出張で楽しみたいおひとり様グルメ(第22回) 名古屋の堀川沿い、四間道で見つけた「蔵」の味

雑学

公開日:2018.02.20

 きしめん、みそカツ、ひつまぶし……。愛知県、名古屋への出張といったら通称「名古屋メシ」を思い浮かべるビジネスパーソンが多いでしょう。昔からの老舗はもちろんですが、名古屋には今また、新たな出店が続々と増えていると聞き、名駅(メイエキ:名古屋駅周辺の愛称)から繁華街・栄までの約2〜3kmのエリアをぶらりと散策することにしました。

 めざしたのは都市部にあって空襲の戦火を免れた古い街並み「四間道(しけみち)」かいわい。今回は、そこで見つけた「四季の蔵 右近」で味わったランチをご紹介します。

 名古屋城下から湾を結ぶ運河・堀川を挟んだこのエリアには、柳橋や納屋橋、錦など食のスポットがあふれていますが、まだ訪れたことのない桜橋方面へと向かいます。

発展目覚ましい名駅とビジネス街をつなぐ桜橋(左写真)、桜橋からすぐ。江戸期の町割りが今に残る「四間道」が延びる(右写真)

古くて新しい、那古野かいわい・四間道

 住所は、西区那古野(なごの)。近隣には那古野(なごや)神社があり、古くは名古屋の表記を那古野としていた時代もあることから、現在の名古屋のルーツは、ここ那古野にあるといってよさそう。江戸初期の慶長年間、新たに築城された名古屋城とともに開かれ、以前の城下町・清須から商人らが町ぐるみで一斉に移り住んで開いたという新しい城下町です。

 四間道は、名古屋城下から海に向かって開削された堀川端を走る旧街道。江戸中期の元禄年間にあった大火をきっかけに、土蔵造りの建物と併せて、道幅を約4間(約7メートル)に拡幅整備されたことから、那古野の中でもこの一帯が四間道と呼ばれることになったそう。名古屋市町並み保存地区に指定されたのが昭和61年(1986)のこと。名駅から栄の街並みが経済の浮き沈みで変わりゆく一方、開発の波をかぶらなかった四間道には狭い路地が走り、古くからの神社や町家や商家が今日に残ります。

将軍吉宗の治世、江戸中期の元文年間に積まれたという石垣

屋根の上に小さな社をまつる建物があちこちに残る

レトロでモダン、四間道の草分け店

 訪れた「四季の蔵 右近」の開業は2006年。同年9月にはミッドランドスクエアが、翌年1月には名古屋ルーセントタワーが竣工し、名駅が目に見えて変化してきた頃のことです。今や古い建物をリノベーションした飲食店が全国的にも増えていますが、これらの飲食店では草分けといえる存在に。

 「最近は、四間道も人気になって、店を開きたいという若い人も多い」と同店主の宮治和子さん。「とはいえ、古くからの住人が多いところだけに、空き家であっても借り受けるのはなかなか……」と話します。

 先代が料理旅館を営んでいた地縁から借り受けている土蔵は、名古屋の名家・伊藤家にゆかりのある建物。もともと地元とのつながりが深かったことからこそ得られた物件だといえるでしょう。

名駅の旧名鉄メルサレストラン街にとんかつ店「右近」を開いていましたが、レストラン街の閉鎖をきっかけに、再び四間道に移りました。

名古屋城に続く堀川端の蔵を改装した「四季の蔵 右近」

しつらえは高級店、価格はお値打ち

「四季の蔵 右近」店内(左写真)、明るい坪庭から柔らかい日差しが差し込む(右写真)

 右近の外観は、古い土蔵がほぼそのまま。建物内は、太い梁(はり)や柱を生かして改装しています。テーブルは少なく、小さい窓から入る光の陰影を楽しめる席もあれば、坪庭に面したガラス窓が明るい席も。高級店を思わせるしつらえですが、提供するメニューは旧メルサ時代と変わらずリーズナブルで、名古屋のエッセンスにあふれます。もちろん価格もお値打ちでした。

 まずいただいたのが、定番のランチメニュー「松花堂弁当」(1500円)。大ぶりの弁当箱にメーン料理とご飯、小鉢と香の物が入ります。おつゆはもちろん八丁味噌の「赤だし」。ボリュームは満点で、男女を問わず堪能できます。

定番のランチメニュー、松花堂弁当(1500円)

常連にファンも多いというカツサンドセット(1350円)

 満腹しながらも食指が動く一品は、旧メルサ時代から目当ての常連客が多かったという「カツサンドセット」(1350円)です。厚切り肉のカツに塗られたソースは「みそ味」かと思いきや、自家製の洋風ソース。名古屋メシの感覚からはハズれていますが、地元の常連が通う店としての良識がうかがえます。

普段使いのみならず、ここぞといった場面でも

会食向きの四季折々膳(取材時のお膳は「寒椿」1900円)

季節物の空豆や炊き合わせを味わう(※時期によって異なります)

 この立地にこのしつらえ、この価格で老舗の良さを満喫できるとなれば、ランチから一歩進めて会食にも使いたいところ。会議を兼ねた昼食会などに喜ばれそうな一品として、最後に「四季折々膳」(1900円)も紹介しましょう。

かつお節が踊る、お店こだわりのきしめん

 四季折々膳は、季節によって中身が変わる小会席メニュー。訪問時には、南蛮漬けと炊き合わせ、新もの空豆を盛り合わせた脚付きの器に天ぷら盛り合わせ、炊き込みご飯、赤だし、香の物、きしめんがセットの「寒椿(かんつばき)」を提供していただきました。

 箸を持つ手がうれしくなる組み合わせですが、名古屋に通い詰めたベテラン出張族にオススメしたいのが同店の「きしめん」。名古屋駅のホームですする一椀とは、また異なる喉越し。麺からして違うようです。たっぷりと添えられた削り節を好みで散らし、熱々をするりと。きしめんは何をさておき一番に味わっていただきたいところです。

※文中にある金額はすべて税込価格です

 

四季の蔵 右近
http://www.jfood-ukon.com/
名古屋市西区那古野1-36-19
地下鉄桜通線「「国際センター」2番出口より徒歩5分
ランチタイム 11:30~13:30(L.O. 13:00)
ディナータイム 17:30~22:00(L.O. 21:30)
日曜定休(月曜は夜のみ営業、日曜・月曜が連休の場合は月曜夜も休業)
052-586-0392

【T】

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