ニューノーマル処方箋(第77回) VPN管理の基本と運用 情報システム担当者が押さえたいポイント

脅威・サイバー攻撃 時事潮流

公開日:2025.10.21

 企業の情報システム担当者にとって、VPN(仮想プライベートネットワーク)の管理は、セキュリティと業務効率の両面で欠かせない業務です。しかし、VPNの仕組みや管理方法、必要な権限がどのようなものかなどを理解するには専門的な知識が必要になります。本記事では、VPN管理の基本から運用方法までをわかりやすく解説し、具体的な行動に移せるようにサポートします。

資料DLバナー_VPN関連.png

VPN管理とは?企業における重要性と役割

 VPNとは、インターネット網や通信事業者の閉域網に、仮想的な専用回線を構築することで通信のセキュリティを高める技術です。企業では、拠点間の通信やリモートワーク環境の整備に活用されており、情報漏えいや不正アクセスのリスクを軽減する役割を担っています。

VPNの基本概念と仕組み

 VPNは、暗号化されたトンネル内でデータ通信することで、第三者からの盗聴や改ざんを防ごうとする仕組みです。この技術により、公共のネットワークを使用していても、通常の通信よりセキュリティを高めることができます。多くの企業で、例えば、拠点間の通信や、外部から社内ネットワークへの安全なアクセス手段として導入されています。

東西調達記事:掲載用図版.png

企業におけるVPNの利用目的

 企業がVPNを導入する主な目的は、拠点間のセキュリティを高めた通信やリモートワークの支援、クラウドサービスへの安全なアクセスなどです。例えば、営業所から本社のファイルサーバーにアクセスする際、VPN間の通信で情報漏えいのリスクを抑えられます。また、VPNを活用することで、外部からの攻撃に対する防御層にもなります。

VPN管理が求められる背景とリスク対策

 VPNの利用が広がる一方で、管理が不十分な場合は通信における危険性が高まります。例えば、管理者権限の乱用や設定ミスによる情報漏えい、機器の脆弱性を突いた攻撃などが挙げられます。このようなトラブルを避けるためには、定期的な設定の見直しやログの監視、権限の適切な管理が不可欠です。

【関連記事】VPNのセキュリティ対策|Biz Clip(ビズクリップ)-読む・知る・活かす

VPN管理の主な業務と必要な権限

 VPN管理には、ネットワーク設定の維持、ユーザー管理、セキュリティ対策など多岐にわたる業務が含まれます。これらを適切に行うためには、管理者に一定の権限と知識が求められます。以下、その概要について簡単にご紹介いたします。

・VPN管理者の役割と責任

 VPN管理者は、ネットワークのセキュリティ確保を担う重要なポジションです。具体的には、接続設定の管理、ユーザーの追加・削除、トラブル対応などが含まれます。また、社内のセキュリティポリシーに基づいて運用することも求められます。専門的な知識が多く、新技術の登場もあるため、定期的に情報収集が必要になるでしょう。

・管理者権限の設定と注意点

 VPN管理者には、システム全体に影響を及ぼす権限が与えられるため、権限の設定には慎重さが必要です。例えば、複数の管理者が存在する場合は、役割分担を明確にし、誤操作や権限の乱用を防ぐ仕組みを整えることが求められます。権限の見直しは定期的に行い、不要なアクセス権は速やかに削除するようにしましょう。

・VPN管理画面の基本機能と操作例

 VPN管理画面では、接続状況の確認やユーザー管理、ログの閲覧などが可能です。操作はツールによって異なりますが、一般的にはダッシュボード形式で視覚的に管理できるよう設計されています。例えば、接続数の推移や異常なアクセスの検知など、運用に役立つ情報が一目で把握できるようになっています。

VPNのセキュリティ強化と管理・運用について

 VPNは、セキュリティ対策として効果的な通信手段です。しかし、適切に管理しなければ、気づかぬうちに脆弱性を放置してリスクを高めてしまうことがあります。セキュリティを強化するためには、技術的な対策と運用ルールが必要です。

・パスワード管理と認証方式の選定

 VPNの認証には、ID・パスワード方式のほか、証明書認証や多要素認証などがあります。特に、パスワードだけに依存する方式はリスクが高いため、他の認証手段との併用が推奨されます。パスワードは定期的に変更し、使い回しを避けることが基本です。認証情報の管理には、専用ツールを活用するなど、管理を工夫することで漏えいリスクを抑えられるでしょう。

・ログ管理とアクセス制御の重要性

 VPNの利用状況を把握するためには、ログの収集と分析が必要です。接続日時や接続元IPアドレス、使用されたプロトコルなどを記録することで、不正アクセスの兆候を早期に発見できるでしょう。加えてアクセス制御を導入することで、特定のユーザーや端末にのみVPN接続を許可することが可能です。これにより、内部からの情報漏えいリスクも低減できます。

・定期的な機器のアップデートと運用ルールの整備

 VPNを導入した後は、ルーターなどネットワーク機器のアップデートが重要です。適宜ファームウエアのアップデートを実施することで、安全な通信レベルを維持できます。脆弱性が発見された場合は、早急なアップデートが必要になるでしょう。また、運用ルールを文書化して社内で共有することも重要です。こうした取り組みは、トラブルの未然防止に役立ちます。

VPN管理に関するよくある質問と対応方法例

 VPNを管理・運用していくと、いくつか疑問や悩みが発生するでしょう。ここでは運用中によくある質問と、その対応方法例を紹介します。

・VPN管理情報や機器情報が表示されない場合の対処法

 管理画面にVPNや機器に関する管理情報が表示されない場合には、設定ミスや権限不足などが考えられます。まずは、管理者権限が正しく付与されているかを確認し、必要に応じて再設定しましょう。ブラウザーのキャッシュが影響しているケースもあるため、履歴削除からキャッシュを削除したり、ブラウザーを一旦閉じて確認したりすることも有効です。

・VPN管理者権限の変更・削除方法

 管理者権限の変更や削除は、慎重に行う必要があります。誤って権限を削除すると、システムにアクセスできなくなる可能性があるため、事前に設定のバックアップを取得しておくと安全です。また、変更手順はツールによって異なりますが、一般的に管理画面から対象ユーザーを選択し、権限を編集することで対応できます。

まとめ

 VPN管理は、企業の通信セキュリティを支える重要な業務です。基本的な仕組みの理解から、権限設定や、運用まで含めた広範な知識と適切な実践が求められます。特に、運用ルールの整備や定期的な監査を通じて、安心できるネットワーク環境を維持することが、情報システム担当者の大きな役割となります。定期的にVPN環境を管理し、適切な運用をめざしましょう。


※掲載している情報は、記事執筆時点のものです

執筆=Biz Clip編集部

【TP】

VPN関連

あわせて読みたい記事

連載バックナンバー

ニューノーマル処方箋