ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
顧問先2200社を抱える会計事務所を率いる公認会計士、古田土満(こだと みつる)氏が語る小さな企業の経営のポイント。第2回では会社を存続させる黒字経営を実現する第一のコツとして「本業をコツコツやる」を解説しました。第3回は、第二のコツとして、「総資産を減らして、自己資本比率を高める」ことの大切さを説明します。
100万分の1グラムの極小歯車を開発した樹研工業の松浦元男会長は、リーマン・ショックの直後に「今の月商は前年の半分ですが、この状態があと5年続いたってビクともしません。何しろ自己資本比率が60%もありますから」と言っていました。
会社を存続させるもう1つのコツは、財務体質をよくすること。すなわち、支払手形をなくし、借入金をなくし、お金をたくさん持つことです。
しかし中小企業ではこの逆、つまり支払手形あり、借金過多、お金なしの会社が多いのが現実です。自己資本比率(純資産/総資産)が10%以下という会社もあり、30%を超えている企業はそれほど多くはありません。
中小企業は、なぜ自己資本比率が低いのでしょうか。それはもうかっていないから(内部留保が増えない)ということと、総資産が多すぎることが原因です。もうかっていないのに、土地・建物、ゴルフ会員権、有価証券などの資産を持っているのです。
もうかっていないということは、借入金の返済原資となる利益が増えないのだから、本来これらの資産を買えるお金はないはずです。しかし、実際には買えています。これは、銀行などが貸してはいけない会社に多額の融資をしたためです。この、自己資本比率の低さが原因で倒産している会社は意外に多いのです。会社はもうからなくてもすぐに倒産はしませんが、財務体質が悪く、手元のお金がなくなれば倒産します。
ここで重要なのは損益計算書ではなく、貸借対照表です。どうしたらこれから強い財務体質をつくれるかといえば、貸借対照表中心の経営計画を作成することです。
自己資本比率50%を達成するためには、現在25%の会社なら純資産を倍にするのではなく、総資産を半分にする努力をするのが先なのです。純資産は税引き後利益の蓄積ですから、税金を払った分お金が社外に出ていくので、なかなかお金が増えません。支払手形や借入金を利益で返すためには、税金というコストがかかります。
ところが、受取手形・売掛金、棚卸し資産など貸借対照表の左側にある科目を少なくして借入金を返済すると、税金は1円もかからないのでより多くの額を返済できます。古田土会計グループの自己資本比率は90%超です。当然、支払手形なし、借入金なしですが、開業以来の方針としてきたのは、前述したように
(1)本業のみに集中する
(2)不動産は持たない
(3)株取引はしない
のほかに、
(4)動産でも100万円以上のものはリースにする
(5)土地・建物は持たないだけでなく、借りるときにも保証金、更新料はできる限り払わない
の2項目を守っています。
動産であれ、保証金であれ、巨額のお金を寝かすのは効率が悪く、いざというときに使えないお金が資産にあっても資産とは思えないと考えているからです。自宅にもお金を使うのはもったいないのです。私は、妻の実家の土地に建物だけ、私が建てました。
古田土経営では社員が30%の株式を持っていますが、配当をしたことがありません。毎年、出資額の10%を賞与として払っています。配当は税引き後利益が原資なので税金がかかりますが、賞与ならば経費になりますから、お金が内部に残ります。
こうしてお金を会社に残すのは、社員と家族を守るためです。何が起きるか分からないのが経営です。お金がないと、いざというときに社員を守れないからです。そして経営者自身が強欲にならないように、損益計算書、貸借対照表、総勘定元帳は全て社内に公表しています。理想的な貸借対照表は、資金別貸借対照表から作ると一番イメージが湧きやすくなります。
資金別貸借対照表には、まず支払手形ゼロ、借入金ゼロと目標を記入して、目標を達成するための資金をどの科目で調達するのかを手書きでシミュレーションするのです。不用な資産は売却し、貸付金の回収、手元預金も減らします。そして、どうしても足りない分を損益資金である利益で調達します。5カ年計画で、自己資本比率50%を達成する長期計画をつくるのです。貸借対照表中心の返済計画を練れば、少ない利益で財務体質は改善されます。
個人も会社も同じです。借金がないと、経営は楽になります。
※本記事は、2017年に書籍として発刊されたものです
執筆=古田土 満
法政大学を卒業後、公認会計士試験に合格。監査法人にて会計監査を経験して、1983年に古田土公認会計士・税理士事務所を設立。財務分析、市場分析、資金繰りに至るまで、徹底した分析ツールによって企業の体質改善を実現。中小企業経営者の信頼を得る。
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