ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
東京商工リサーチによると、インボイス(適格請求書)登録件数が10月単月で過去最高の29万件を超えたとの記事がありました。中でも個人事業主の登録件数が月間最多の22万件を超え、全体の件数を押し上げているそうです。これは、副業を始めた方の増加や取引先からの登録要請、インボイス制度の浸透などが増加の背景にあるものとされています。
副業は、「民泊」や「フリマ」「アフィリエイト」、「ユーチューバー」などの広告、「ポイントサイト」での小遣い稼ぎなどさまざまですが、ここでのお金のやり取りに、最近現金以外が利用されるケースが増えてきました。
特に注目すべきは “ポイント”です。企業が発行したポイントやネットショップで顧客の代金決済に基づくポイントなど、多くの種類のポイントが流通しています。お金の代わりになるのですから、このポイントを取得または使用した場合、税金は発生するのでしょうか。今回はこのポイントについての課税関係を解説します。
コンビニやネットショッピングにおいて、100円につき1ポイントが付与されて、付与後の決済時に1ポイント1円に換算して支払うことができたり、ドラッグストアなどで200円につき1ポイント付与され、ポイントがたまると希望の商品や値引きクーポンと交換できたり、1ポイント1円換算で代金決済できるというポイントが多々あります。
このように付与されたポイントは、「通常の商取引における値引き」と同様の行為とみなされ、原則として課税対象となる経済的利益には該当しないものとして取り扱われます。ですから、確定申告する必要はありません。
しかし、上記以外の条件によっては「通常の商取引における値引き」とはみなされず、「一時所得」や「雑所得」、「事業所得」とみなされるケースがあります。ここからは、「値引き」とはみなされない課税の対象となるケースについて解説します。
【クレジットカード会社のポイント還元など】
買い物などの際にクレジットカードで決済した場合に、クレジットカード会社からポイントが付与されることがあります。また、代金の支払い時にポイントカードを提示するとポイントが付与される店舗も多くあります。このように付与されたポイントを支払時には使わずに手元にためておけば非課税です。しかし、このポイントを利用した場合、その瞬間に「一時所得」とみなされます。つまり、取得したときではなく使ったときに課税関係が発生するのです。
【ポイントサイトで付与されるポイント】
ポイントサイトは、サイトに掲載された広告をクリックして掲載されているショップなどで買い物をすると、運営サイト側から一定のポイントが付与されるサービスです。代表的なサイトとして「ハピタス」や「モッピー」などがあります。他にもクレジットカード会社が運営する「ポイントUPモール」などがあります。こうしたポイントサイトで獲得したポイントは、値引きではなくポイントサイトからプレゼントされたものとして取り扱われ、税制上は「一時所得」になります。
また、サイトの中にはアンケートへの回答やSNSを介した友だちの紹介、ゲームなど、継続的にポイントを獲得できるものがありますが、このようにして得たポイントは、「副業による収入」として税制上は「雑所得」とみなされます。
【キャンペーンなどに当選して受け取るポイント】
ポイント付与の抽選キャンペーンや、最近であればアマゾンが実施したブラックフライデーなどにおいて大量のポイントを当選して獲得し、そのポイントを使用した場合、このポイントは「通常の商取引における値引き」には該当せず、臨時・偶発的に得たものですから「一時所得」となります。
個人事業主が事業に関連した支払いにおいて得たポイントについては、「事業所得」として扱われます。そして、ポイント使用前の支払金額全額を経費額とする処理をした場合、使用したポイント額は「雑収入」の経理処理が必要になります。
以上のとおり、ポイントといってもさまざまな種類があり、課税関係も変わってきます。「一時所得」や「雑所得」、「事業所得」とみなされますと、場合によっては確定申告が必要となります。どの所得に該当するのかによって所得金額の計算方法は違いますので、確認も必要です。
また、課税される最低金額(ボーダーライン)も異なります。例えば、「一時所得」には1年間で50万円の特別控除がありますので、ポイント使用分などの収入金額から必要経費を差し引いた金額の他に一時所得があれば、それらの所得を合計した金額が50万円以下であれば課税の対象とはされません。
現在のところポイント課税に関する法律は詳細に制定されていませんが、「ポイ活」など副業で収入を得たいと考えている方や大量のポイントが付与されている方は、税制改正をはじめとした税情報をチェックするよう、日頃からアンテナを張っておきましょう。
執筆=笹崎浩孝
税理士・一般社団法人租税調査研究会主任研究員
国税局課税一部資料調査課主査、国税局個人課税課課長補佐、国税局査察部統括査察官、国税局調査部統括国税調査官をはじめ、複数の税務署長を経て2021年7月退職。同年8月税理士登録。
編集協力=宮口貴志
一般社団法人租税調査研究会専務理事・事務局長。
株式会社ZEIKENメディアプラス代表取締役。元税金の専門紙および税理士業界紙の編集長、税理士・公認会計士などの人材紹介会社を経て、TAXジャーナリスト、会計事務所業界ウオッチャーとしても活動。
一般社団法人租税調査研究会(ホームページ https://zeimusoudan.biz/)
専門性の高い税務知識と経験をかねそなえた国税出身の税理士が研究員・主任研究員となり、会員の会計事務所向けに税務判断及び適切納税を実現するアドバイス、サポートを手がける。決して反国税という立ち位置ではなく、適正納税を実現していくために活動を展開。
【T】
個人事業主・小さな会社の納税入門