ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
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前回は、2014年1月にスタートした「NISA(ニーサ)制度」について解説しました。今回は、2023年度税制改正により2024年以降から新たにスタートする「新NISA制度」の改正のポイントについて、現行制度と比較しながら解説します。
2023年以降、NISA制度は18歳から利用できるようになりました。NISA口座を開設する年の1月1日現在、18歳以上で日本に在住する方が利用できます。大学生でも利用できるようになりましたし、職業による制約もありません。
そして2023年までで「一般NISA」と「つみたてNISA」は終了となり、2024年以降「新NISA」が始まります。この「新NISA」には「つみたて投資枠」と「成長投資枠」があります。「つみたて投資枠」とは、一定の投資信託を対象とする長期、積立、分散投資の枠で、これまでの「つみたてNISA」の役割を引き継ぎます。「成長投資枠」とは、上場株式への投資が可能な枠で、これまでの「一般NISA」の役割を引き継ぎます。
それでは、「新NISA制度」の改正のポイントを解説します。次の5項目について、現行制度との比較もあわせて説明していきます。
1)NISAの恒久化が実現
現行のNISAを利用して非課税で投資できる期間は、現行の「一般NISA」が2023年まで、「つみたてNISA」が2037年までと決められていました(今回の改正とは別に「新NISA」としてそれぞれ5年ずつ投資を開始する期間が延長されることとなっています)。
これに対して「新NISA」では、2024年以降、非課税期間が無期限化されて口座開設可能期間の期限がなくなりました。つまり、恒久化されたので期限を気にせず投資ができるようになり、将来、非課税でなくなる心配をしないで済むようになります。
2)非課税保有期間が無制限に
現行の「一般NISA」の非課税保有期間は5年、「つみたてNISA」の非課税保有期間は20年でした。この期間を過ぎると、保有していた商品は課税口座(一般口座や特定口座)に移して保有しなくてはなりません。ですから、課税口座に移した後に発生した利益に対しては税金がかかります。これに対して「新NISA」では、投資した商品は非課税保有期間が無期限ですので、期間を気にせずにいつまでも運用益などの利益が非課税となります。
3)年間投資上限額が大幅に引き上げ
現行のNISAの年間投資上限額は、「一般NISA」が年120万円、「つみたてNISA」が年40万円までです。一方、新NISAでは、「一般NISA」と同様の「成長投資枠」で年240万円、「つみたてNISA」と同様の「つみたて投資枠」で年120万円、両方合わせて合計で年間360万円まで投資できるようになります。今回の改正により現行の上限額と比べて、つみたて投資枠は3倍、成長投資枠は2倍と大幅に年間投資枠が引き上げられました。
4)つみたて投資枠と成長投資枠の併用が可能に
現行のNISAでは、「一般NISA」か「つみたてNISA」のどちらか一方を選んで利用しなければなりませんでした。新しいNISAでは「成長投資枠」と「つみたて投資枠」の両者を併用できるようになります。「成長投資枠」で現行の「一般NISA」と同様に、「つみたて投資枠」で現行の「つみたてNISA」と同様の投資ができますから、「成長投資枠」において「つみたて投資枠」では投資できないような投資信託の購入も可能となり、投資の幅がより広がります。
5)非課税保有限度額の引き上げ
現行のNISAでは、「一般NISA」の年間投資上限額が120万円、非課税保有期間は5年間ですので非課税保有限度額は600万円、「つみたてNISA」の年間投資上限額が40万円、非課税保有期間は20年間ですので非課税保有限度額は800万円でした。「新NISA」では、年間の投資上限額とは別に生涯にわたる非課税保有限度額が設けられます。この非課税保有限度額(生涯投資枠)の上限は1800万円と大幅に引き上げられます。
ただし、この限度額の範囲内なら「成長投資枠」でも「つみたて投資枠」でも自由に使えるわけではなく、「成長投資枠」で投資できるのは1200万円までという制限があります。つまり、「成長投資枠」で1200万円まで投資すると「つみたて投資枠」で投資できるのは600万円までとなりますので注意する必要があります。
また、「新NISA」での非課税保有限度額は買付け残高(簿価残高)で管理されます。このため、NISA口座内の商品を売却した場合には、当該商品の簿価分の非課税枠を再利用できます。例えば、満額の1800万円を投資していた方が200万円分売却した場合、限度額に200万円分余裕ができますので、新たに200万円まで投資できます。ただ、ここで注意しなければならないのは、年間の投資枠(成長投資枠240万円、つみたて投資枠120万円)以上には投資はできないという点です。その年に既に年間投資枠に達していた場合は、翌年以降に再投資をすることとなります。
以上のように、2024年から始まる「新NISA制度」では、制度の恒久化や非課税保有期間の無期限化、年間投資上限額や非課税保有限度額の引き上げ、成長投資枠とつみたて投資枠の併用が可能となるなど、現行の制度から改善される点が多く、より活用しやすい制度となります。現在、投資を行っている方はもちろん、これから投資をお考えの方も、この制度を十分理解して活用することをお勧めします。
執筆=笹崎浩孝
税理士・一般社団法人租税調査研究会主任研究員
国税局課税一部資料調査課主査、国税局個人課税課課長補佐、国税局査察部統括査察官、国税局調査部統括国税調査官をはじめ、複数の税務署長を経て、2021年7月退職。同年8月税理士登録。
編集協力=宮口貴志
一般社団法人租税調査研究会専務理事・事務局長。
株式会社ZEIKENメディアプラス代表取締役。元税金の専門紙および税理士業界紙の編集長、税理士・公認会計士などの人材紹介会社を経て、TAXジャーナリスト、会計事務所業界ウオッチャーとしても活動。
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