ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
本連載は時短を実現するために第1ステップとして「現状を把握する」方法を解説し、第8回からは第2ステップ、「人員配置の無駄をなくす」に進みました。そして、第8回と第9回でそのための効果的なリアルタイム・サービス法をアプローチ4として説明しました。
今回はアプローチ5として、リアルタイム・サービス法を実行するための有力な手法である、「小ロット化」を紹介します。
多くの人は「前もって、まとめてやったほうが効率的」だと思いがちですが、そうではありません。実は小ロットでこまめに、お客さまの要望に合わせてその都度業務をこなすほうが無駄な労働時間の削減につながります。大量生産時代の効率化とは正反対の手法として、小ロット化は極めて重要であり、意識転換をする上でも、何度強調してもし過ぎることはないと思います。
例えば現場のスタッフは、必要な材料をまとめて仕入れ、それらを倉庫に保管して、そこから毎日持ってきて現場で使うという方法が効率的だと当たり前のように思っています。倉庫に大量にストックされていれば欠品の心配がなく、突然お客さまがやってきても慌てる必要はありません。
しかし、どんな業界の問屋でも、ほとんどは毎日ルート配送をしています。基本的には、注文さえきちんとすれば遅くとも翌々日には商品を届けてくれるというのが一般的でしょう。実際のところ、倉庫に保管しておく必要はないのです。
「まとめてたくさん買うと価格が安くなる」とも思われがちですが、問屋は単価契約のところが多く、さらに生鮮品は同じ種類をたくさん集めるほうが大変なので、数量がまとまると高単価になるときすらあるのです。また、安いと思って大量に買った後に、もっと安くなったらどうするのでしょうか。
ここで言う小ロット化とは、仕入れだけでなく業務単位を小さくすることでもあります。例えば100個単位でしていた業務を、90個、80個単位と少しずつ崩し、運搬や移動もそれに合わせて小刻みにするといった具合です。
もし、100個まとめてやり遂げようとする場合、次の工程のスタッフもそれらをすべて引き取って使わなければ、どこかに保管する必要がありますし、そのための搬入と搬出もしなければなりません。保管場所にいろいろなものが置いてあると、その中から必要なものを探す作業が発生し、時には間違える可能性もあります。また、何らかの都合で変更が生じると、変更になったものだけでなく、それを作るために投入した労働時間やエネルギーのすべてが損失になります。
いずれ在庫も使うので、まとめてやったほうが効率的だと思うかもしれませんが、前もってまとめてやると、現場で働いているスタッフに多くの負担がかかってきます。より根本的な問題は、会社から見て、こうした負担作業もしなければならない大事な仕事に見えてしまい、それらを完全になくそうという気にならない点です。
それでは、なぜ人はまとめて作業をやりたがるのでしょうか。例えば料理を作るには、皿を出して盛り付け台に並べる必要があります。また、料理を厨房からお客さまがいるところまで運ぶのが配膳です。この、皿を出したり料理を運んだりする作業は、料理の味を高めるわけではありません。飲食店でこれらの業務を多くしたからといって、それに比例して顧客満足が高まるものでもありません。
製造業では昔から指摘されていますが、現場にはこのような付加価値を伴わない準備や運搬という多くの「段取り」の業務があるのです。そして、現場で働いているスタッフたちは、基本的にはこの段取り業務をやりたくなく、回数を減らしたいのです。
段取り業務を減らすには、まとめてするしかない。逆に小ロットで業務を遂行しようとすると、そのたびに段取り業務が発生し、その分の労働時間が増えていきます。ここだけを取り出して見れば、確かに前もってまとめてやったほうが効率的だと思ってしまうわけです。
しかし、繰り返しになりますが、メリットがあるように見えるのは、あくまでも表面的なところだけなのです。小ロット化に伴って段取り業務は増えますが、まとめてやると保管や運搬、さらに品質劣化、要望の変更に伴うやり直し業務などがたくさん出てきます。
問題は、これらすべてに人件費や材料費、水道光熱費などの経費も同じように投入され、さらにこれらが誰から見てもやらなければならない業務に見え、それを改善するときはあっても、現場から排除しようとはならないことです。すなわち、これだけを見ると確かに効率的なのですが、その後の業務を合わせて会社全体で見たときには必ずしも効率的ではなく、むしろ多くの問題をつくっていたことになるのです。
実際に現場で小ロット化を進める場合には、小ロット化に伴う段取り業務を効率化しなければ、会社としてどんなにメリットがあっても、労働時間が延びて時短も推進できません。
小まめに仕入れを行うには、注文方法を簡素化しなければなりません。お皿の出し入れを容易にしなければ、お客さまの動きに合わせた調理と盛り付けができません。配膳方法も考えなければいけません。ただ単に、「小ロット化にするから、頑張れ」というだけでは生産性は向上せず、スタッフも笑顔で接客をしてくれないと留意しておく必要があります。
執筆=内藤 耕
工学博士。一般社団法人サービス産業革新推進機構代表理事。世界銀行グループ、独立行政法人産業技術総合研究所サービス工学研究センターを経て現職。
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中小サービス業の“時短”科学的実現法