中小サービス業の“時短”科学的実現法(第7回) 残業時間削減は後回し、繁閑の波動に注目

業務課題 スキルアップ経営全般

公開日:2023.06.06

 今回は、第1ステップのアプローチ3として、繁閑の波動の低い波に注目することの大切さについて説明します。

 時短を進めようと思ったとき、問題としていつもやり玉に挙がるのが「残業」です。会社は一般論として、「長時間労働はよくない」と言って残業時間を悪者に仕立て上げ、次にその「残業時間を減らせ」と大号令をかけてきます。

 長時間労働と残業時間の因果関係はとても分かりやすいので、つい誰しもがこの大号令に納得してしまいます。しかし、これで本当に時短を進められるのでしょうか。

 現場で残業している従業員たちは、その時間に何をしているのかというと、当たり前ですが仕事をしているのです。残業代をもらいながら遊んでいるわけではありません。特にサービス業の場合、その仕事にはお客さまがひも付いており、会社が残業を減らそうとすると、現場のスタッフは「お客さまをほったらかして本当に帰っていいんですか」と言ってきます。

 そのお客さまが代金を払ってくれるので、残業を減らせば売り上げを減らすことと同じ意味になってしまうのです。だから、残業を減らして時短を進めていく議論はあっという間に行き詰まり、結局のところ残業時間は減らず、会社の上から下までが困り果て、袋小路に入ってしまう。

 私が常日頃から話しているのは、長時間労働を是正する時短は正しいのですが、それを実現する戦術として「残業を減らす」というところに問題があるという点です。われわれが関心を向けなければならないのは、残業という「忙しく仕事をしている時間帯」ではなく、「お客さまがいない閑散時間もしくは閑散日」なのです。

図1 作業量には波があり、現場の感覚と実態は異なる

 

 このことを冷静に考えなければ、時短推進もその前提である生産性向上も実現できないのです。これまで多くの現場をフィールドワークしてきた結果、ひまな時間帯のコントロールに目を向けて、最終的に長時間労働を是正していくのが正しいアプローチであるという考えに至りました。

一日の残業時間ではなく月単位で管理する

 アプローチ1と2で紹介したプロット分析や業務・人員推移グラフといった手法も使って、現場の手待ち時間などを上手に見つけ出し、さらにそれをどのように管理していくべきなのかをもっと考えることが、時短を実現する近道なのです。

 手待ち時間といっても、一日の中でお客さまが少ない時間帯もあれば、月単位、年単位で見たときの閑散日、閑散期間もあります。これらの閑散期に、売り上げに影響を与えないよう従業員の労働時間や休日をコントロールすれば、スタッフの時短を効率的に実現できます。

 スタッフ一人ひとりの一日の残業時間を減らすことばかりを考えると、売り上げや顧客満足度に悪い影響を与えます。しかし、「労働生産性=付加価値÷労働投入量」という計算式からこの問題を考えていくと、残業を「するか」「しないか」という二択ではなく、投入した労働時間でそれなりの売り上げを得られるのならそうすればいいし、得られないならば残業しないほうがいいわけです。冷静になれば、それは当たり前のことです。

 つまり時短を進めようとするのなら、会社は一日の残業時間に注目するのではなく、月単位で残業時間を管理して、時短を進めなければならないのです。「お客さまがいるのなら残業しなさい」「明日は大雨なのでシフトを減らそう」といったやり方を日々積み上げていくのです。

 このような繁閑の波動は、製造業や建設業、IT産業などの現場でも受注や納期、工程の進捗(しんちょく)などによって見られます。こうした業種においても、会社がコントロールしなければならないのは残業が多くなる労働時間の高い波ではなく、閑散時間で手待ち時間が多くある稼働の低い波のほうなのです。これは一般的には意識されていなかった視点なので、ぜひ覚えておくといいでしょう。

執筆=内藤 耕

工学博士。一般社団法人サービス産業革新推進機構代表理事。世界銀行グループ、独立行政法人産業技術総合研究所サービス工学研究センターを経て現職。

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