中小企業のトレンド(第30回) 異業種が続々と参入しシェアサイクル競争が激化

時事潮流 増収施策

公開日:2018.01.18

 民泊、貸し会議室、カーシェアリングなどの利用者が倍々で伸びており、シェアリングエコノミーの市場が急拡大している。事業者は、低コスト化と付加価値化でしのぎを削る。身近なところでは、自転車を共有して使うサービス「シェアサイクル」の市場が急拡大している。

 国内トップを走るのは、NTTドコモ傘下のドコモ・バイクシェア(東京都港区)だ。2011年からサービスを開始し、利用回数が毎年倍々で増えている。2016年度の利用回数は220万回で、会員数は20万人を超えた。東京7区、横浜、仙台、広島などの20地域でサービスを展開している。

●ドコモ・バイクシェアのサービス利用回数の推移

サービス開始当初から倍々で利用回数が増えている(出所:ドコモ・バイクシェア)

 レンタサイクルと異なり、借りた場所と異なるステーションで返せるのが特徴だ。料金は、最初の30分が150円で、その後は30分ごとに100円かかる。

 外回りの営業担当者や、オフィス機器の修理担当者を抱える企業など、ビジネスシーンでの利用が増えているという。短距離の移動が多い場合、クルマより小回りが利くので便利だ。社用車の削減はコスト削減にもつながる。食品などの宅配サービスによる利用も増えている。

 同社は今後、都内を中心にサービス地域を拡大していく考えだ。地方の観光地への導入も進めていく。

世界大手が国内上陸

 ドコモの独壇場だった国内市場に、今年8月、世界大手が乗り込んできた。中国のモバイクが、札幌市でシェアサイクルを開始した。市内のコンビニエンスストアなどに駐輪場を設け、市民と観光客の利用を見込んでいる。料金は、30分50円とドコモの半額にした。年内に政令指定都市など国内10カ所程度に広げたい考えだ。

 モバイクは、中国で1億人以上の利用者を抱えるシェアサイクルの世界大手である。2016年に上海で事業を開始し、わずか1年で英国、シンガポール、イタリアの160都市でサービスを展開。日本は5カ国目の進出となる。同社サービス利用者の年間走行距離の合計は25億kmで、約61万tのCO2削減効果があったとしている。

 中国でモバイクと争うオッフォも日本進出の準備を進めている。ソフトバンク コマース&サービスと手を組み、今秋にも東京と大阪でサービスを開始する予定である。

都内を中心にシェアサイクルの拠点を拡大している

 2017年9月7日には、フリーマーケットアプリ大手のメルカリ(東京都港区)が、シェアサイクルビジネスへの参入を表明。2018年初めに「メルチャリ」の開始を計画している。同社のアプリ利用者は、モノのシェアに興味を持っている。アプリを通じてシェアサイクルの利用を促し、本業との相乗効果を狙う。

 9月8日には、自転車メーカーのカイホウジャパン子会社のオーシャンブルースマート(東京都板橋区)が、シェアサイクル事業に参入すると発表した。2017年度中にサービスを開始する計画だ(2018年1月から東京都板橋区でPiPPAをスタート)。3年で10万台の配車を想定している。

低コストで攻める新興勢

 シェアサイクルの課題は、採算性の確保だ。先行するドコモは、創業から赤字が続いている。堀清敬社長は、「コスト削減と収益基盤づくりを急いでいる」と打ち明ける。

 コストアップ要因となっているのが、自転車にかかる費用とその管理費用である。同社が採用しているのは、パナソニックとブリヂストンサイクル製の電動アシスト自転車である。一般的に、電動アシスト自転車の価格は、通常の自転車より数倍高い。バッテリーの充電や交換のための管理も必要で、人件費がかさむ。事業拡大には自転車を増やす必要があるが、自転車の投入に伴って運用コストも大きくなっている。

●中国大手やベンチャー参入で競争が本格化

中国シェアサイクル大手のモバイクが日本でサービス開始(左上)。ベンチャーのオーシャンブルースマートは、スマホアプリで自転車を操作(左下)。ドコモ・バイクシェアは、非接触充電装置(右)を備えた自転車で管理コストを抑える

 中国勢や後発のオーシャンブルースマートは、電動ではない自転車を使って運用コストを抑える。オーシャンブルースマートの小竹海渡社長は、「メーカーの強みを生かし、低コストな自転車で事業参入する。ドコモが採用する自転車の5分の1に抑えられる」と自信を見せる。

 対するドコモは、低価格路線とは一線を画す。「サービスの価値向上に力を注ぐ」(堀社長)戦略である。非接触充電装置を備えた駐輪場の準備を進めており、バッテリーの充電や交換の手間とコストを減らす。

収益減の多様化を模索

 収益の多様化にも力を入れる。現在、自転車を広告媒体として売り込んでいる。街中を走る自転車は人目につきやすい。企業へ積極的に売り込んでいく。

 走行データの活用も計画している。自転車はGPS(全地球測位システム)を搭載しており、誰が、いつ、どの場所を走ったかというデータが記録されている。データを基に利用者のスマートフォンに広告を表示するサービスや、観光地向けに観光ガイドを作成するサービスなどを提供したい考えだ。

 2017年5月に自転車活用推進法が施行された。自転車の活用を、環境の負荷低減、健康増進、災害時の交通機能、地域活性化の起爆剤と位置付けて推進する。来年夏には、自転車活用推進計画が閣議決定される見込みだ。同計画は全国の都道府県と市町村に自転車活用の計画や目標の策定を求めている。シェアサイクル導入の動きは全国に広がりそうだ。

※情報は記事執筆時点(2017年11月)のものです

日経エコロジー/文/半沢 智

【T】

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