働き方再考(第2回) 企業、官公庁に在宅勤務の波、本格化

業務・勤怠の管理

公開日:2017.01.23

 トヨタ自動車は約1万3000人の総合職社員を対象に、在宅勤務を認める方針を打ち出している。リクルートホールディングスでも、ほぼ全社員を対象に在宅勤務制度を試験的に導入した。こうした大企業だけでなく、各省庁や自治体においても、勤務場所や時間を固定しない柔軟な働き方を認めるテレワーク(在宅勤務)の導入が進んでいる。労働者側にとっては、通勤時間がなくなる、育児や介護をしながらでも仕事を続けやすいなどのメリットがある。企業側にとっても、交通費の削減、オフィスの省スペース化の実現、優秀な人材の育児・介護離職を防ぐなどの利点がある。

背景には政府の後押しも

 テレワークが一般的ではなかった日本において、近年、大企業を中心にテレワークの推進が進んでいる背景には、企業の意識改革のほか、政府の後押しもある。2015年6月に安倍晋三政権が「世界最先端IT国家創造宣言」を閣議決定(2016年5月改定)。クラウドなどのITサービスを活用し、外出先や自宅、さらには山間地域を含む遠隔地など、場所にとらわれない就業を可能とし、多様で柔軟な働き方が選択できる社会を実現するとともに、テレワークを社会全体へと波及させる取り組みを推進する。労働者のワーク・ライフ・バランスと地域の活性化を実現する、と目標を示した。

 具体的には、「2020年にテレワーク導入企業を2012年度比で3倍。週1日以上終日在宅で就業する雇用型在宅型テレワーカー数を全労働者数の10%以上」が目標。テレワークの普及拡大に向け、啓発活動、ノウハウ支援、導入補助も行っている。

省庁、自治体でもテレワークの導入が活発化

 各省庁や自治体においてもテレワークの導入が進んでいる。「平成27年度国家公務員テレワーク実績等の結果」によると、2015年度(平成27年度)の国家公務員のテレワーク実績(本省分)は、対前年比で約3倍に増加。職員からは、「資料作成や確認といった単純作業、一人で考える業務などに有効」「業務の生産性の向上を実感することができた」などの感想が挙がっている。

 また、秋田県では、2016年11月から2017年3月まで、テレワークの実証実験を行っている。対象は、小学生以下の子どもの育児を行う職員、または介護が必要な親族の介護を行う職員。実施頻度は原則として週2日以内としている。県から貸与されたパソコンを使用し、自宅から庁内ネットワークに接続することにより、資料を作成したり、グループウェアを利用したりできる。テレワークの導入を検討している自治体は増えてきており、今後さらなる広がりが期待される。

 先進的な企業では、すでにテレワークを本格的に活用している。アクセンチュアでは2000年代から在宅勤務用のセキュアなシステムを導入。10年以上のテレワークの実績がある。オフィスコストの削減にもつながったという。

ICTの活用で魅力的な労働環境が実現

 テレワークを導入することで、生産性向上、人材確保、コスト削減などが期待できるが、実践には、ICT(情報通信技術)などのシステム導入、テレワークの目的の共有とルールづくり、「会社にいる=働いている」という既存意識などの改革が必要だ。

 システム導入については、例えばクラウドサービスや仮想デスクトップ(VDI)を利用することで、いつでもどこでも、時間と場所にとらわれずに作業を行える。ICT関連の初期コストはかかるが、オフィス維持費や交通費にかけるコストと比較すれば、テレワークに軍配が上がるケースもある。

 それでも、テレワークの導入に踏み切れない理由として、情報セキュリティーやプライバシーの確保、コミュニケーションが取りづらいなどの懸念が挙げられていた。近年ICTの進化は著しく、積極的な活用によって、これらの課題を解決できるソリューションもある。まずはハードルの低いオフィスのペーパーレス化や、クラウドサービスのデータ共有から始めてみてはどうだろうか。

執筆=鯰 美紀

【MT】

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