ニューノーマル処方箋(第83回)
今さら聞けない「IPv6」と「IPv4」の違いを簡単に解説。仕組みやメリット・デメリットとは?
パソコンやスマホでのインターネット利用が当たり前の現代。しかし、時間帯によって通信速度が遅くなったり、動画がカクついて見られなくなったりした経験はありませんか?そんなインターネット接続の速度改善が期待できる接続方法がIPv6(IPoE)です。
「IPv6ってなに?」「そもそもIPとは?今までのインターネットの接続方式と何が違うの?」など、IPv6について疑問をお持ちの方が多いでしょう。そんな方に向けて、今回はIPv6の基本的な仕組みやメリット・デメリット、導入に必要な環境についてご紹介します。
■目次
・IPv6とはデータの通信方法を定めたルール
・「使用できるIPアドレスの数」が、IPv6とIPv4では違う
・IPv6の接続方式(PPPoEとIPoEの違い)
・IPv6のメリットとデメリットとは?
・IPv6を利用する方法は?
・まとめ
IPv6とは、「Internet Protocol Version 6」の略で、IPv4に次ぐインターネットプロトコル(Internet Protocol)の規格です。インターネットプロトコル(IP:アイピー)とは、インターネットでコンピューターが情報の送受信をする際に用いるルールを指します。
何気なく見ているWebサイトや動画ですが、画面の裏では膨大な数の情報が飛び交っており、それらを管理するためのルールが定められているのです。そして、インターネットに接続する機器(パソコンやスマホなど)には、通常「IPアドレス」と呼ばれる識別番号が割り当てられます。IPアドレスを一言でいうとネット上の住所のようなものです。
IPv6とIPv4の大きな違いは、「使用できるIPアドレスの数」です。これまでは「IPv4(アイピーブイヨン)」と呼ばれるプロトコルでIPアドレスを管理していました。しかし、インターネットの急速な普及により、IPアドレスの数が不足してしまったため、新しいプロトコル「IPv6(アイピーブイロク)」が誕生しました。
このIPv6は、約340澗(かん)個のアドレスを持っています(澗は10の36乗を意味します)。一方、IPv4のアドレス数は約43億個です。

このようにIPv4とIPv6には、文字通り"桁違い"の差があります。郵便番号が「5桁」から「7桁」に変わったことと同じと考えれば、イメージしやすいのではないでしょうか。このIPv6を使うことでインターネットの混雑を回避して、速度改善が期待できると言われています。
では、IPv6になりIPアドレス(ネット上の住所)が増えただけで、なぜ速度改善が期待できるといわれているのでしょうか?それは、接続の方式の違いにあります。
「PPPoE(PPP over Ethernet)」では「ネットワーク終端装置」がデータの受け取り手を確認し、ユーザーIDとパスワードを照合して「プロバイダー」からインターネットに接続する接続方式です。IPv4では、PPPoEの方式でインターネットに接続しています。例えるなら、高速道路でお金を払うためにいったん停車するイメージです。

一方、「IPoE(IP over Ethernet)」では、「ネットワーク終端装置」がデータの受け取り手を確認せず、直接「プロバイダー」にアクセスしてインターネットに接続できる仕組みになっています。さきほどの高速道路の例でいうと、ETCを使って停車することなくスムーズに高速道路を利用するイメージです。

IPv4で利用されているPPPoE方式は必ず「ネットワーク終端装置」を経由する仕組みになっており、夜間など利用者が多くなった場合は、「ネットワーク終端装置」の通信容量の限界を迎えインターネット速度が低下することがあります。
その点、IPv6は従来のPPPoEに加えて、別の接続方式であるIPoEによる通信が可能なので、利用者の少ないIPv6の接続口を通過することで混雑を避けられ、速度改善が期待できるのです。

前項でも説明したように、「IPv6(IPoE)」を利用すると、従来の「IPv4(PPPoE)」のような混雑を回避でき、より快適にインターネットが楽しめます。また、通信の盗聴や改ざんを防ぐのに役立つ「IPsec(アイピーセック)」という技術が組み込まれているため、セキュリティーの改善につながるなどの利点があります。まとめると以下のようなイメージです。
・IPv6(IPoE)接続すれば、通信速度の改善が期待できる
・セキュリティーが強化される
その一方で、次のようなデメリットもあります。
・対応機器が必要
・IPv4のサイトが閲覧できない場合がある
IPv6の利用には、IPv6に対応したルーターを準備する必要があります。その他、利用するWebサイトがIPv6に対応していなければ閲覧できないといった場合があります。
こうしたIPv4のサイトを閲覧できない、というデメリットを解決するのが「IPv4 over IPv6」という接続方法です。IPv6環境で通信をしながらもIPv4アドレスでの通信も可能にする技術で、これを利用することにより、IPv6に対応していないWebサイトも閲覧でき、回線の渋滞を避けられるため、通信速度の改善も期待できます。
IPv6を利用するためには、回線・プロバイダーそれぞれにIPv6の申し込みと準備が必要です。プロバイダーへの申し込みは、IPv6(IPoE)に対応しているプランを選びましょう。その際の注意点は、プロバイダーがIPv6接続オプションを提供していて、さらに「IPoE対応」であることです。また、IPv6対応であったとしても、接続方式がPPPoEのみのプロバイダーであれば、速度改善の期待はできません。併せて、IPv6対応の通信機器(モデムやルーター)の準備も必要となるのが留意すべきポイントです。
快適なインターネット環境は、もはやビジネス・日常生活ともに欠かすことのできないインフラです。しかし、回線混雑による速度低下でイライラすることも少なくありません。それを解消するため、インターネット環境は日々進化を遂げ、ますます便利になっています。
近年登場したIPv6(IPoE)もその1つです。IPv6(IPoE)はこれまでの接続方式よりもインターネットへの接続がスムーズになり、混雑が緩和されやすい仕組みとなっています。インターネットの通信速度にお悩みの方は、IPv6の導入を検討してみてはいかがでしょうか?
※掲載している情報は、記事執筆時点のものです
執筆=Biz Clip編集部
【MT】
ニューノーマル処方箋