人気会計士が語る、小さな会社の経営“これだけ”(第13回) お金は増やすよりためる

資金・経費

公開日:2019.11.01

 顧問先2200社を抱える会計事務所を率いる公認会計士、古田土満氏が語る小さな企業経営のコツ。その第13回は、もうけ話に対する戒めです。お金は増やすものではなく、ためるものと古田土氏は断言します。そのために古田土氏の事務所が実際にやっていることを具体的に説明します。

社長が株や不動産でもうけても、社員は喜ばない

 大企業では、財務部で財産運用がなされています。サンリオの投資失敗やヤクルト、メリーチョコレートのデリバティブ取引の失敗は、有名な話です。メリーチョコレートの場合は、ロッテに株式を譲渡し、子会社になってしまいました。中小企業では、投機の失敗は命取りになります。

 私はお客さまからの投資話に関する相談では、決まってこのように話をしています。「もしこの投資をしなかったことでもうけられなかった悔しさと、この投資をして失敗した場合の後悔とを比較して、経営者としてどちらが正しい選択ですか?」

 ほとんどの経営者は、うまいもうけ話に乗るのをとどまってくれます。こういう話は結構銀行から来るものがあって、お客さまが信用してしまいがちなのです。ある経営者は、こう言っていました。「銀行さんが持ってきたうまいもうけ話で、今までうまくいったことは一度もなかった」

 お金は、増やすものではなくためるものです。

 私は今まで会社で土地・建物を買ったことはなく、株取引もしたことがありません。お客さまとの付き合いで、少人数私募債やその会社の株を買ったことはあります。しかし、本業のみでお金をためることを心掛けてきました。理由は社員の目です。社員がどう思うかということを一番気にしています。

 私は、社員から尊敬される経営者になろうと努力しています。社員は使用人ではなく、パートナーだからです。パートナーである社員に堂々と説明できる経営をしなければならないと思っています。社長が株や土地に投資をしてもうけても、喜ぶ社員はほとんどいません。不安になるだけです。

 反対に失敗すれば、社員が一生懸命働いて稼いだ利益を全てなくします。それで賞与が減ったりしたら、会社で一番大切な信頼がなくなります。不況や本業の失敗はむしろ全社員の結束力を高め、会社の成長の源になりますが、投資の失敗は命取りになります。

見本としてほしい古田土流の経営

 お金をためるには売り上げを稼ぎ、経費を倹約して利益をお金で残すことです。お客さまの手本となるべく、古田土会計がやっていることを紹介しましょう。

1 早朝出社
 私は創業から20年間は朝6時に出社し、帰りは夜10~11時の間、休みは月2日くらいでした。経営者が働く時間を長くすれば、お金を使う暇がないのでお金はたまります。今は朝7時出社です。帰りは夜8時です。

2 経理公開
 パートさんを含めた全社員に貸借対照表、損益計算書を渡し、経営計画書に記入してもらっています。私が公私混同をしないためです。私の給料も社員に公表しています。自分だけ良くなればよいと考えないようにするためです。社員と家族の幸せが、会社の使命ですから。

3 社長室はない
 私に社長室は必要ありません。ほとんど自分の席にいることはなく、お客さまの会社に行っているか、会議室でお客さまと打ち合わせをしています。私の席は入り口の受付の隣です。お客さまが来られたら、すぐに挨拶に出ます。お客さまが帰るときも、すぐに対応できます。社長室がない分、社員の執務面積は広くなり、会社全体の動きも見えるので効率的であり、社長室に高価な絵や応接セットも必要ないのでお金がたまります。

4 保証金が300万円のみ
 600坪のオフィスを借りていますが、保証金は300万円のみです。保証金は資産計上でお金が固定化される上に費用にもならないので、お金の無駄です。私はオフィスを借りるときに、保証金ゼロと更新料ゼロを条件に入居しました。保証金の分、自由に使えるお金がたまっています。お金は使い方であると思っています。その後、借り増しするときに保証金は積みましたが、更新料ゼロは現在も続いています。

 私どもの会社では毎年4月2日は会社を休みにして、パートさんを含む全社員でディズニーランドに行きます。家族も招待です。女性社員の中にはご主人に仕事を休んでもらい、家族で来られる方もいます。平成28年は総勢300人を超えました。毎年社員の子どもたちの成長を楽しみにしているとともに、社員と家族を守るという責任を自覚するときでもあります。

 毎年、社員旅行に行っています。2年に一度は海外旅行に行っています。人は先に楽しみがあると、楽しく働けるものです。平成28年9月には、総勢110人でハワイ旅行に行きました。海外旅行に行かない年は国内旅行です。家族も参加します。パートさんのお子さんたちもたくさん参加してくれます。子どもの世話は、若い社員がしてくれています。

※本記事は、2017年に書籍として発刊されたものです

執筆=古田土 満

法政大学を卒業後、公認会計士試験に合格。監査法人にて会計監査を経験して、1983年に古田土公認会計士・税理士事務所を設立。財務分析、市場分析、資金繰りに至るまで、徹底した分析ツールによって企業の体質改善を実現。中小企業経営者の信頼を得る。

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