ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
顧問先2200社を抱える会計事務所を率いる公認会計士、古田土満氏が語る小さな企業の経営のコツ。第4回は会社を存続するためのリスク管理の大切さを紹介しました。今回は、その具体的な方法を解説します。ポイントは支払手形をなくして、本当の無借金経営をめざすことです。
前回、貸借対照表のリスク管理を解説しました。大切なポイントですから、今回、もう少し詳しく見ていきましょう。
一般的に優良会社の条件として、無借金経営であることが挙げられます。しかし「無借金会社」といっても、下記のように状況の違いがあります。
(1)支払手形がある無借金会社
(2)決算期末のみ預金で借入金を返して無借金にする会社
(3)預金が借入金より多い、実質的無借金会社
支払手形と借入金のどちらを早くなくすべきかといえば当然、支払手形です。会社は振り出した手形が落とせないときに、全ての銀行と取引停止になり倒産します。銀行に借入金が返せなくても、その相手の銀行のみリ・スケジュールの交渉をすればよいわけです。ですから、支払手形のない会社は倒産する確率は低くなります。
反対に無借金でも支払手形の多い会社は、手形を落とすために資金が必要なときに、銀行との借入実績、返済実績がないため、資金調達ができずに倒産する確率が高くなります。支払手形はないほうが安全です。
では、どうしたら支払手形をなくせるかを考えてみましょう。年商15億円、仕入れ12億円(月1億円)、受取手形4億円、支払手形3億円の会社があるとします。支払条件は全て3カ月の手形です。
手形を全て現金払いにすると、損益計算上、利益が出ます。手形の中には利息や危険負担リスク料が含まれています。まず、これがなくなります。
また、支払手形を受け取る仕入れ先にとっては、現金払いにしてもらうことで手形割引の枠が増え、他の手形を割引できるようになります。仕入れ先は3カ月くらいの手形なら、1〜2%くらいは値引き交渉に応じてくれると考えられます。年間手形発行額が12億円なら、2%として年間2400万円(a)の値引きが実現できます。
次に、この支払手形3億円をなくす資金を何で調達するかです。長期借入金で調達すると、5年返済なら年間6000万円の返済になります。この原資を利益に頼るとすると、毎年1億円以上の利益の増加が必要です。普通は無理です。
では、全て短期借入金ならどうでしょうか?金利が3%として、3億円×3%=900万円(b)の利息がかかります。(a)2400万円−(b)900万円で、年間1500万円の差引利益増加にはなりますが、いつまでも借入金が減らないのでは、財務体質はよくなりません。
そこで、資金別貸借対照表をイメージしてください。支払手形をなくす原資を利益に頼らず、貸借対照表の項目で考えるのです。
(1)現預金で2000万円
(2)売上仕入れ資金で3000万円
(3)短期借入金で1億円
(4)割引手形で5000万円
(5)長期借入金で1億円
その他にも、固定資金の運用の部からも資金調達を考えます。支払手形を退治することはキャッシュフローに大きな影響を与えますので、資金の調達方法に注意してください。
なぜ無借金をめざすのか、それは会社の利益と実際のお金の流れが近づくので、数字に弱い中小企業の経営者にも分かりやすく、会社が潰れない体質になるからです。世の中には、家賃を払うのはもったいないからといって工場、店や本社を持ちたがる経営者の方が多いのですが、自社物件を持つと、賃借しているときより税金を含めてはるかに多くの支出になります。その一方で、見かけ上の利益はできるので、経営者がもうかっていると錯覚してしまいがちです。
大きく成長しようとする会社には、借金は絶対必要だと思います。また内部蓄積の厚い会社が自己資金を補填して、設備投資をするための借金も必要だと思います。しかし安定成長をめざす多くの中小企業は、長期的には無借金をめざすべきです。
まずは、資金別貸借対照表の借入金を消して0と記入してみてください。次に、その資金を何で調達したらよいのか、イメージしてください。あなたの会社の未来のバランスシートを描くのです。未来のバランスシートを作るのは、経営者のイメージ力です。決意です。そのためにも、経営計画書が絶対必要です。
数年後に支払手形なし、借金なし、預金数億円の会社をイメージしてください。見えるはずです。社長と社員の幸せそうな笑顔が。
※本記事は、2017年に書籍として発刊されたものです
執筆=古田土 満
法政大学を卒業後、公認会計士試験に合格。監査法人にて会計監査を経験して、1983年に古田土公認会計士・税理士事務所を設立。財務分析、市場分析、資金繰りに至るまで、徹底した分析ツールによって企業の体質改善を実現。中小企業経営者の信頼を得る。
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