ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
八ヶ岳山麓に移住をして1年目。日々、八ヶ岳や南アルプスの山々を見上げ、季節の変化を身近に感じながら「田舎暮らし」をしている。移住先を探していろいろなところを巡った末に、この土地を選ぶ決め手の1つになったのが、周辺一帯の里山らしい風景。山と山の間に広がる田畑が、のどかな雰囲気をつくっている。今回はそんな里山風景の1つ、麦畑について書こうと思う。
朝晩の気温が氷点下になる初冬。寒い中でも元気に育つ麦の苗(12月中旬)
私たちの住む場所は八ヶ岳の南山麓にあって、一帯は南に向かって緩やかに下っている。日当たりがよく、山からの湧き水も豊かなことから農業が盛んだ。里には水田のほか、牧草地、大豆畑、レタス畑などが広がっている。そんな山里風景の中にポツポツと見られるのが麦畑。わが家のすぐ近くにも麦畑があって、季節ごとに目を楽しませてくれている。
12月、このあたりでは朝晩の気温が氷点下になる。広葉樹はすっかり葉を落とし、草も枯れて、色彩の乏しい冬景色だ。そんな中、麦畑はきれいな緑のじゅうたんとなっている。一面が真っ白になるほど霜が降りたり、強風に雪が舞ったりする日の寒さにも負けず、青々とした若葉を伸ばす。
そこで育てられているのは小麦で、米などの作物とは栽培のサイクルが違うようだ。秋に種がまかれ、冬から春にかけてゆっくりと生育する。冷え込みが増す2月にはさすがに葉の先が茶色く変色するけれど、それでも中心部は青々と元気で、3月になると春の日差しを浴びてぐんぐん成長し始める。
4月、この麦畑に姿を現すのがキジ。野原の草はまだ芽を出し始めたばかりのこの時期、少し草丈が伸びた麦は隠れ場所にもなって居心地がいいのだろうか。オスが赤い顔をチラチラとのぞかせながら、葉の間をのんびりと歩く姿が見られる。
5~6月、初夏の風に麦の若葉がそよぐ風景を眺めているうちに、気づくといつの間にか穂ができていて、麦らしい姿になる。そして梅雨時、他の植物たちが青さを増す中、麦畑は黄金色になり、収穫の時を待つ。梅雨の晴れ間、一気に収穫が行われる。その後は、再び種がまかれる秋まで何も栽培されず、畑は休眠期間に入る。
梅雨の晴れ間に行われる麦の刈り取り作業
12月の現在、厳しい寒さに耐え、少しずつ成長している麦。でも、冬の試練は寒さだけではない。
ある日、トラクターがやってきて、麦畑の中をグルグルと走っているのを見た。肥料をやっているのかなと思ったけれど、10cmほどに伸びた苗にも構わずに走り回り、ちょっと乱暴だ。トラクターの後ろには車のタイヤが10本ほど横並びに付けられていて、その上には水タンクの「重し」まで載せている。せっかく伸びた苗はタイヤのローラーの下敷きになって倒れ、フカフカだった土もぺっちゃんこ。畑を荒らしているようにしか見えない。
トラクターが近づいてきたタイミングで、運転しているおじさんに恐る恐る「何の作業ですか?」と聞くと、「麦踏みだよ」と教えてくれた。麦踏み…? そういえば、何か聞いたことあるな…と記憶をたどる私の顔を見て悟ったのか、おじさんは「麦を倒して鍛えているのよ。それで麦が強く育つ」と続ける。
おじさんの話では、麦を踏み倒すと葉が伸び過ぎるのを防ぎ、太く、強くなるのだとか。また、冷え込みで霜柱ができると土が浮き上がってしまい、根がうまく水分や養分を吸えなくなる。浮いた土をローラーで落ち着かせ、根を活着させる意味もあるという。
「昔は数人が1列に並んで足で踏んでいたけれど、今は機械であっという間だね」とおじさんは笑う。
厳しい冬の間に何度かこの作業をしておくと春にはより強くなり、収穫量がグンと増える。寒さにも強くてスクスクと伸びるように見えた麦だけれど、やっぱり実を成らせるまでには、苦労しないといけないんだなあ、と倒れた麦を見ながら思った。
麦踏み直後の若葉。地面に倒れて痛々しいけれど、これでより強く育つ
山野を彩る季節の植物たち ~フクジュソウ~
漢字では福寿草と書き、早春、ほかの植物に先がけて咲くことから縁起がよいとされる。盆栽が趣味だった父は、毎年、お正月飾りとして松竹梅の寄せ植えをつくり、その端にフクジュソウを添えていた。花が咲くのは早いけれど、夏には葉や茎などの地上部が枯れて、姿が見えなくなってしまう。姿を見せるのは1年のうちの数カ月で、そのはかなさから「スプリング・エフェメラル(春の妖精)」の代表種に挙げられる。八ヶ岳山麓でこの花が見られるのは3~4月で、まだまだ先のことだ。
執筆=小林 千穂
山岳ライター・編集者。山好きの父の影響で、子どもの頃に山登りをはじめ、里山歩きから海外遠征まで幅広く登山を楽しむ。山小屋従業員、山岳写真家のアシスタントを経て、フリーのライター・編集者として活動。『山と溪谷』など登山専門誌に多数寄稿するほか、『女子の山登り入門』(学研パブリッシング)、『DVD登山ガイド穂高』(山と溪谷社)などの著書がある。現在は山梨で子育てに奮闘中。
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ココロ踊る!山麓生活のススメ