ニューノーマル処方箋(第42回) 中堅企業も対象に。2024年度の「賃上げ税制」とは

業務課題 人手不足対策資金・経費

公開日:2024.03.28

<目次>

・従業員の給与を一定割合UPすると、税金が控除される

・大企業・中小企業に加え、新たに「中堅企業向け」が登場

・従業員教育/子育て支援/女性活躍に取り組むと、控除額を上乗せ!

従業員の給与を一定割合UPすると、税金が控除される

 2023年12月22日、政府は2024年度の税制改正大綱を発表しました。その中には、賃上げに取り組む企業・個人事業主を応援する「賃上げ促進税制」(以降、賃上げ税制)の新ルールも盛り込まれました。

 賃上げ税制は、従業員に支払う給与などの支給額が、前事業年度と比較して一定以上増加した場合、その企業が一定の控除を受けられる税制のことです。青色申告書を提出する全企業、もしくは個人事業主が対象となります。

 従来の賃上げ税制は、中小企業向け/大企業向けの2つの枠が用意されていましたが、新制度は新たに中堅企業向けの枠が追加され、かつ控除率も変更されています。大企業・中堅企業は、全雇用者の給与等支給額の増加額の最大35%、中小企業の場合は最大45%が税額控除されます。

 新たな賃上げ税制は、2024年4月1日から2027年3月31日までの間に開始される事業年度が対象です。個人事業主の場合は、2025年~2027年の各年が対象となります。

2024年4月1日からスタートする、賃上げ促進税制の税額控除率
(経済産業省の賃上げ促進税制のパンフレットより引用)

 

大企業・中小企業に加え、新たに「中堅企業向け」が登場

 賃上げ税制の税額控除率は、継続雇用者の給与等支給額が、前年度と比べてどれだけ増額されたかによって異なります。

 大企業の場合は、給与等支給額が前年度比「+3%」で10%控除、「+4%」で15%控除、「+5%」で20%控除、「+7%」で25%控除となります。このうち「+5%」と「+7%」は、前年度から新たに追加された項目です。

 新設された「中堅企業向け」の枠は、従業員数2000人以下の企業または個人事業主が対象です。ただし、自社の従業員数と、自社の支配関係にある企業の従業員数との合計が1万人を超えた場合、中堅企業向け枠ではなく、大企業向け枠の対象となります。給与等支給額は前年度比「+3%」で10%控除、「+4%」で25%控除です。

 「中小企業向け」は、従業員数1000人以下の個人事業主、または資本金1億円以下の法人、組合が対象です。給与等支給額が前年度比「+1.5%」で15%控除、「+2.5」で30%控除となります。中小企業向けは、賃上げを実施した年度に税額控除しきれなかった場合、その控除額を最大5年まで繰り越すことも可能です。

税額控除率は、大企業/中堅企業/中小企業でそれぞれ異なる
(経済産業省の賃上げ促進税制のパンフレットより引用)

 

中小企業の場合、年度内に控除しきれなかった金額は最大5年まで繰り越される
(経済産業省の賃上げ促進税制のパンフレットより引用)

 

従業員教育/子育て支援/女性活躍に取り組むと、控除額を上乗せ!

 賃上げ税制は、税額控除率をさらに“上乗せ”できる要件も2つ用意されています。

 1つ目の上乗せ条件は「教育訓練費」です。大企業・中堅企業向けの場合、適用事業年度において教育訓練費の額が前年度より10%増加した場合、税額控除率が5%上乗せされます。中小企業向けの場合は、教育訓練費が前年度比5%増で、税額控除率が10%上乗せされます。

 2つ目の上乗せ条件が、「子育てとの両立・女性活躍支援」です。これは、厚生労働省が行っている、子育てサポート企業の認定制度「くるみん」と、女性活躍推進企業の認定制度「えるぼし」を活用したもので、同制度に認定されている企業は、さらに税額控除率が5%上乗せされます。

 2つ目の上乗せ条件で税額控除を受けるためには、大企業向けの場合、特に子育てサポートに取り組んでいる企業に贈られる「プラチナくるみん」、または、特に女性の職業生活の活躍を推進している企業に与えられる「プラチナえるぼし」の取得が必要です。中堅企業の場合は、「プラチナくるみん」もしくは「えるぼし」の3段階目以上、中小企業は「くるみん」もしくは「えるぼし」の2段階目の取得が条件となります。

 冒頭でも触れたように、本制度は2024年4月~2027年3月の間にスタートする年度が対象です。そのため、2024年度は業績が芳しくなく、賃上げが難しい見通しであったとしても、2025年度、もしくは2026年度に業績が回復し、賃上げができそうなタイミングで申請することも可能です。

 懐事情を考えると、そう簡単に賃上げに踏み切れない企業も多いかもしれませんが、この賃上げ税制を利用することで、節税しつつ賃上げが可能になります。従業員のためにも、会社のためにも、賃上げ税制という制度を覚えておくと良いでしょう。

【T】

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