことは多い。

※ 自分楽の崎山代表への取材を基に編集部が作成

 シニアを採用した場合、リタイアまでの時間が短いことも、頭に入れておきたい。厳しい現実だが、70代に入ると病気などで就業できなくなる人が増える。だから、現役シニアが活躍している間に、次世代シニアを採用し、教育することが欠かせない。

 例えば、還暦の60歳前後で採用したシニアが、60代後半になったら、新たに現場に入った「アラ還」世代の社員に仕事を教えるといった具合だ。同じシニア同士であれば、IT機器の操作のどこでつまずきやすく、どう克服すればいいかなどを、若手より熟知している。こうしてシニア内での世代交代をスムーズに進める。

 もっとも「高齢者の高齢化」があまりに進むと、限界がある。この人材危機に備え、外国人の本格採用に取り組む中小企業はますます増えるだろう。実際、ミャンマーなどで日本語学校に出資したり、専門学校を設立したりなどして、日本に興味を持つ人材をイチから育てる中小企業も出てきている。人材への投資を惜しんでいては、中小企業は生き残れない。

日経トップリーダー/文/小野田鶴

【T】

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