注目を集める地方発のベンチャー(第22回) 台湾と日本、両国にメリットをもたらす事業を

地域活性化

公開日:2018.01.15

ジーリーメディアグループ 吉田皓一社長(第4回)

 台湾からの訪日客に特化した観光客向け総合メディアが存在しなかった中、ジーリーメディアグループ2013年に台湾・香港向けに絞り込んだ「ラーチーゴー(樂吃購)」というポータルサイトを立ち上げた大成功を収めている。今では月間ユニークユーザー数が70万人に成長し、台湾・香港向けの日本観光情報で最大のサイトとなった。同グループの吉田社長に社内のコミュニケーション手法や今後の事業展開を聞いた(聞き手は、デロイト トーマツ ベンチャーサポートの事業統括本部長、斎藤祐馬氏)。

社員間のウエットコミュニケーションを重視

斎藤:台湾と中国本土では考え方が違いますか。

吉田:台湾は日本的な部分も大きく、みんなで和気あいあいと楽しくやりたがります。僕らも付き合いやすいですよ。

 以前、編集部を2つに分けて競争させようとしたことがありました。ところが、1カ月くらいすると、「職場の雰囲気が悪くなったので、競争はやめてほしい」とみんな訴えるので、中止しました。それと比較するなら、中国本土では競争好きな人が多く、頑張って結果を出したら、その分はよこせと主張しますから。

斎藤:彼女たちの力を引き出すために心がけていることや制度は何かありますか。

吉田:それぞれの国の習慣や文化を理解することが大切です。日本企業がよくマネジメントで失敗するのは、中国語も話せない日本人リーダーが「俺の言うことを聞け」と押し付けるケース。これでは組織が回らなくなる。彼らは決して怠慢ではなく、それがカルチャーなんですよ。だから、問題があれば、その都度、丁寧に説明し、お願いし、マニュアル化する。どんな人が入社してきても、マニュアルを読めば分かるようになっています。

吉田社長(左)と、聞き手であるデロイト トーマツ ベンチャーサポートの斎藤統括本部長

斎藤:マニュアルづくりのコツはありますか。

吉田:いろいろな事態を想定することですね。後は、パワーポイントにして箇条書きで、絵を入れて分かりやすく見せることです。月に1回は、みんなを集めて勉強会を開いています。その中で、なぜそうしたルールをつくったのか、1つひとつ理由を丁寧に説明しています。

斎藤:日本人スタッフとの間でトラブルはありませんか。

吉田:トラブルはないですが、気を抜くとお互いに疑心暗鬼になる面もあるので、社員間のウエットコミュニケーションを大事にしています。例えば、社員旅行やバーベキューパーティー、野球見物など、なるべく全社員が参加するようにしています。イベントは僕がすべて仕切るんですよ。

 1人ひとりの名前とプロフィールや趣味などを書いたパンフレットを作り、それぞれのキャラを生かせるようなゲームやイベントを用意します。例えば、普段はおとなしいけど、カラオケで歌わせたらすごいとか、各人の得意をみんなに教えて、ウエットなコミュニケーションを促進しています。テレビ局時代に宴会部長だったので、その経験が生きています(笑)。

訪台日本人向けのメディアもつくりたい

斎藤:ネットビジネスの割には、顧客ともウエットコミュニケーションを大事にしているようですね。

吉田:うちはスーパーウエットですよ(笑)。営業にはとにかくお客さんと飲みに行けと言っています。僕自身も酒好きですからね。そして、お客さんと飲みに行ったら、絶対にこちらで費用を持てと。ネット会社でここまでアナログ営業を大事にする会社も珍しいでしょう。宴会を開くときは、もちろん僕がすべて仕切り、余興まで用意します。

斎藤:営業は日本人の担当ですか。

吉田:そうです。主に日本人です。営業には僕のまねをしろとは言わないが、相手のメリットを考えて、「売らんかな」の営業はしないようにといつも話しています。

斎藤:最後に今後のビジネスの展望をお聞かせください。

吉田:中長期的には、日本と台湾の健全な発展に寄与することを標榜しています。両国のためになる事業を拡大させていきたいですね。今、訪日台湾人は400万人ですが、訪台日本人は200万人。人口を考えると少な過ぎます。もっと台湾に行ってもらって、理解を深めてもらいたい。そのために訪台日本人向けのメディアをつくるために準備をしています。日本人のシニア層にアピールするために日本のテレビCMを活用したいと思っています。

 また、台湾のメディアは芸能とゴシップばかりなので、20~30代の意識の高い人たちが見るメディアもつくりたいですね。

 直近の計画では、ラーチーゴーに予約システムを搭載し、4月にオープンする予定です。これは、飛行機、ホテル、アクティビティーなどを一括して予約できる仕組みで、どこの旅行代理店と提携するか最終調節中です。小さいマーケットですが、まだまだポテンシャルはあり、サイトの機能をさらに上げて、利用者を拡大したいと思っています。

日経トップリーダー/吉村克己

※掲載している情報は、記事執筆時点(2017年2月)のものです

執筆=斎藤 祐馬

※トーマツ ベンチャーサポートは、2017年9月1日より「デロイト トーマツ ベンチャーサポート」に社名変更しました。

【T】

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