ニューノーマル処方箋(第64回)
ランサムウエアがビジネス化。「RaaS」の脅威
<目次>
テレワークは大企業で定着している
テレワークで残業が多い人は、仕事と私生活の境界がなくなっている!?
仕事と私生活の境界を切り分ける6つのマネジメント
その気になればずっとテレワークで働き続けられる
2020年の新型コロナウイルス感染症の流行を機に導入したテレワークを、2025年の現在も継続している企業は多いでしょう。
パーソル総合研究所が2024年7月に約3万人のビジネスパーソンに対して行ったテレワークに関する調査によると、同時期のテレワーク実施率は22.6%でした。感染が流行していた2022年2月調査の28.5%と比べると実施率は大きく下がりましたが、2023年7月調査の22.2%からは微増しています。同社はこの結果について、「テレワークが定着する傾向を見せている」としています。
従業員1万人以上の大手企業に限ると、テレワーク実施率は38.2%まで高まります。2023年7月の調査では35.4%で、1年で2.8ポイント増加しています。
現在テレワーク実施中で、かつテレワーク継続を希望する人の割合は80.9%で、ほとんどの人がテレワークの継続を望んでいます。従業員1万人以上の大手企業では、希望率は85.5%と高い傾向が見られました。
このようにテレワークは多くのビジネスパーソンに支持されていますが、別の調査によれば、仕事と私生活の境界があいまいになり、労働時間が長くなりやすいという課題も指摘されています。
パーソル総合研究所が2025年1月に発表したリポート「残業が多い職場でのテレワークに欠かせない仕事と私生活を切り分ける『境界マネジメント』」によると、残業時間が月30時間未満のテレワーカーのうち、「仕事と私生活の境界をうまくコントロールできている」と感じる人の割合は56.2%でした。
一方、月に30時間以上残業しているテレワーカーのうち、「仕事と私生活の境界をうまくコントロールできている」と感じる人の割合は、月30時間未満の人より20ポイントも低い36.2%でした。
同調査は、長時間の残業が仕事と私生活の境界をあいまいにすると指摘し、テレワーク実施時には、残業時間の適切な管理が必要だと結論づけています。
とはいえ、業務の状況によっては残業が発生する場面は必然的に生じます。テレワークで残業時間が長くなった場合、仕事と私生活の境界をいかにコントロールすべきでしょうか?
調査では、仕事と私生活を意識的に切り分ける「境界マネジメント」の実践を推奨しています。境界マネジメントの具体的な例として、以下の6点を指摘しています。
(1)計画:勤務終了時間を設定する
(2)感情制御:勤務後に気分転換の散歩に出る
(3)切断:意識的にデバイスをオフにする
(4)縮小:ダラダラと仕事を続けない
(5)調整:休憩時にはステータスを「離籍中」「オフライン」にして周囲に伝える
(6)優先:業務時間外は緊急案件以外対応しない
たとえ残業が多くても、こうした境界マネジメントを意識的に実践しているテレワーカーは、仕事と私生活をうまく切り分けられていると実感できている人の割合が比較的高いといいます(44.0%)。反対に境界マネジメントを行っていない場合は、仕事と私生活を切り分けられていると実感できている人は大幅に低下します(マイナス16.7ポイント)。
調査では、残業が多くなりがちな職場でテレワークを導入する際には、従業員が境界マネジメントを実践できるように促すことが必要だと提言しています。
境界マネジメントの実現には、従業員個人の努力だけでなく、組織の支援も不可欠だと指摘されています。
例えば、勤怠管理システムを活用して従業員の労働時間を正確に把握し、長時間労働を防ぐ仕組みを設けることは、先に挙げた「(1)計画:勤務終了時間を設定する」の支援につながります。
また、従業員の残業時間の少なさを評価することは、「(4)縮小:ダラダラと仕事を続けない」の実践を後押しします。調査では、効率的でメリハリのある働き方を推奨する上司がいる職場では、仕事の長時間化を避ける風土が育ちやすくなると考察しています。しかしながら、現実には残業時間の少なさを評価する上司は少なく、上司側の意識改革も求められる状況だと警鐘を鳴らしています。
テレワークは上司や同僚の目が届かないため、真面目な従業員は、その気になればずっと働き続けることもできます。しかしあまりに働き過ぎると、やがてはバーンアウト(燃え尽き)する恐れがあります。境界マネジメントを実行し、仕事と私生活を切り分けるためには、人事部門や上司の力が必要です。
テレワークが本格的に普及した新型コロナウイルス感染症の流行から5年が経過しました。今こそ、効果的なテレワークの運用モデルを確立すべき時期に来ていると考えられます。
【TP】
ニューノーマル処方箋