ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
台湾からの訪日客に特化した観光客向け総合メディアが存在しなかった中、ジーリーメディアグループは、2013年に台湾・香港向けに絞り込んだ「ラーチーゴー(樂吃購)」というポータルサイトを立ち上げて大成功を収めている。今では月間ユニークユーザー数が70万人に成長し、台湾・香港向けの日本観光情報で最大のサイトとなった。同グループの吉田社長に人材採用や人材育成の手法を聞いた(聞き手は、デロイト トーマツ ベンチャーサポートの事業統括本部長、斎藤祐馬氏)。
斎藤:ラーチーゴーがこれだけ台湾人に支持されているのは、吉田さんが現地のことをよく知っているからですか。
吉田:僕もさすがにすべては分からないので、十数名の台湾出身のライターたちに任せています。2016年、1人のライターが山梨県の清里を紹介する記事を書き、星を見に行こうと呼びかけたら、すごい人気になって、清里に台湾人観光客が押し寄せました。清里町から「いったい何をしたんだ?」と問い合わせがあったほどです(笑)。何であの記事がそんなに受けたのか僕は分からないんですけど。
斎藤:どのようにライターを集めているんですか。
吉田:採用にはこだわっていまして、一番多いのは日本に来ている台湾からの留学生をアルバイトで採用し、パフォーマンスがよい人材を正社員にするケースですね。どこよりも優秀なスタッフを採用していると自負しています。
斎藤:現地スタッフの感性をどのようにメディアに反映しているのでしょうか。
吉田:僕があれこれ口を出さず、スタッフが仕事しやすい環境を整備するようにしています。現在、社員21名のうち、台湾出身が14人、香港出身が1人、日本人が6人です。ライター陣が取材しやすいように日本人スタッフがアポ取りを手伝ったり、PR会社からニュースリリースをもらったり、面白い情報を提供するなど、日本人が後方支援の役割を果たしています。
斎藤:外国人スタッフには自由に仕事をしてもらっているのですか。
吉田:基本的には任せていますが、一方で月間ユニークユーザー数を増やすことなどにコミットすることも求めています。企業のタイアップやPR記事ではやはりきちんと実績を上げなければなりません。どんなクライアントでも目標に対してはシビアですよ。数字として集客数を増やさなければなりません。
契約をもらってからが勝負だと考えています。四半期でレポートを出したり、データを分析したりして集客数や滞在時間などをどう伸ばすかを提案しています。
斎藤:経営していく上で、これまで最も苦労したことは何でしょうか。
日本の魅力を台湾に伝えるジーリーメディアの吉田社長
(写真:菊池一郎、以下同)
吉田:やはり、社員の管理ですね。国籍もバラエティーに富んでおり、しかも女性が大半なので、意思統一や教育が常に大変です。例えば、春節(旧正月)になると台湾出身のメンバーは全員帰国してしまいますから。本音を言えば、現場は困ってしまうのですが、彼女らに帰るなというわけにはいきませんよね(苦笑)。
時には中国語で諭したり、なだめすかしたりすることも必要です。頭にきて、ゴミ箱を蹴飛ばしたくなることもありますが、怒らず丁寧に説明することが大事です。
当社は成長優先でもなければ、IPO(株式公開)を狙っているわけでもなく、ともかく社員を大事にしたいと思っています。ベンチャー企業にありがちですが、たくさん採用してふるい落とすというやり方はしません。社員が生き生きと働くことができて、その家族もハッピーになってほしい。
斎藤:教育面で心掛けていらっしゃることは何でしょうか。
吉田:最初は厳しく型にはめて、日本企業で働くことを理解してもらった上で、後は自由にやってもらう。幸い、僕は防衛大学で1年間だけ学んだことがあるので、その経験を生かしています。防衛大はリーダーを育てる学校ですが、リーダーシップを学ぶ前に、まず徹底的にフォロワーシップをたたき込まれるんです。つまり、型にはめるわけです。それが組織管理の要諦だと思っています。
台湾では、テレビのCMにも出演している有名人だ。その動画をパソコンで再生して見せてくれた吉田社長
斎藤:外国人に型を教える上では、どんな工夫をしていますか。
吉田:働き方や理念、営業方法などすべてマニュアル化しています。僕がつくっているのですが、そんなことまでと思われるほど、こと細かにルールを決めています。例えば、台湾では朝9:30始業というと、9:30に職場に来て朝食を食べ始める人が多い。朝飯ぐらい済ませてから来いよと思うんですが(笑)。それが現地の習慣、文化なんでしょうかね。だから「朝食は済ませてから来社すること」とマニュアルに定めてあります。後は、お客さまの所にスッピンで行こうとするので、「客先に行くときには最低限の化粧をすること」(笑)なんてのもあります。
一事が万事ですよ。黙っていると、平気でTシャツ、短パン、サンダル姿で会社に来たりしますし、オフィスで昼寝もしたりします。だから、服装はちゃんとしようね、昼寝はダメです、とマニュアルに書いてある。ただ、もちろん、台北の事務所では昼寝を許していますが。
日経トップリーダー/吉村克己
※掲載している情報は、記事執筆時点(2017年2月)のものです
執筆=斎藤 祐馬
※トーマツ ベンチャーサポートは、2017年9月1日より「デロイト トーマツ ベンチャーサポート」に社名変更しました。
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注目を集める地方発のベンチャー