ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
前回から第5ステップ「事業戦略を立て直す」を説明しています。第1ステップから第4ステップまでは「戦術」の解説でしたが、第5ステップは、より飛躍していくための事業戦略のつくり方を説明していきます。前回はアプローチ11として「大口取引よりも、小口取引」という手法を解説しました。今回はアプローチ12として別の戦略を紹介します。
飲食店では昼食や夕食時にお客さまが集まり、行列ができるときもあります。しかし、それ以外の時間帯にはあまりお客さまが来ません。旅館は週末にお客さまが集中し、ビジネスホテルは平日にお客さまが集中します。このようにサービス業の現場では、時間によって、また日によって、さらに季節によって客数が変動しますが、会社は忙しいときだけ都合よく必要な人員を確保できません。
ただ、仕方がないと諦める必要はありません。何もしなければ施設や人員の規模は客数のピークに合わせて大きくなり、会社の固定費が上がっていきます。しかし、いろいろな工夫をしてお客さまの動きをコントロールしたり、お客さまの集中度合いに応じて、現場の負荷の差をできるだけ少なくしたりしているサービス業の現場はあります。
業務の平準化を進めるには、繁忙期の需要を崩したり、閑散期の需要を掘り起こしたりするなどの方法があります。また、作業負荷が集中しない柔軟性のある作業プロセスも1つの方法でしょう。
福島県東山温泉にある温泉旅館の向瀧では、春の桜の季節から秋までは地元の観光シーズンで宿泊客が多いものの、冬に入り雪が降り始めると「お客さまは来ない」と言い、諦めムードが漂っていました。これを打破するため、向瀧では考えを変えます。「雪にも魅力がある」として、日没から夕食までの時間帯に、竹筒にろうそくを入れて中庭に並べる「雪見ろうそく」を始めたのです。
これが観光客に大変な評判となり、閑散期でお客さまは来ないと思っていた冬の間でも、宿泊客が6割も増加しました。雪見ろうそくという魅力あるサービスの提案が、これまでになかった新たな需要を生み出したのです。
東京都足立区に本社を置き、クリーニング店をチェーン展開する喜久屋では、季節によって洗濯工場の稼働率が大きく変動するため、負荷を平準化させる新たなサービスを次々と仕掛けてきました。
クリーニング業界では、春は衣替えでフル稼働となり、秋はその80%、夏と冬はさらに約50%まで稼働率が下がります。特にゴールデンウィーク前後と2月の水曜日では、約14倍もの稼働率の差があります。1週間で見ると土日に集中し、雨の日は減るという傾向があります。
これだけ稼働率にばらつきが出ると、店舗や洗濯工場の作業量が大きく変動し、適切な人員配置も難しく、仕方がないと対応を諦めるものです。しかし喜久屋では、何とか平準化できないかと知恵を絞ったところ、クリーニングに出したお客さまは必ずしも返却の早さを求めていないことに気づきました。
来客時に一人ひとり返却日を指定してもらい、その通りに来てくれたお客さまには割引するサービスを始め、引き取りまでの期間を利用して作業負荷をばらしたのです。さらに、「eクローゼット」というサービスも開始しました。eクローゼットは次の衣替えの時期まで衣服を預かるサービスで、季節をまたいで作業負荷を崩していきました。
喜久屋では、返却日に合わせて洗濯工程を組み替え、洗濯工場の作業量の平準化に成功しました。その結果、5つあった工場を2つに減らし経営が改善しただけでなく、パート従業員の季節雇用から通年雇用にもつながったのです。
執筆=内藤 耕
工学博士。一般社団法人サービス産業革新推進機構代表理事。世界銀行グループ、独立行政法人産業技術総合研究所サービス工学研究センターを経て現職。
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中小サービス業の“時短”科学的実現法