ニューノーマル処方箋(第82回)
インターネット回線の速度に関する基礎知識
インターネットが遅くてストレスを感じていても、回線速度の目安がわからず、改善方法やインターネット回線の乗り換えに迷っている方もいるのではないでしょうか。インターネットを快適に利用するためには、利用用途に応じた回線速度が必要です。また、インターネットの回線速度は通信機器や利用環境などによって左右されるため、遅いかどうかは実際に速度を計測してみる必要があります。
本記事では、インターネット回線の回線速度に関する基礎知識や目安に触れながら、回線速度が遅い場合の対処法を紹介します。
■目次
・インターネットの回線速度
・用途別での、必要な回線速度の目安
・最大回線速度の回線別の目安
・インターネット回線の実測値(実効速度)を測定する方法
・ネットが遅くなる原因と対策は?
・まとめ
回線速度といっても、上り速度・下り速度、Ping値など、さまざまな速度や基準があります。インターネットの回線速度の目安を知る前に、まずは速度の単位や上り速度・下り速度、理論値・実測値、Ping値などの基本知識を理解しましょう。
インターネットの回線速度は、bps(bit per second)と表され、「1秒間に送受信可能なデータ量」を意味します。よく使われる回線速度の単位は、主に以下のとおりです。

例えば「1Mbps」は、「1秒間に約1Mbit(メガビット)分のデータを送受信できる速度」を意味します。bpsの数値が大きいほど回線の速度が速くなり、数値が小さい順に「K(キロ)」「M(メガ)」「G(ギガ)」と表記されます。
インターネット上にデータをアップロード(送信)するときに用いる速度を「上り速度」、インターネット上にあるデータをデバイスにダウンロード(受信)するときに用いる速度を「下り速度」といいます。
ほとんどの方は、検索やSNS、動画視聴をメインでインターネットを利用しているので、インターネット回線の回線速度を調べるときは、基本的に「下り速度」を気にすると良いでしょう。

光回線の速度を調べるときは、「理論値」と「実測値(実効速度)」の違いに気をつけましょう。各通信事業者の公式サイトやカタログには、技術規格上の最大回線速度(理論値)が記載されていることがほとんどです。しかし、実際には利用環境や回線の混雑状況などの影響を受けて回線速度は変動します。
そのため、インターネットの回線速度を調べる際は、実際の回線速度である「実測値(実効速度)」を確認しましょう(実測値を確認する方法は後述します)。
「Ping値」は、データを送信してから返ってくるまでの応答速度(ラウンドトリップタイム)を表す単位です。応答速度が遅いとPing値が高くなり、応答速度が速いとPing値は低くなります。Ping値は以下のような、リアルタイム通信が必要なシーンなどに影響が出ます。
●無料音声通話アプリ(LINEなど)
●ビデオ通話
●オンラインゲーム
例えば、FPS(ファーストパーソン・シューティングゲーム)などのシューティングゲームのように、反応速度が重要視されるゲームでPing値が大きいと、気がついたら攻撃されてしまっていた、ということもあります。オンラインゲームをする場合、Ping値が小さいほど通信のレスポンスが早く、快適にプレイできます。このようにリアルタイム通信を頻繁に行う場合は、Ping値にも留意すると良いでしょう。
利用用途によって、求められる回線速度は異なります。次の表は、主な用途別に必要な回線速度の目安をまとめています。

インターネットは、使用する通信機器、環境などによって回線速度が左右されることを前提に、自分はどれくらいの回線速度が必要なのかの参考にしましょう。
光回線、モバイルWi-Fi、ホームルーターでは、それぞれで最大回線速度(理論値)が異なります。

光回線は光ファイバーを使ったデータ通信なので、高速通信が可能です。最大速度(理論値)は概ね1Gbpsで、各通信事業者によって最大概ね10Gbpsのサービスも提供されています。
モバイルWi-Fiやホームルーターは、スマートフォンと同じく「LTE」や「5G」などの無線通信を利用しています。モバイルWi-Fiは、5G対応している場合は最大3.9Gbpsのサービスが提供されています。5G非対応の場合は、最大1Gbps未満になることがあります。
また、壁などの遮蔽物があったり市街地から離れた電波が届きにくい場所だったりすると、回線速度が落ちたり、インターネットの接続自体ができない場合もあります。ホームルーターは各通信事業者によって異なるものの、最大回線速度(理論値)は概ね2Gbps~4.2Gbpsです。
利用中の光回線の実測値(実効速度)を計測し、遅いのか速いのかを自分である程度判断できるようになれば、光回線が遅い場合の改善につなげられます。インターネット上で検索すると、無料の速度測定ツールを見つけられるので、それらを利用して速度を測定してみてください。
ただし、数値は計測するタイミングや利用する測定サイト・ツールによって変動します。そのため、あくまで目安である点に注意しましょう。
インターネットが遅くなる原因はさまざまですが、次の3つが原因になっている場合があります。
①パソコンやスマートフォンなどのデバイス
②Wi-Fiルーター(無線LANルーターやルーターと呼ばれることもあります)の設置場所
③インターネットの接続方法
ここでは、それぞれの原因と対策方法について解説します。
①デバイスに問題がある場合
インターネット回線に問題があるのではなく、接続している通信機器のブラウザーなどの読み込みが遅くなって回線速度が遅いと感じることがあります。パソコンやスマートフォンなどのデバイスに問題がある場合は、以下の方法を試してみましょう。
●ブラウザーのキャッシュクリア
●使用していないアプリの終了
●デバイスの再起動
ブラウザーはページを素早く表示させるために、一度見たページの情報(キャッシュ)を保存しています。キャッシュが多すぎると表示が遅くなってしまうため、これらのファイルを削除することで、表示速度が改善することがあります。また、同時に複数のアプリを起動させていると多くのメモリーを消費して、デバイスのパフォーマンスを低下させている可能性もあります。ブラウザーを開き過ぎていても同様の問題が起こることがあるので、動作が重いときにはアプリやブラウザーを閉じるようにしてください。
上記の方法を試しても改善しない場合は、デバイスを再起動させ、システムやアプリ、メモリーの状態などをリセットするのも有効的な手段です。
②ルーターの設置場所を見直す
Wi-Fiルーターの電波は、他の家電と同じ周波数帯を使用することが多いため、電波干渉を受けてインターネットにつながりにくくなることがあります。コードレス電話機や電子レンジなどの近くには置かないようにしましょう。

また、Wi-Fiルーターとスマートフォンやパソコンなどのデバイスの距離が離れていたり、壁・家具・天井などの遮蔽物があったりすると、電波が届きづらくなり回線速度が遅くなる可能性があります。Wi-Fiルーターの設置場所を見直すことで電波の状態が改善することがあります。

Wi-Fiルーター設置のポイント
●机や棚の上など、少し高いところに設置する
●ガラス扉付きのテレビボードなど、扉があると電波が遮られる可能性あり
●理想的な置き場所はできるだけ家の中央で、周りに壁のあまりないところが最適
③接続方法をIPv6(IPoE)に変える
「IPv6(IPoE)」とは、最新の接続方式で、インターネットに接続する際、「IPv4(PPPoE)」よりも混雑しにくい仕組みになっています。光回線を使っている方は、インターネットの接続方式を従来の「IPv4(PPPoE)」から「IPv6(IPoE)」に切り替えることで速度が改善される場合もあります。「IPv6(IPoE)」の利用には通信事業者やプロバイダーでの申し込みが必要ですが、申し込みさえすれば無料で利用できることもあるので、一度試してみてはいかがでしょうか。
ただし、「IPv6(IPoE)」接続を提供しているかはプロバイダーによって異なります。ご利用のプロバイダーが「IPv6(IPoE)」接続に対応しているか、「IPv6(IPoE)」接続に別途、申し込みが必要かをプロバイダーに確認しましょう。
この記事では、利用中のインターネットの回線速度が速いのか遅いのか判断できるように、インターネットの回線速度に関する基礎知識と、利用用途別の回線速度の目安をお伝えしました。
また、インターネットの回線別の最大回線速度(理論値)についても解説したので、自分がインターネットで何をしたいのか、そのためにはどのインターネット回線が適しているのかを選ぶ参考にしましょう。インターネットが遅いと感じる方は、本記事で紹介した対策を実践してみてください。
※掲載している情報は、記事執筆時点のものです
執筆=Biz Clip編集部
【MT】
ニューノーマル処方箋