ニューノーマル処方箋(第79回) 改めて知りたい「SaaS・PaaS・IaaS」の特徴やメリットとは

クラウド・共有 データ保護・バックアップ

公開日:2025.11.11

 「SaaS・PaaS・IaaS」という言葉を見聞きして、まるで何かの暗号のように感じた方も多いのではないでしょうか。これらは、「クラウド」のサービス内容を利用形態によって分類したもので、それぞれに特徴や適した用途があります。

 クラウドについてよく知らない...という方も、さまざまなサービスが当たり前のようにクラウドで提供されているため、気づかないうちに使っているかもしれません。そんな身近なクラウドは、人工知能(AI)、モノのインターネット(IoT)、クラウドゲーミングなど、昨今のITトレンドの多くを牽引しています。今回は、生活やビジネスのあり方を変革し続けるSaaS・PaaS・IaaSについて解説します。

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「クラウド」とは?

 「クラウド(別称:クラウドコンピューティング)」とは、コンピューターを動作させるための基盤となるITインフラを、インターネットを介して、いつでもどこでも必要な分だけ利用できる形態のことです。ITインフラには、大きく分けてソフトウエア、ハードウエア、プラットフォームがあります。これらITインフラをインターネット上で利用できるサービスは多数存在しており、それらを総称してクラウドサービスと呼ぶことが一般的です。

 今回解説するクラウドサービスのSaaS・PaaS・IaaSは、ITインフラをどこまでクラウドが提供しているかによって分類した名称になります。

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「〇」...クラウド事業者が提供、「-」...ユーザーが用意
・SaaS...ソフトウエアまで全てのITインフラを提供
・PaaS...ハードウエアからプラットフォームまでを提供
・IaaS...ハードウエアのみを提供

「SaaS」とはなにか

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 SaaS(サース)とは「Software as a Service」の頭文字をとった略称で、パソコンやスマホにソフトウエアをインストールせずに、インターネット経由で利用できるサービスです。

 SaaSは仕事や日常生活で使われているサービスが多く、意識せずとも利用していることがほとんどです。例えば、友人と話す時にオンラインビデオ通話を使ったことはないでしょうか?こういったコミュニケーションツールはSaaSの代表例です。この他にもSaaSの代表的サービスは以下のようなものがあります。

・Web会議ツール
・チャットツール
・Webメール
・文書作成ソフト
・会計ソフト

 使用したことがあるサービスも多いのではないでしょうか。SaaSが広く普及している理由は、導入やアップデートが簡単であることが大きいです。

 SaaSでは、アプリケーションまで全てのITインフラをクラウド事業者が提供・管理してくれるため、ユーザーはアカウントを作成しログインするだけでアクセスできます。サービスを一定期間利用するためにサブスクリプションの購入が必要なサービスもありますが、SaaSを利用するために必要なのは、コンピューターとインターネット環境だけです。

 また、SaaSではデータもクラウド上のストレージやサーバーで管理されています。そのため、複数人で同時に同じデータを閲覧・編集することが可能です。パソコンやスマホなど、デバイスを問わず利用できる点もSaaSのメリットと言えるでしょう。こういった利便性や手軽さから、SaaSは広く普及し利用されているのです。

「PaaS」とはなにか

 PaaS(パース)とは「Platform as a Service」の頭文字をとった略称で、アプリケーションの開発環境や実行するためのプラットフォームを、インターネット経由で利用できるサービスのことです。アプリケーション開発の他にもPaaSサービスではさまざまなことができます。

・システム開発
・データ分析

 PaaSでは、クラウド事業者が、OSやミドルウエアからハードウエアまでの一式を提供してくれます。つまり、PaaSを利用することで、アプリを開発するための基盤を構築・管理することなく、アプリケーション開発に集中できるのです。

 またPaaSでは、Webアプリやモバイルアプリ、スマホと家電を連動させるIoTアプリなど、どのようなタイプのアプリでもPaaS上で構築できます。PaaSサービスはスペックの拡張・縮小に対応できるように設計されているため、規模の大小を問わず、さまざまなアプリ開発環境に対応することが可能です。

「IaaS」とはなにか

 IaaS(アイアース)とは「Infrastructure as a Service」の頭文字をとった略称で、アプリを開発する際に必要なハードウエアを、インターネット経由で利用できるサービスのことです。IaaSでは、先ほどご紹介したPaaSと同じくアプリケーション開発やシステム開発が可能です。

・アプリケーション開発
・システム開発

 PaaSでも柔軟なアプリケーション開発が可能ですが、IaaSはより高い自由度やカスタマイズ性が求められる開発環境に適しています。また、IaaSでは利用量に応じて機能の拡張や縮小を自由に行えることもメリットの1つです。

 IaaSサービスの多くは、従量課金制であるため、ニーズに応じた機能を自由にカスタマイズできます。この柔軟性がコスト削減につながり、ECサイトを構築する大企業から趣味でゲーム開発を行う個人ユーザーまで、あらゆる規模の開発環境を快適なものにしてくれます。

他にもいろいろな「○aaS」がある

 ここまではSaaS・PaaS・IaaSを中心に、「as a Service」でどんなことができるのか見てきました。実はこの「as a Service」には、他にもさまざまな種類があります。

・FaaS(ファース):Function as a Service

 開発者がサーバーの管理・運用を担うことなくアプリケーション開発ができるサービス。サーバーの存在を意識することなく開発に集中できるサービスであることから、「サーバーレス」とも呼ばれています。FaaSとよく似ているPaaSは、常時処理が必要な場合に適しているのに対し、FaaSは変則的に処理が必要な場合に適しています。例えば、曜日や時間帯によって利用量が変動するECサイトを運用する場合には、FaaSが適していると言えるでしょう。このように、FaaSは処理が発生した時のみ稼働するため、アプリ開発のコストを削減できます。

・DaaS(ダース):Desktop as a Service

 仮想のデスクトップ環境を提供してくれるサービス。DaaSを利用することで得られる最大のメリットは、セキュリティーリスクが大幅に低減される点です。データはデバイスではなくクラウド上に保存されているため、仮にノートパソコンなどのデバイスが盗難されても、第三者が機密データにアクセスするリスクを最小限に抑えることができるのです。

 上記で紹介したサービスは、数ある「◯aaS」のうちのほんの一部。なんと◯の中に入る文字はA〜Zまであるとも言われています。この多種多様なクラウドサービスを総称した言葉が「"X" as a Service=XaaS(ザース)」です。XaaSは導入のハードルも低いことから、ビジネスから日常生活まで今後ますます活用されていくことが期待されています。

クラウドサービスの利用には快適なネットワーク環境を!

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 Webメールや開発環境など、インターネットにつなぐだけでさまざまなサービスを利用できるクラウド。どこからでも簡単にアクセスできて便利ではありますが、いずれのサービスもインターネットを通じてデータのやり取りが行われるため、同時に複数のサービスを利用すると、ネットワーク上に流れるデータ量が増加することも。膨大なデータが流れることで、ネットワークに負荷が生じてしまいます。

 そのため、データの送受信が滞り、速度遅延が発生する可能性も考えられるのです。近年はクラウドと親和性の高い生成AIの普及もあり、クラウド活用の幅も拡大傾向にあるため、よりスムーズに通信できる大容量回線が注目され始めています。

最後に...

 クラウドサービスは、私たちの生活やビジネスの在り方を大きく変える可能性を秘めています。SaaS・PaaS・IaaSをはじめとする多様なサービスは、目的や規模に応じて柔軟に選択できるため、導入のハードルも低く、今後ますます活用の幅が広がっていくでしょう。

 とはいえ、クラウドの恩恵を最大限に活かすためには、安定したネットワーク環境の整備も欠かせません。快適な通信環境を整えることで、クラウドサービスの利便性をさらに高め、業務効率や生産性の向上にもつながります。

 今後のIT活用を考えるうえで、クラウドサービスの理解は欠かせない要素です。ぜひ今回の記事を参考に、自社や自身の環境に合ったクラウド活用を検討してみてください 。

※掲載している情報は、記事執筆時点のものです

執筆=Biz Clip編集部

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