人気会計士が語る、小さな会社の経営“これだけ”(第2回) 小さな会社の経営は臆病なくらいがちょうどいい

資金・経費

公開日:2018.12.19

 顧問先2200社を抱える会計事務所を率いる公認会計士、古田土満氏が語る小さな企業の経営のコツ。たくさんの経営者との付き合いを通して得た“これだけ”は知っておいてほしい実戦的経営講座の第2回は、「本業」に徹底することの大切さです。

 不況になると、多くの会社で売り上げが急激に減少し、資金繰りに困る会社が増えます。

 私が多くの中小企業の決算書を見て思うのは、貸借対照表がバランスしていないということです。数字のバランスではなく、資金の運用と調達のバランスです。「なんでこんなお金の使い方をするのだろう」と思うことが、たびたびあります。

 特に、固定資産と借入金のバランスが問題です。土地・建物、保証金などの固定資産と、借入金がほぼ同額という貸借対照表をよく目にします。借入金のほうが多いケースもあります。

 固定資産の部に計上されている資産は、減価償却費になるものが大半で、経費化されるものはそれほど多くはありません。一方、借入金の返済原資は基本的に利益になります。利益の蓄積が内部留保され、純資産額となります。

 つまり内部留保が少ないということは、本業でも、投資しても今までもうからなかったということで、借入金の返済原資が今後もつくれない可能性が高い会社といえます。

投資より本業が大切。借入金はとにかく減らす

 こういう会社が借り入れをして不動産などに投資をすると、借入金の返済が上乗せされることになり、ますます資金繰りが苦しくなります。

 内部留保のない会社は、投資をしてはいけません。今の事業を黒字にして、まず今の借入金を返済できるように財務体質を改善するのが先です。私はお金を貸すプロのはずの金融機関が、なぜ内部留保のない会社に、不動産投資などのためにお金を貸すのかが分かりません。

 本業で投資しても今までもうからず内部留保がないということは、借入金の返済原資が今後もつくれない会社ということです。そういう会社には、貸さない思いやりもあるのではないでしょうか。

 多くの中小企業は、借入金の返済額が多いために、資金繰りに苦しんでいます。金融機関が示すべき本当の思いやりは、返済可能額まで毎年の返済額を減らしてやることでしょう。

本業に徹し、一歩ずつ進むしかない

 我々中小企業は、会社を存続させるために黒字経営をしなければなりません。そのコツは2つあります。

 1つは、「コツコツやること」です。松下幸之助さんは著書『松下幸之助・経営の真髄』(PHP総合研究所)の中で「間口を絞って奥行きを深めていくと、1品を持って世界に雄飛する。中小企業が1品に徹していくなら決して競争に負けない、大企業はこれに専心できるわけがない。負けない」という趣旨のことを言っています。

 中小企業は、本業のみに徹しましょう。戦線の拡大は、資本力のある会社の戦略です。我々はコツコツと1品・1店ずつ増やし、急拡大はやめましょう。弱者の戦略で戦いましょう。私ども古田土会計グループは無借金で自己資本は16億円、自己資本比率90%、社長室なし、金めのものは会社に何もありません。

 商品は、月次決算書と経営計画書のみです。不動産・株の投資はしたことがありません。本業に徹しています。本業の月次決算書と経営計画書では、日本一の会計事務所をめざしています。

 教える会計事務所ではなく、お客さまのお手本となる、見せる会計事務所として日本の中小企業を元気にしていきます。次回は会社を存続させるためのもう1つのコツを紹介します。

※本記事は、2017年に書籍として発刊されたものです

執筆=古田土 満

法政大学を卒業後、公認会計士試験に合格。監査法人にて会計監査を経験して、1983年に古田土公認会計士・税理士事務所を設立。財務分析、市場分析、資金繰りに至るまで、徹底した分析ツールによって企業の体質改善を実現。中小企業経営者の信頼を得る。

【T】

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