情報のプロはこう読む!新聞の正しい読み方(第13回) 月曜日の朝刊に特ダネは載らない?(上)

スキルアップ

公開日:2019.07.18

 記事を読む際にはニュースソースや取材方法による違いに注目することも重要です。今回は、こうした点に注目して記事を分類してみましょう。

ニュースソースや取材手法などによる分類

――特ダネ(スクープ、特報)、独自モノ、調査報道、共通モノ、発表モノ、傾向モノ

 特ダネ(スクープ、特報)については、日常用語になっているので詳しく説明する必要はないかもしれません。

 あえて定義すれば、その新聞社による単独の取材に基づいており、その日の段階では他紙に出ていない記事であることが前提になります。こうした記事は「独自モノ」「独自ダネ」と呼ばれます。「特ダネ」とは、「独自モノ」の中でも、特に社会への影響が大きいものだといえるでしょう。

 特ダネは、基本的にはページのトップか、カタ・サイドなど2番手の位置に掲載されることになります。超弩級の特ダネであれば1面トップ、黒地に白抜きのヨコ見出しで報じます。

 独自ダネの中でも、記者が警察や役所などの行政組織に頼らず、自ら発掘したニュースを報じることを「調査報道」と呼びます。

 例えば政治家の汚職について、警察や検察が捜査して逮捕が近いことを記者が嗅ぎ付けて報じた場合も「特ダネ」にはなります。ただ、このケースでは汚職を見つけたのは記者ではなく、あくまでも捜査当局です。これに対し、記者自身が独自の分析や取材によって汚職の事実をつかんで記事にするのが調査報道です。

映画が調査報道となり得るケースもある

 調査報道によるスクープは、ジャーナリズムの世界では最高の評価を受けます。再び汚職の例で言えば、捜査当局がすでに動いている場合は、放っておいても政治家は逮捕され、事実は明るみに出ます。しかし、調査報道で明らかになるケースでは、報じられなければそのまま汚職の事実は闇に葬られるかもしれないからです。実際の例で言えば、昨年日本で公開されたスティーブン・スピルバーグ監督の映画『ペンタゴン・ペーパーズ』で描かれた、米ニューヨークタイムズやワシントンポストによるベトナム戦争をめぐる政府文書のスクープは典型的な調査報道です。

 独占インタビューも、「独自モノ」の一種です。インタビューの相手が大物で、めったにマスコミに登場しないようなケースは「スクープ」に近い位置付けになります。

 もちろん、会話の中で重要かつ新しい話が出てくれば、そのまま特ダネになります。例えば有名企業の社長が新しい経営方針を示したり、政治家が政策の変更を表明したりすれば、それ自体がストレートニュースになります。その場合は、一問一答スタイルのインタビュー記事とは別に、雑報スタイルで報じることもあります。

 一方、単独取材ではなく複数社が同時に報じるニュースは、「独自モノ」に対して「共通モノ」「共通ダネ」と呼ばれます。オリジナリティーが低い分、記事としての価値や評価は低くなります。

 中でも企業や役所などがプレスリリースや記者会見を通じて公表するものを「発表モノ」と言います。新聞はこうした発表モノばかり載せているではないかという、「発表ジャーナリズム」批判がありますが、記者の世界でもこうした記事ばかり書いていては評価されません。

執筆=松林 薫

1973年、広島市生まれ。ジャーナリスト。京都大学経済学部、同大学院経済学研究科修了。1999年、日本経済新聞社入社。東京と大阪の経済部で、金融・証券、年金、少子化問題、エネルギー、財界などを担当。経済解説部で「経済教室」や「やさしい経済学」の編集も手がける。2014年に退社。11月に株式会社報道イノベーション研究所を設立。著書に『新聞の正しい読み方』(NTT出版)『迷わず書ける記者式文章術』(慶応義塾大学出版会)。

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