ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
台湾からの訪日客に特化した観光客向け総合メディアが存在しなかった中、ジーリーメディアグループは2013年に台湾・香港向けに絞り込んだ「ラーチーゴー(樂吃購)」というポータルサイトを立ち上げ大成功を収めている。今では月間ユニークユーザー数が70万人に成長し、台湾・香港向けの日本観光情報で最大のサイトとなった。同グループの吉田社長にサイトの成長過程を聞いた(聞き手は、デロイト トーマツ ベンチャーサポートの事業統括本部長、斎藤祐馬氏)。
聞き手のデロイト トーマツ ベンチャーサポート事業統括本部長、斎藤氏
(写真:菊池一郎)
斎藤:そもそも、なぜ台湾をターゲットにラーチーゴーを立ち上げたのですか。
吉田:海外でメディアビジネスを通じて社会の役に立ちたいという思いが最初にあり、その勉強のために大学卒業後に大阪の朝日放送に入社しました。そこで、担当したのは、テレビ広告の営業です。3年間勤めました。
大学在学中から中国語を独学で学んでおり、そこそこしゃべれるようになっていたので、退職して2012年の春ごろに上海に渡りました。中国でメディアビジネスを始めようと思ったのです。なぜ中国かといえば、資金もない僕が勝ち残るには、当時景気の良かった中国しかないと考えたのです。
ところが、起業のためにいろいろと調べると、法律はどうも頻繁に変更されている。経済より政治が優先されるし、偽物が本物よりも売れているなんてことも。ここでは勝負できないと思いました。何しろテレビ局勤務でためた数百万円程度しか資金はないので、リスクが大き過ぎるなと。
すると、この年の夏ごろ、撤退を決断して帰国した直後に尖閣諸島国有化から始まった反日デモが激化。それまでイケイケだった知り合いの日本人経営者の店もほとんど壊されてしまいました。もし、居残っていたら大変なことになっていたはずです。
斎藤:ギリギリでしたね。そこで、次に狙ったのが台湾ですか。
吉田:そうです。朝日放送の在職中から台湾のテレビ局と付き合いがあり、友人が何人かいたので相談しました。すると、日本への旅行客が増えていて、日本の情報を求めているし、メディアビジネスをやるなら友人を紹介してくれると言うのです。
それではまず、調査も兼ねて、自分個人のFacebookを開設し、本に載っていないような情報を発信しようと思ったのです。バーゲンセールスや桜の開花予想、花火の日程などを載せると、フォロアーがどんどん増え、たちまち10万人ぐらいになりました。
斎藤:そのFacebookから情報を吸い上げたのですか?
吉田:地元テレビ局の友人からも情報を得ましたが、Facebookのユーザーから教えてもらった情報が大きいですね。日本を旅行するとき、何が不便か、何が足りないかを聞き、訪日客向けのポータルサイトがないということが分かったので、サイトを作ろうと決断しました。それで、日本に先駆けて13年夏ごろ、ジーリーメディアを台湾で設立したのです。
斎藤:ラーチーゴーの最初の評判はどうでしたか。
吉田:それが当初の予想とは違って、最初に売れたのは僕自身だったのです。日本人で中国語がしゃべれ、テレビのことも分かるし、テレビでアホなことも言えるというので、キャラ的に重宝され(笑)、台湾のテレビに出演したり、ヤフーニュースなどで取り上げられたりするようになりました。
その結果、僕のFacebookのフォロアーが54万人にもなり、台湾では日本人ナンバーワンになりました。台湾は人口の7割がFacebookを利用しているので、そこでの人気は大きい。「ああ、あの吉田がやっているサイトだから」と、徐々にラーチーゴーへの関心が高まりました。
16年11月には高雄最大の百貨店「漢神(はんしん)百貨」に頼まれて、日本物産展の事前告知広告に僕が出演し、テレビや地下鉄で放映されました(笑)。
高雄最大の百貨店で日本物産展の広告にも登場した吉田社長(横断幕の写真)
斎藤:会社の経営は当初からうまくいったのですか。
吉田:テレビCMをどう売るかは前職で経験済みですし、100社以上の広告代理店とのネットワークもあったので、初年度からトントン(プラスマイナスゼロという意味)でいけました。当時は僕1人で、1日中走り回って代理店に営業していました。
ちょうど、訪日客が急増するタイミングだったので、2期目にはサッポロビールやサントリーなど大手も広告を出してくれて、黒字になりました。影響が大きかったのは、北海道日本ハムファイターズが札幌ドームへ集客するために契約してくれたことです。
ファイターズには当時、陽岱鋼(ようだいかん/台湾・台東県台東市出身/現在は読売ジャイアンツに所属)という台湾出身の3番バッターがいたので、彼を含めて台湾でPRし、集客しました。台湾では野球は人気がありますからね。これによって他のクライアントも信頼してくれるようになりました。
こうして2期目の黒字を投資に回すことができ、その頃から何とか運営していけそうだと自信を持てるようになりました。すると、2期目以降は、売り上げが倍々で伸びるようになったんです。
日経トップリーダー/吉村克己
※掲載している情報は、記事執筆時点(2017年2月)のものです
執筆=斎藤 祐馬
※トーマツ ベンチャーサポートは、2017年9月1日より「デロイト トーマツ ベンチャーサポート」に社名変更しました。
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