ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
近年のクラウドの普及に伴い、自社のオンプレミス環境をクラウドに移行する動きが見られます。自社の業務システムをオンプレミス環境からクラウドに移行することを「クラウドリフト」、これまでのシステムとは異なる新しいシステムを一からクラウドで構築することを「クラウドシフト」と呼びます。近年はまずクラウドリフトでオンプレミス環境をクラウドへ移行し、その後クラウド上で最適化する「リフト&シフト」という言葉もよく聞かれるようになりました。ここではリフト&シフトの意味や、クラウド移行時に起こる課題について説明します。
リフト&シフトとは、既存のオンプレミス環境をクラウドへ移行する際の考え方です。オンプレミス環境からクラウドに移行する場合、大きく分けて「従来のオンプレミスでのシステムを移行する」「クラウド上で新たに構築し、運用する」という2つの考え方があり、前者はクラウドリフト、後者はクラウドシフトと呼ばれています。クラウドリフトは既存環境を利用できますが、サーバーレスアーキテクチャなどクラウド独自の仕組みの利用が難しく、クラウドの恩恵を100%得られるとは限りません。一方、クラウドシフトはクラウドネーティブな環境を構築できますが、一から構築することになるためクラウドリフトと比較して開発期間や費用が増える傾向にあります。
そのような中、注目されているのがリフト&シフトです。リフト&シフトは、まずオンプレミス環境を一旦クラウドに移行し、その後クラウドに向けて最適化していくという考え方のため、クラウドリフト・クラウドシフト双方の恩恵を受けられる可能性があります。
クラウドには複数の種類があります。クラウド上に用意されたサービスを利用するSaaS(Software as a Service)、クラウド上でアプリケーション開発に必要なプラットフォームが利用できるPaaS(Platform as a Service)、クラウド上でサーバーやストレージ、ネットワークなどのインフラが利用できるIaaS(Infrastructure as a Service)です。
リフト&シフトの場合、まずはオンプレミス環境と同等のサーバー環境が実現しやすいIaaSで、可能な限りオンプレミス環境を変更することなくクラウドに移行するのが一般的です。その後、PaaSやSaaSなどに移行できるシステムを洗い出し、実現していく流れとなります。
リフト&シフトでオンプレミス環境からクラウドに移行するうえで、注意しなくてはならない点がいくつかあります。
情報セキュリティポリシーで移行できない
まず考えられるのが、自社の情報セキュリティポリシーによっては、オンプレミス環境をクラウドに移行できない点です。例えば顧客情報をはじめとした個人情報は自社内でのみ保管するというポリシーがある場合、ポリシーを変更しない限りクラウドへのリフト&シフトは断念せざるを得ません。
その場合は、オンプレミス環境とクラウド環境を併用するハイブリッド環境を利用する手があります。社外に保管できないデータはオンプレミス環境に残し、そのほかのデータや機能をクラウド環境で実現することで、自社の情報セキュリティポリシーに準拠しつつ、クラウド環境が実現できます。
クラウドリフトで止めてしまう
クラウドリフトを終えた時点で満足し、クラウドシフトを行わず終了してしまうケースも考えられます。確かにクラウドリフトだけでも、自社内のオンプレミス環境で利用していたサーバースペースが有効活用でき、一定のメリットは得られますが、クラウドへ移行するメリットを最大限に享受できるわけではありません。
例えば、オンプレミス環境のメール送受信システムをそのまま利用していると、管理やメンテナンスは自社で行う必要があります。クラウド事業者がSaaSで提供しているメール送受信システムに移行すれば、管理・メンテナンスの手間が軽減するでしょう。リフト&シフトでオンプレミス環境をクラウドに移行するのであれば、クラウドシフトも行うべきです。
経済産業省が2018年に公開した『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』では、複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムが残存した場合、予想される経済損失は年間で最大12兆円に上る可能性があると指摘しています。このような既存システムから脱却する手段の1つとして、クラウドへのリフト&シフトが挙げられます。自社の既存システムに不安を抱えている場合、まずはリフト&シフトによるクラウド化を検討してはいかがでしょう。
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執筆= NTT西日本
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