中小サービス業の“時短”科学的実現法(第18回) 標準化を行い、ムラとムダを削る

業務課題 スキルアップ経営全般

公開日:2024.05.09

 前々回から解説している第3ステップ「作業の無駄をなくす」では、「アプローチ8 サービス・キネティクス原則」について、実例を交えて説明しました。今回は、「作業の無駄をなくす」2番目のアプローチとして、「ムラとムダを削る標準化」を紹介します。

アプローチ9 ムラとムダを削る標準化 ~マニュアルがサービス品質を上げる~

 製造業が生産する工業製品は店舗に陳列され、お客さまはそれを実際に触ったり、動かしたりして品質を確認し、その後に買うかどうかを決めます。しかし、サービスという製品は、サービスの品質に不満があっても、その時点でサービスの提供を受けており、お客さまは代金を支払わなければなりません。つまり、サービスは提供以前にその品質を確認できないという特徴を持っているのです。

 もし、事前に期待していた品質に達していなければ、お客さまにできるのはクレームを言うか、二度と利用しないことくらいです。反対に、品質が期待に沿うものであれば再びサービスの提供を受け、店のリピート率も上がっていきます。しかし、その品質が変動するとお客さまは不満を感じ、リピートをやめてしまいます。さらに、その見解を周囲に伝えると、新規のお客さまも減少します。

 サービス業の現場は、パートやアルバイトといった多くの短期雇用の従業員に支えられているため、人によってスキルにばらつきがあり、提供するサービスの品質にムラが出やすいのです。サービス品質のムラを抑えなければ、安定的な集客は実現できません。そこで必要になるのが、サービス提供における業務プロセスの標準化とマニュアル化、そしてそれに基づくスキル研修です。

 サービス業の基本は、お客さまの要求に応えることです。その要求は多様なうえ、同じお客さまでも状況によって変化します。現場スタッフには臨機応変な対応が期待されるので、標準化やマニュアル化はなじまないと考えられがちです。しかし、標準化と画一化は別物です。

標準プロセスをより無駄がない方法に変える

 同じサービスを提供するために必要な業務は同じです。標準化しなければ、人の数だけ提供方法が存在してしまいます。この中には無駄なく短時間で提供できる方法もあるはずです。一人ひとりの提供方法が優れているのか無駄があるのかは、決められた標準プロセスを基準に評価できるようになります。もし、標準プロセスより無駄が少ない方法が出てきたら、標準プロセスをそちらに変えれば現場業務の改善が進んでいきます。

 標準化という仕組みがなければ、現場で働くスタッフの経験をいつまでたっても会社の知識にできません。作業標準を具体的に記載していくとマニュアルとなり、これによって人材教育を計画的に進められるようになるだけでなく、業務プロセスが安定して、スタッフが変わっても同品質のサービスを提供できます。こうした業務プロセスの見直しが生産性を引き上げ、時短をもたらすのです。

 神奈川県・箱根にある旅館グループの一の湯では、従業員一人ひとりが最低三役をこなせるよう仕組みをつくり、人材を育成しています。まず、一つひとつの業務範囲とアウトプットを明確化し、それぞれの作業の標準化とマニュアル化を進めました。さらに、作業内容に応じて業務単位(業務量を指数化したもの)を定め、客数によって総労働時間を計算できる「モデルワーク・スケジューリングシステム」を開発し、従業員のシフトを最適配置しています。

 ただし、どんなに作業を標準化・マニュアル化しても、あるいは自動化やIT化を進めても、人間による作業が非効率のままでは生産性を高められません。また、熟練したベテランだけに頼っていては、サービス品質にムラが生じます。多くのサービス業の現場には、経験の浅いパートやアルバイト従業員も存在します。一定の技能を確保し、さらにマルチタスク化を進めるためにスキル研修は必要になります。

 一の湯では、従来のやり方にとらわれない視点を取り入れようと他業種から多くの従業員を採用しています。そのために採用時の就業教育はもちろん、上司との一対一の対話を通じたOJT、海外視察やセミナーも推進しています。このように、標準化・マニュアル化とスキル研修は一体で進めなければなりません。

執筆=内藤 耕

工学博士。一般社団法人サービス産業革新推進機構代表理事。世界銀行グループ、独立行政法人産業技術総合研究所サービス工学研究センターを経て現職。

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