ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
大手広告代理店の女性社員が過労自殺した問題が波紋を呼んでいる。同社で違法な長時間労働が常態化していた疑いが浮上し、厚生労働省の東京労働局は強制捜査に入った。違法な長時間労働や賃金不払い残業(サービス残業)などは表面化しにくく、労使双方の意識改革が求められる。
2016年10月に、民間企業の20代~60代前半の被雇用者男女計2000人を対象に行った「勤労者の仕事とくらしについてのアンケート調査」(公益財団法人 連合総合生活開発研究所)によると、「9月に所定外労働(残業および休日出勤)を行ったとする割合は38.5%であり、その平均所定外労働時間は、40.3時間」だった。男性正社員に限ると、53.0%が所定外労働を行い、平均時間は49.4時間に及ぶ。これは、前年同時期の調査結果(51.9%、44.4時間)より増加傾向にある。なお、「男性正社員の 6.5%、女性正社員の1.8%が、所定外労働時間『80時間以上』」となっている。
所定外労働で問題にされるのが、労働時間に応じた賃金が支払われない賃金不払い残業(サービス残業)だ。賃金不払い残業は、労働基準法に違反するが、多くの企業で実際の残業時間より過少に申告されていたり、時間外の朝礼や会議が所定外労働とみなされていなかったりすることで、不払い残業が発生している。
上記の調査によると、所定外労働を行った人の38.2%が賃金不払い残業「あり」と回答。特に高いのは、「50代男性で47.2%。20代は男女ともに4割を超え、男性45.0%、女性43.2%」となっている。
なぜ、賃金不払い残業が発生するのだろうか。賃金不払い残業を行った人の中には、職場の雰囲気により自分で勤務時間を少なく申請することもある。冒頭の大手広告代理店の例では、上司から調整するように言われて、過少申告したことが明らかになっている。
会社から強制されて賃金不払い残業を行うだけでなく、社員が自主的に労働時間を過少申告するケースもあるだろう。会社は残業削減をうたっているものの、仕事が終わらずに会社に隠れて残業を行っている社員は少なくない。賃金不払い労働はやむを得ないという職場風土が根強い実態がそこにある。
違法な長時間労働、残業未払い、パワーハラスメントなどの特徴がある企業は、いわゆる「ブラック企業」と呼ばれているが、前出の第32回勤労者短観では「勤め先が『ブラック企業』にあたるかと尋ねたところ、<思う>と回答した割合は24.6%」であった。
違法状態にある企業の社員は、健康面での問題を抱えやすいと同時に、職場に愛着心を持てなかったり、働きがいを感じられなかったりする傾向がある。勤め先をブラック企業だと思っていれば、当然仕事に不満を持ち、転職願望も強くなるだろう。結果、離職率が高まり、企業にとっても中長期的には痛手となる。
厚生労働省は、「賃金不払残業の解消を図るために講ずべき措置等に関する指針」を定め、労使が取り組むべき事項を示した。賃金不払い残業の解消には、残業を申請しづらい「職場風土の改革」や、「経営トップ自らによる決意表明や社内巡視等による実態の把握」「適正に労働時間の管理を行うためのシステムの整備」などが挙げられている。
厚生労働省が労働基準法違反で是正指導した事案には、「ICカードの記録と比べて残業申請が少ない、ICカードの退勤時の打刻がない場合がある」などの原因による賃金不払いが確認されたケースもある。この企業では、記録の乖離(かいり)や打刻漏れがあった場合は、上司にエラーメッセージが送信されるようにシステムを改修することで、労働時間管理を適正化した。
人手が足りない中で、長時間労働に頼らないためにはどうすればよいか。業務の無駄を洗い出し、ICTを活用するなどして、業務効率化に取り組むのも一手だ。経営層も含めた社員の意識改革と、ICT活用を視野に入れた業務効率化が求められている。
執筆=鯰 美紀
【MT】
働き方再考